三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

屋良朝博『砂上の同盟』

2014年08月10日 | 戦争

ケビン・メア『決断できない日本』に「アメリカは日本を手放さない」とある。
米軍の全兵力は141万人で、海外駐留は23万人。
アジア太平洋地域の駐留は約9万6千人で、日本には約4万1千人、そのうち沖縄には2万5千人。
なぜ日本、特に沖縄に米軍が多いのか。

地政学的に言うと、日本列島は太平洋への膨張の出口を求めている中国に蓋をする防波堤となってユーラシア大陸に対峙している形になっている。

沖縄は台湾海峡や東南アジアに近く、朝鮮半島もにらめる場所にある。
ケビン・メアによると、東アジアには在韓米軍も駐留しているが、重装備の部隊であり、在沖縄海兵隊ほどの機動性は有していない。
海兵隊をハワイやグアムに置けばいいという議論もあるが、いかんせん遠すぎる。

なるほど、そうなのかと思ったが、屋良朝博『砂上の同盟』を読むと話が違ってくる。

沖縄には良好な軍港がなく、軍艦の補修・維持できる場所がない。

海兵隊はその名の通り、「海の兵隊」であり、海軍の艦船に乗って戦地へ投入される。船は沖縄にはなく、長崎県佐世保を母港としている。仮に北朝鮮が暴走したとき、船は佐世保から沖縄へ南下して隊員と物資を拾い、再度北上する。

機動性を有しているわけではないらしい。

沖縄は戦略的に最良の場所なのか。

2002年、米国防総省のシンクタンク「アジア太平洋安全保障研究所」での安保問題セミナーで、沖縄駐留の海兵隊司令官は屋良朝博氏の質問に答えて、「沖縄でなくても構いません」と答えている。
地理的にいい場所なら攻撃も受けやすいわけで、米軍にとって沖縄は攻撃を受けやすい脆弱性を抱える。

米軍はフィリピンの基地を手放すことはあり得ないと考えられていた。
しかし、フィリピンは米比基地使用協定を破棄したので、1994年に米軍は撤退した。
フィリピンと日本の違いは何かというと、フィリピンはアメリカから賃貸料を取って基地を提供していた。
それに対し、日本は駐留経費を払ってアメリカ軍にいてもらっている。

在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は2014年では1848億円だが、これ以外にも基地周辺対策費などがあり、2012年、日本の支援は5728億円。
米軍を駐留させる経費負担は、日本がイタリアの12倍払っている。
NATO全体の2倍。

日本に駐留していれば、家族用の庭付き住宅、映画館、ショッピングモールのほか、水道、光熱費も日本の負担。
ある人が岩国基地を見学し、あまりの豪華さに「日本がアメリカに負けるはずだ」と言っていたが、そのお金は日本が出しているんですね。
他にも米軍再編関係経費というのもあって、沖縄の海兵隊グアム移転も、移転費用130億ドルのうち日本が6割を肩代わりする。
たくさん金を出して、口は出さない。

基地を減らしたいならきれいな海を埋め立ててでも、軍飛行場を造れ、部隊移転の金を出せ、さもなければ基地は動かないぞ、という。何とも脅しのような論理だ。

沖縄にこだわるのは戦略的発想ではなく、お金が一番の理由ということのようです。

沖縄の地理的優位性を唯一の根拠とした「戦略神話」を作り上げることで現状を維持しているというのが、日米安保・基地問題の実相だろう。


『砂上の同盟』にこんなエピソードが紹介されている。
防衛官僚が太平洋海兵隊司令官付のアメリカ人政策アドバイザーと意見交換した。
政策アドバイザーが「なぜ、制服組の自衛官が同席しないのですか。彼らの仕事に直結することですよ」と質問したら、防衛官僚は「自衛官は秘密を守れません。だから込み入った話には同席させたくない」と即答した。
航空幕僚長だった某氏も秘密を守れない人なのかと思いました。

コメント
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