不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

上杉聰『これで納得! 部落の歴史』3

2013年06月11日 | 

差別している一般民衆が加害者なのに、の人に対してなぜか被害者意識を持っている。
の人々と同席したり、食事などをしたら、「穢れ」が伝染すると考えられていた。
「排除されていたの人々が農民に交わってくる」と、自分が穢れて「自分たち百姓がにされる」と思い、被害者意識を持つようになる。
「人は、被害者の立場に置かれたと感じるとき、容易に攻撃的となります」

明治初年に解放反対騒擾が主に西日本で起きたことを上杉聰『これで納得! の歴史』によって知った。
焼かれたり破壊された家屋は2068戸、死傷者は51人。
明治6年5月26日~6月1日にかけて岡山県で起きた事件では18人が殺されている。
5人(数えの1歳から79歳)の犠牲者のうち2人を竹槍で刺し殺した男(24歳)の自供調書が『これで納得! の歴史』に引用されているので、一部を紹介。

「追々多人数に相成り、右小一郎(被害者)並びに外四人とも、頭上(頭部)その他総身(に)疵所出来、出血致し、小一郎は疵受け候儘逃げ去り、「つや」(79歳)「しも」(43歳)「はつ」(1歳)「こむめ」(9歳)等は、右疵のため打ち倒れ候に付、竹槍を以て右の内「はつ」の横腹を突き、殺害に及び、次に「こむめ」の胸先を同様(に)突き立て候えども、その節絶命に至り候とは相覚え申さず候」

ルワンダでのフツとツチの虐殺もこういう感じだったのかもしれない。
よその国の話ではなく、関東大震災での朝鮮人虐殺も被害者意識ということでは同じ心理である。
ごく普通の生活をしている、普通の人が残酷に殺してしまう。
在特会のデモでの「朝鮮人を殺せ」というシュプレヒコールも笑ってすませるわけにはいかない。
というのも、ルワンダではフツ族向けのラジオ番組のディスクジョッキーが虐殺を扇動している。
煽り立てる人間の責任は大きいと思う。

ただし、への攻撃には「政府への強い不信感を抱いていることを見てとる必要があります」と上杉聰氏は指摘する。

徴兵令によって戦争にかり出されて命を奪われる、断髪など西洋風に変えさせられる、といったことへの不信である。

「未知の世界へ強引に引き込まれていく農民の漠然とした不安が読み取れます」
未来への不安は現在でも強いわけで、それがアジアの国々への反感、攻撃となっているのかもしれない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする