先週に引き続き「老人保健法」が廃止に至った理由を少し触れてみようと思います。老人保健法が廃止に至ったのは、先週も触れていますが、加入者按分率を創設当初は50であったものが100にまであげてしまったこととされています。
老人保健拠出金の計算は以下のように定められていました。
(A式)当該保険者の老人医療費総額×(全保険者の平均老人加入率÷当該保険者の老人加入率)×加入者按分率×(1-公費負担割合)
(B式)当該保険者の老人1人当たり医療費×当該保険者の加入者数×全保険者の平均老人加入率×加入者按分率×(1-公費負担割合)
「加入者案分率」とは、老人医療費のうち老人が加入している割合の格差による負担の不均衡をどの程度まで調整するかという役割を担っています。調べたところによると次のような変遷をたどっています。1982年2月~50%、1983年度47.2%、1984年度45.1%、1985年度44.7%、1987年1月~80%、1987年度~90%、1991年度100%。これをみると1987年からいきなり財政状況が悪くなったためなのか、加入者按分率が急速に引きあげられたことがわかります。
加入者按分率が100まで上がったという理由については、老人保健法の制度成立当初の退職被保険者の数に読み違いがあり、要するに被用者保険者が負担する予定であった被用者OB分の額が見込み額に比べて少なく、国民健康保険が負担する費用が予想より大きくなってしまったためだったということです。
退職被保険者になるには、「被用者年金加入期間が20年以上もしくは40歳以降に10年以上」を要件としており、実際老齢(退職)年金を受給している必要があります。今は経過的に若干残っている制度となってしまいましたが、老人保健法が廃止される前はサラリーマンが定年退職後ほとんど適用となっていた制度です。ちなみに、何故医療なのに年金受給が条件なのかと思っていたのですが、「対象となる退職者を把握するには過去のデータを持っている被用者年金を利用する」というある意味アイディアがあったようです(「戦後社会保障の証言―厚生官僚120時間オーラルヒストリー―」〈有斐閣〉より)。
医療保険制度については、後期高齢者医療制度も含めて再度見直される公算が大きいと思います。今後医療制度全体について真剣に抜本的な改革を検討することになると思いますので、過去の制度の総括し、振り返る価値はあるのかなと思っています。
今回ゼミで上記の書籍(オーラルヒストリー)を取り上げることになったため、読んでみて実感したのは、なかなか書籍の中で文章とはなってこない「語られること」は文章と伝わってくる内容が違うということでした。文章ではある程度結果的な事柄が書かれているわけですが「語り」においては結果より経緯が詳しく語られ、その中の一言で鮮やかにイメージできたりすることが何回もありました。そういう意味では授業やセミナーも同じなのかもしれないと感じました。
先週、尊敬すべき女性の先輩とランチをしたとき、スマホにキンドルを入れてバンバンそれも源氏物語や蜻蛉日記から夏目漱石まで読んでいると教えてもらいました。スマホで読むと7分間だけ電車に立っているあいだであっても読めるし文字も適度な大きさにすることができて、又無料版もたくさんありすごく良いということでした。すごいなあと思うと同時に元気をもらいました。キンドル版が大学院で使う書籍にはほとんどないので残念ですが、早速キンドルをスマホにダウンロードしました。