継続雇用制度の類型としては「勤務延長制度」と「再雇用制度」の2種類があります。
再雇用制度は、定年等一定年齢で退職させたのちに再び雇用する制度であるのに対して、勤務延長制度は、一定年齢で退職させることなく引き続き雇用する制度です。
平成24年就労条件総合調査によると、一律定年制を定めている企業のうち、制度別にみると、「勤務延長制度のみ」の企業割合は11.4%、「再雇用制度のみ」の企業割合は71.6%、「両制度併用」の企業割合は9.1%(同10.7%)となっており、圧倒的に再雇用制度の導入率が高いことになります。
また、既に廃止されている雇用管理調査の平成15年版によると、「勤務延長制度(両制度併用を含む。)」の企業は企業規模の小さい企業に多く、「再雇用制度(両制度併用を含む。)」の企業は企業規模が大きい企業に多くなっている、とされています。
4月からの高年齢者等雇用安定法の改正により、原則希望者全員が65歳までの高年齢者雇用確保措置の対象となり、継続雇用制度の基準は年金の支給開始年齢に合わせた経過措置のみで設定できるということになりました。前回平成18年度の改正の高年齢者雇用確保措置の導入の際も、そのうち65歳までの完全雇用が義務化されるのであれば、65歳に定年を延長してしまうのはどうかというご相談が特に規模的に小さな企業でありました。定年延長は60歳の定年年齢が65歳に延長されるため、継続雇用制度のように60歳時点で処遇が変わるわけではなく、一般的に年齢とともに上昇してきた賃金ををのまま維持して65歳を迎えることになり、企業としてはかなり賃金負担が大きいものです。従って規模が小さければ65歳まで雇用するにしても人数的に限られますから、それほど賃金負担が大きくならずできることです。大きな企業では、60歳時点の賃金をそのまま65歳まで維持することは対象人数が多いだけに大きな負担になるため、60歳で定年してもらい処遇を変えて65歳まで雇用を確保するということになるわけです。継続雇用制度か定年延長かのポイントはそこにあります。
継続雇用制度の中では、60歳定年の際一回退職して再雇用する再雇用制度がこれまで中心だったと思います。処遇も大きく変えることが可能であるため企業にとっては使い勝手の良い制度であったと思います。それに比べて定年退職するわけではないため処遇の思い切った変更ができない勤務延長制度の利用率は低かったと思います。しかし今回の改正で勤務延長制度の利用も検討してみてもよいような気がしてきました。いっきょに定年延長にしてしまうより、色々なケースに柔軟に対応できるような気がするのです。
60歳から65歳の働き方は多様です。これまでと同じ仕事をこなせる体力がある人とない人の差が出てきます。就業意欲も年金が支給されるとだいぶ変化が出てくるようです。それを考えると60歳時点で定年退職する人、再雇用制度で処遇が大きく変わり(働き方も変わり)65歳まで働く人、勤務延長制度で処遇が変わらず65歳まで働く人というそれぞれがあってよいかと思います。企業にとって必要な技術を持った人は処遇を変えず勤務延長制度で働いてもらうことを試してみてもよいような気がするのです。
勤務延長制度は、いったいどこから来た考え方なのか調べてみたところ、国家公務員法に以下のように定められていました。
(定年による退職の特例)
第八十一条の三 任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。
(勤務延長の概要より)
1 目的
勤務延長とは、定年退職予定者の職務の特殊性又は職務遂行上の特別の事情からみて、当該職員の退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときに、定年による退職の特例として、当該職員を定年退職日以降も当該日に従事している当該職務に従事させるため引き続いて勤務させる制度
2 要件
勤務延長を行うことができる場合
(1) 職務が高度の専門的な知識、熟達した技能又は豊富な経験を必要とするものであるため、後任を容易に得ることができないとき
例定年退職予定者がいわゆる名人芸的技能等を要する職務に従事しているため、その者の後継者が直ちに得られない場合 等
3 期限
(1) 勤務延長の期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して1年以内で任命権者が定める。
(2) 勤務延長の期限が到来する場合において、勤務延長の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、1年以内で期限を延長することができる。
(3) 最長でも3年間(60歳定年の場合であれば63歳まで)と期限が限定されている。
勤務延長制度の使い方が、上記で少し見えてきたような気がします(追記:63歳までは65歳までにする必要があります)。
元トリンプの社長である吉越浩一郎氏の考え方はとても参考にしています。テレビで早朝会議の風景を見たこともありますが著書の「デッドライン仕事術」には会議については「物事を話し合う場」ではなく、「物事を決める場だ」とあります。また、そんなことまで会議で話し合う必要があるのかということについても「取り上げるべきかどうかを検討する暇があったら取り上げて片付けた方が早い」とあります。テレビでも見たスピード感をOURSでも見習いたいと考えています。