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社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

開業記⑲社労士の基本 手続業務

2011-05-22 22:54:49 | 開業記

19 社労士の基本 手続業務

労働・社会保険の手続きは社労士の実務の基本だと今でも思っています。ここ10年弱、私の仕事は主に顧問先からの法律を基本とした労務管理上のご相談を一緒に考えて回答するというものですが、やはり手続きを全く知らない相談業務というのは私にはイメージできないものです。

開業当初は当然一人で何もかもするわけですから、当時は手書きで資格取得届や離職票を作成しハローワークなどに持って行っていました。時々単発で入る仕事は、どうなの?という仕事が結構ありました。ある日、まだ顧問先の数も少なく、「もっと顧問先がほしいなあ」といつも思っていたところに税理士さんから電話が入りました。東京駅の近くの会社で相談したいことがあるそうなので行ってみてくれないかということでした。「東京駅の近く!」というとかなり大きな会社かもしれないと期待は膨らみます。アポイントを取り会社に向かいしました。そこで依頼されたのが、会社をもうすぐ「たたむ」ことになるから雇用保険にさかのぼりで加入させたいということでした。要するに今まで雇用保険に加入すらしていなかったのに廃業する際になって従業員に失業給付を受けられるように出来ないかということです。本来起業する際に雇用保険に加入したいというのならわかるが廃業するから加入とは・・・。世の中ってこんなもん?と思いました。

また別の会社にやはりご紹介で張り切って行ってみると「社会保険料の抑制のため賃金台帳の数字ではない金額で資格取得できないか」?今のように会社にコンプライアンスという意識もほとんどなく、税理士さんは税金を、社労士は社会保険料をできるだけ節減するのが役割と思っているようでした。スタッフもいない時期はすぐそばに相談相手もいないので一人でモンモンと悩みました。

迷うなら法律通りときっぱり割り切るきっかけになったのは、「結婚して被扶養者になったのに、給付制限が過ぎ雇用保険の失業給付の受給が開始されると被扶養から抜けて、受給し終わるとまた被扶養に入れるという作業」についてだったことはよく覚えています。被扶養者や3号被保険者の場合自己申告に頼っている状態ですから、目をつむり見逃せば過ぎて行ってしまうこともあるところをきちんと管理していかなければいけない、それでないと社労士が仕事をする意味がないと強く思うようになったのです。

書類の一つ一つは法律を根拠として作成するものなので、奥の深いものです。社員が病気のためまとまって休むことになったということであれば、通常健康保険の傷病手当金をすぐに手続します。しかし、たとえば受給日数が今回は数日、2か月出勤後同一の病気で入院を開始予定で療養が長引く可能性があるという時には果たして今開始がよいのか2か月後がよいのかなどを考えるようになりました。ここで受給を開始してしまうと開始から1年6か月の傷病手当金の受給期間がスタートしてしまうことになるからです。受給方法など出来るだけ被保険者の不利にならないよう可能性を考える必要があります。

開業したころより今は手続きは複雑になりました。またM&Aも多くあり、その都度新旧事業主実態証明と転勤届を出すのか、それとも台帳の置き換えで行けるのか、これは一部事業の営業譲渡なのか旧の会社が完全消滅する合併なのかなどにより手続きは異なります。また、その場合労災のメリット制は引き継げるのか?といったたくさんのことを労働・社会保険横断的にリストアップしていく必要があります。

手続きは会社担当者でもできるといわれることもありますが、やはり少なくとも相談できる社労士がいるのといないのとでは違うと思います。複雑な労働・社会保険の諸手続きについて漏れやミスなく行うとすれば、体系的にそれらの法律を頭に入れて対応する必要があり、単に前任者に教わった通りやればできるとか、縦割りのはっきりしている各行政に聞きながらやればできるというものでもないのです。

私は手続きは普段やっていないのですが、毎年年度更新の際は監督署の受付のお手伝いをします。この年更の受け付けは開業2年目に初めて経験しました。ドキドキしながら検算をして、検算をしながら「こういう風に書くんだ~」と学び本当に勉強になりました。しかもそれを悟られないようにするのは技として必要なことです。あまりに実務を知らないのではほかの社労士の先生に恥をかかせることになると思うからです。そんなところが開業において必要とされる能力といえるかもしれません。

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