先週東京テレワーク推進センターのセミナーでお話しさせて頂いた改正育介法とテレワークのテーマでは質問に答えるコーナーがあり、その中で「小1の壁」については育介法の改正内容にはないようだがどう考えるかというものがありました。
確かに今回の改正で小1の壁に対する施策について表立って謳われてはいませんが、子の看護休暇が小学校3年生修了までに延長されたのは、施策の一つになっているでしょうか。ただ育介法は子の年齢のどこまでを支援するかというと、育介法の成立当初の1歳から3歳へ、3歳から小学校就学前までに改正を重ねてはいますが、小学校に入学すると一段落といった感じはあると思います。
そこで小1の壁とはどのようなことを言いその対策を調べてみたのですが、まずは厚生労働省は「小1の壁」打破するとともに、次代を担う人材育成のために「放課後子ども総合プラン」を策定していました。この中で児童の放課後等を安全・安心に、多様な体験・活動を行うことができる「放課後児童クラブ」「放課後子ども教室」の整備を進めるとしています。ただ調べてみると小1の壁は放課後だけではなく、朝の時間帯の問題が大きいようです。
小学校に上がるまで、保育園に通っている場合は午前7時から7時半の間に預かりを開始することが一般的のようです。かたや小学校の登校時間は午前7時半から8時までがほとんどで、30分のずれがあります。この30分のずれにより共働きの親が先に自宅を出て、小学校に上がった子供が鍵を閉めて登校するという状況になるということです。
特に小学校に入学したばかりというこれまでの環境に変化があるにもかかわらず「いってらっしゃい」が言えない、見送れないのは不安もあろうかと思います。柔軟な働き方ができない企業であれば、フルリモートの会社への転職をするなどを選択するケースもあるようで「小1の壁」は大きな問題だと感じました。
かたや教師の働き方改革のコンサルをさせて頂いていると、朝子供たちを迎える時間帯については労働時間になるため、校門の開門時刻を遅らせる、または朝の時間帯はボランティアなどにお願いするというご提案もしており、教師と子どもともに助かると思える施策はなかなか難しいものがあります。
ご質問の回答としては、法律の規定がない場合でも、会社で独自の施策を設けることにより人の採用・定着において効果を出すこともできるということでOURSで導入した2人目の子の送り迎えのための出産前時短勤務をお話ししましたが、「小1の壁」対応の施策としては何ができるか考えてみました。平凡なものしか思いつかないのですが、小学校3年生になればかなり子供も小学校生活に慣れてくることと自分でかなりのことが判断できるという点では小学校入学時から小学校2年生までの2年間の短時間勤務なども良いように思います。
1.フレックスタイム制
2.始業・終業時刻の繰り下げ(時差出勤)
3.小学校2年生までの2年間の短時間勤務
4.部分休暇
(NHKで事例を紹介、部分休暇は1日最大2時間まで申請が可能・休暇部分は無給)
いずれにしても「小1の壁」に限らず柔軟な働き方が選べるというのは今後の事業経営においては必要な考え方であり、特に中小企業であれば個別対応も可能なので、アイディア次第で導入は可能だろうとは思います。
来春育介法と一緒に改正になる雇用保険法の新給付「育児時短就業給付」は2歳未満の子を養育するため時短勤務をしている場合の賃金への加算です。2歳未満というのはあまり長く短時間勤務を続けていくとフルタイムの復帰が難しくなるからという理由と言われています。確かに小学校就学前まで短時間勤務をしていると、小1の壁にぶち当たり、結局子が小学校に入学しても短時間勤務を継続となりがちという面もあり、できれば小学校入学前にいったんフルタイムに復帰した後、小学校入学時に期限を決めて使える施策がある方が良いように思います。小学校の入学は、子にとっても親にとっても生活面での新たな局面であり、そこで働き方も変化するのはかなり負担が重いものだと想像しますので。