定年年齢については平成10年の高年齢者等雇用安定法の改正により、下限年齢60歳が定められており、それ以後65歳までの雇用確保措置(義務)や70歳までの就業確保措置(努力義務)は設けられたものの、定年年齢の60歳下限については改正されていません。今後70歳定年年齢義務化になるときが来るかもしれませんが、今のところ予定は見えていません。高年齢者等雇用安定法の規定は以下の通りです。
(定年を定める場合の年齢)
第八条事業主がその雇用する労働者の定年(以下単に「定年」という。)の定めをする場合には、当該定年は、60歳を下回ることができない。ただし、当該事業主が雇用する労働者のうち、高年齢者が従事することが困難であると認められる業務として厚生労働省令で定める業務に従事している労働者については、この限りでない。
ただし書き以降の60歳を下限とする必要がない業務は施行規則により定められており「鉱業法第4条に規定する事業における坑内作業の業務とする。」とされています。
大企業はコロナ前までは一律65歳で継続雇用が終了=退職がかなり徹底されていたように感じますが、最近は人手不足もあり「会社が認めた場合は、65歳以後も契約を更新する場合がある。」という一文を入れたいというお話がかなり頻繁に来ている状況です。
現状定年年齢はどのような状況か、令和5年12月に厚生労働省が発表した「高年齢者雇用状況等報告」をみると、以下の通りでした。
定年制廃止企業 3.9%、60歳定年企業 66.4%、61歳から64歳定年企業2.7%、65歳定年企業23.5%、66歳から69歳定年企業1.1%、70歳定年企業2.3%
60歳定年制は前年から1.7ポイント減少、65歳定年制は1.3ポイント増加ということでジワリと65歳定年制を採用する企業が増えてきているのが分かります。
9月13日に閣議決定された高齢社会対策大綱(概要)では、生涯を通じて活躍できる環境の整備の中で年齢にかかわらない活動機会の拡大が取り上げられており、その中で現在収入のある仕事をしている60歳以上の人について、「働けるうちはいつまでも」との回答が約4割、「70歳くらいまで」又はそれ以上まで働き続けたいとの回答を合計すると約9割に上るという若干驚きの数値が出ています。
おそらく定年年齢の下限は60歳と法律が定めていても、今後は65歳定年制をとる会社が増えていくものと思います。その場合、賃金制度や退職金の扱いはどうするか、社労士としてはアドバイスをしっかりできるように準備しておきたいところです。
つい先ごろも顧問先で65歳定年制を導入した企業があったのですが1点導入する際の留意点にスタッフと話していて気がついたのが、定年退職日の決め方です。年齢に関する法律で誕生日の前日に新たな年齢に達することになっていますが、定年退職日を「65歳に達する日」「65歳の誕生日の前日」「65歳に達した日の年度末」などと規定している場合、失業給付を受給する際には離職日は65歳となり、受給資格は「高年齢求職者給付金」となります。要するに最大でも基本手当日額の50日分の給付日数になってしまいます。65歳未満で退職していた場合は、最大150日分を受給できますので、100日分の差となってしまいます。150日の失業給付を受給するのであれば定年退職日を「65歳に達する日の前日」などと規定しておくことになりますが、その場合65歳定年とはいえなくなるでしょうか。ハローワークに確認したところによると、65歳に達してからの離職は必ず「高年齢求職者給付金」の対象となるとのこと。65歳定年制導入の一つの課題だと思います。
これまで60歳定年の場合、65歳まで再雇用され、再雇用後であれば65歳到達前に退職するケースもかなりあったかと思いますが、定年となると最後まで退職しないケースがほとんどとなるかと思われ、また退職金への影響も考えると定年退職日の設定は慎重に検討すべきと考えます。
土曜日は猛暑の中社労士会の野球大会の応援に行き、真っ黒に日焼けしました。渋谷支部は3連覇ということで、新たなメンバーが加入しますます強くなってきた感じです。毎年この野球応援が終わるといよいよ秋シーズンが始まります。OURSの新年度も9月スタートなので、明日から気持ちを新たにして行きたいと思います。