年金の財政運営方式として、「積立方式」と「賦課方式」があります。厚生労働白書にもたびたび登場して、授業でも必ず取り上げて説明していました。
積立方式と賦課方式の説明については厚生労働省で作った以下のサイトがわかりやすいと思います。
http://www.mhlw.go.jp/nenkinkenshou/finance/index.html
日本の年金制度が創設時に積立方式を採用した理由は、平成23年の厚生労働白書のコラムに以下のように記述があります。
日本の年金制度の財政運営方式は、現在では修正積立方式を採用しているが、制度創設時は「積立方式」を採用していた。では、なぜ積立方式を採用したのか。『昭和34年度版厚生白書』は次のように説明している。「年金の財政運営方式としては、この(積立方式の)ほかに年年必要な給付額をその年度に徴収する『賦課方式』があるが、これによるときは、国の財政規模という観点からの影響を受けやすいため、将来において年金給付が不安定となるおそれがあり、他方、現在のわが国のように、老齢人口の占める比率が急速に高まりつつある国においは、将来の生産年齢人口の負担が重くなるという不合理も生ずるので、積立方式を採用して制度の安定と確立を期したわけである。」しかしながら、積立方式は、物価や賃金の変動への対応が困難という課題も有している。このため、高齢者の生活を保障できる実質的価値のある年金を支給するという観点から、その時代の生産活動に従事する現役世代が収入を失った高齢世代を支えるという、世代間扶養の考え方を基本に置いた賦課方式の要素の強い財政運営方式に改められた形となって現在に至っている。
これについては、講義で説明するときにいつも結局「積立方式又は修正積立方式」なのか「賦課方式なのか」または「賦課方式の要素の強い財政運営方式」というべきなのか、またいつ積立方式から賦課方式へ変わったのか、といったところで自分でも確信が持てずにいました。
結局結論としては、積立方式から以下にある段階保険料方式を採用した昭和29年の改正から乖離して行き、次第に賦課方式としての要素を強めていったということですね。確かに段階保険料方式は、本来必要とされる平準保険料率を下回る保険料率でスタートして段階的に引き上げていくという方式ですから、下回る保険料率に設定した時点で積立方式から乖離したというのは納得がいくことです。
昭和19年 制度発足当時は「積立方式」を採用
昭和29年の改正 インフレ・負担能力を考慮して平準保険料を下回る保険料の設定を行うという「段階保険料方式」を採用→この時点で純粋な積立方式からは乖離
昭和48年改正 高度成長に伴う中で、物価や賃金の変動への対応が困難という課題に対応するため、物価スライドや賃金再評価に要する原資を後代の保険料で賄うとしたことで「賦課方式」の要素が強まる
平成16年の改正 積立金を給付費の1年分程度にすることとなったため、そうなった場合は「賦課方式」を基本とする(基礎年金の財政方式は、完全賦課方式で運営している)
金曜日には、東京都社労士会の総会があり、新たな新年度がスタートしました。あっという間の一年ではありましたが色々なことがありずいぶん1年前が以前のことのようにも感じます。
今年は昨年とはまた違った環境にいますが、その環境をできるだけ楽しんで、充実させていきたいと考えています。