OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

退職後の国民健康保険料

2010-04-11 23:17:41 | 社会保険

社労士の仕事内容は多岐にわたります。OURSの通常の業務は人事労務管理の相談やご質問に対応するコンサルティング業務と労働保険・社会保険の手続きを行うアウトソース業務です。一応部門を分けていますがアウトソース業務でもただ手続きを行うだけではなく、顧問先から日々たくさんのご質問や相談を受けています。

よくあるご質問に、退職後医療保険はサラリーマン時代から引き続く健康保険の任意継続と地域の健康保険制度である国民健康保険のどちらの方が良いのかというものがあります。

4月1日施行の改正で、国民健康保険の保険料は雇用保険法の特定受給資格者と特定理由離職者(倒産等や正当な理由による自己都合による退職)に該当する場合は、算定基礎額である前年の給与所得を30%で算定して保険料を決定することになりました。

健康保険と国民健康保険は以前は治療などを受けた際の自己負担額が異なっており(健康保険1割に対して国民健康保険が3割等)、健康保険が有利でした。しかし2002年の医療制度改革で健康保険と国民健康保険ともに同じ3割の負担になりました。

従って今は保険料負担だけが異なるということで、退職後2年間任意継続被保険者となり健康保険に入り続けたときの保険料と国民健康保険の保険料のどちらが低額かを比較して加入制度を決める場合が多いのです。

これまで退職直前の給与が高い場合は、保険集団の標準報酬月額の平均額 を保険料の算定基礎の上限とする健康保険の任意継続被保険者のほうが(会社負担分も負担するとしても)前年の給与所得をそのまま算定基礎とする国民健康保険に加入するよりは保険料が低くなるというのが一般的な考え方でしたが、今後は国民健康保険のほうが低くなることが多くなりそうです。やむを得ず退職した場合は、ケースによって慎重にアドバイスすることが必要になりました。

このような細かいしかも制度横断的な法改正について的確にこたえることができるのは社会保険労務士しかいません。社会保険労務士業務をしているとアウトソースだけではなくコンサルティングでも社労士しかできない仕事というものがあるのだと痛感することがあります。これらのベースは社労士試験で勉強したことばかりです。確かに社労士試験では書類の書き方や添付書類などは出題も少なく勉強もしません。開業するとその点に戸惑うこともありますが、勉強したことは決して無駄にはなりません。書類の書き方などよりもずっと大切なそれらの根底にある法律を身につけることが複雑に絡み合う各法律の適用に関するアドバイスのもとになるからです。これは体系的に各法律を勉強した社労士でなければ無理なことです。実務経験だけで対応できるような生易しいものではありません。試験の範囲が広いことも勉強しているときは大変ですが、それだけ業務範囲が広いということです。

先日電車の中で社労士の資格をお父さんが持って定年後も再就職をしたという話を聞いて友人の方が「社労士なんてすごいね~」というのを耳をダンボにして聞きました。特定社労士もこれからどんどん増えて、勉強をしっかりしていけば社会保険労務士は今よりもっと価値のある資格になると思います。活躍の場は思っている以上に多いと思います。これからが楽しみです。