goo blog サービス終了のお知らせ 

OURSブログ

社会保険労務士としての日々の業務を行う中で、考えたこと、感じたこと、伝えたいことを綴る代表コラム。

傷病手当金の支給調整について

2013-08-25 22:16:41 | 社会保険

 

今日は社会保険労務士本試験の日でした。講師時代の15年間は朝から講師室に詰め解答づくりに汗をかいていました。講師を卒業してから何年も経つと緊迫感も薄れてきていたところ、今年は事務所の若手男子3人が受験ということで1日なんとなく落ち着かない気分で過ごしていました。

昨年秋から勉強が進めばいくらでも質問に答えようと結構楽しみにしていたのですが最後までほとんど質問もなく本番に突入したので心配ではあります。しかし、自分の今の力を十二分に出し切れればあとは結果を待つのみということをよく講師時代に受講生に言っていたことを思い出します。

試験前最後の出勤日にひとつ質問がありまして、それが傷病手当金と老齢退職年金との調整の話でした。この傷病手当金と老齢退職年金の調整のポイントは、あくまで退職後に継続給付として受けている傷病手当金について老齢退職年金が受けられる場合は支給調整があるということです。要するに退職後も傷病手当金を受けている場合に老齢基礎年金や老齢厚生年金が受けられることになった場合は、休業補償としての傷病手当金を受けずとも年金があるので生活には困らないであろうということで傷病手当金が支給停止されるということです。もし退職していない場合は、老齢厚生年金は在職老齢で支給停止されていることもあり、傷病手当金の受給は保険料を支払っている者の権利でもあるので支給停止になることはない、と自分流に私は解釈しています。

質問されたときにさくっと答えられなかった自分に少しがっかりしましたが、またスタッフの誰かがこれからも勉強することがあれば、今度はたくさん質問してもらって自分の知識も一緒にブラッシュアップして行けるのを楽しみにしようと思いました(まあ全員受かってもらうのが一番良いことは良いのですが、長年受講生の苦労を見ている私としてはそう楽観的にもなれないのが正直なところです)。

以下、傷病手当金が支給停止される場合です。

①出産手当金を受けられるとき

傷病手当金と出産手当金を同時に受けられるときは、出産手当金を優先して支給し、その間、傷病手当金は支給されません。ただし、すでに傷病手当金を受けているときは、その支給額分だけ出産手当金から差し引いて支給されます。

②資格喪失後に老齢退職年金が受けられるとき

資格喪失後に傷病手当金の継続給付を受けている方が老齢(退職)年金を受けているときは、傷病手当金は支給されません。ただし、老齢(退職)年金の額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

③障害厚生年金または障害手当金が受けられるとき

傷病手当金を受ける期間が残っていた場合でも、同じ病気やケガで障害厚生年金を受けることになったときは、傷病手当金は支給されません。ただし、障害厚生年金の額(同時に障害基礎年金を受けられるときはその合計額)の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。また、厚生年金保険法による障害手当金が受けられる場合は、傷病手当金の額の合計額が、障害手当金の額に達する日まで傷病手当金は支給されません。

④労災保険の休業補償給付が受けられるとき

労災保険から休業補償給付を受けている期間に、業務外の病気やケガで仕事に就けなくなった場合は、その期間中、傷病手当金は支給されません。ただし、休業補償給付の日額が傷病手当金の日額より低いときは、その差額が支給されます。

 今回受験生を事務所に抱えて後半に気が付いたのは、やはり15年間の講師生活の中で受験に対しての勉強テクニックや考え方などいろいろなものを自分の中でしっかり確立してきていたんだなということ。色々と思いだしてきました。それは今はもうアウトプットすることがなく少しもったいないような気がしましたので、今後少し何かできることがあるか考えてみようと思います。やはり受講生OBが時々言ってくれるように「講師が天職」とまでは思いませんが色々な点で「講師業が大好き!」なんですね。


妊娠中の傷病手当金

2013-03-25 00:50:46 | 社会保険

妊娠中につわり(妊娠悪阻)や切迫流産のため休業が必要と医師の診断があった場合に、傷病手当金が受けられるかというご質問を受けました。答えは「受けられる」です。

傷病手当金とは、健康保険の被保険者が業務外の病気やケガのため休業し、給与等が支払われない期間について、生活を保障するための給付ですが以下の4つの要件を満たす必要があります。
1. 業務外の病気やケガで療養中の場合
2. 療養のため仕事につくことができなかった場合(労務不能)
(入院・通院を問わず、医師等による労務不能の証明が必要となります)
3. 休んでいる期間に対し、会社から給与等の支払いがないか、または支払われた金額が傷病手当金より少ない場合
4. 4 日以上仕事を休んだ場合(療養のため仕事を休み始めた日から、連続した3 日間は待期期間となり、4 日目から支給の対象になります)

この傷病手当金の受給条件を満たしていれば、理由が妊娠を理由にした症状であっても傷病手当金が支給されるということになります。

なお、支給額は、1 日につき、標準報酬日額の3分の2に相当する額です。

傷病手当金と出産手当金は、ともに生活保障のための保険給付なので、これらの保険給付が競合するときは、傷病手当金に優先して出産手当金が支給されます。

もし出産手当金の対象となる産前42日(多胎妊娠であれば98日)より前に、医師から切迫流産などで安静が必要ということで休業を指示されて診断書が出た場合は、その期間については傷病手当金を受けられます。そのままお産まで安静となれば、出産手当金を引き続きうけて、出産については出産育児一時金を受けるということになります。

社労士講座で講義をしていた時に、傷病手当金と出産手当金が競合した場合は出産手当金が優先支給という話は毎年していましたが、ご質問を受けて具体的なイメージができました。やはり質問はお宝ですね。

土曜日、今年初めて山に登りました。頂上でお湯を沸かしてコーヒーを飲んだら美味しかったです。いつも登っている時は「もう山に登りたいと思わなくなるかも」と思うのですが、翌日登山靴を陰干ししたりしている時はまた行きたいなあと思います。


出産育児一時金の支給方法について

2012-02-12 21:22:38 | 社会保険

出産育児一時金の支給申請については「直接支払制度(保険者が直接医療機関に支払う制度)」が原則となっています。しかしこの直接支払制度ができて以降、このあたりがとても複雑になっており、セミナーの準備をしながらやっとわかってきました。

現段階でどの程度この制度が普及しているのかはわかりませんが、平成22年2月12日~2月23日における調査結果を見ると、全面的実施は病院で75.5%、診療所で29.3%になっています。この結果が芳しくなかったため、平成23年3月1日まで直接支払制度の導入が無理な医療機関は実施猶予で構わないとされていました。その間、導入できない医療機関の対応としては「直接支払制度に対応していない旨の院内掲示と、制度に対応していない旨を説明し、妊婦の合意を得ること」ということになっていました。

その後やはり普及が進まなかったのか、平成23年4月からは直接支払制度への対応が困難で、厚生労働省へ届出を行った一部の医療機関については、出産育児一時金の「受取代理制度(被保険者が受けるべきお金を医療機関が代わって受ける制度)」が利用できるようになりました。

ただし、直接支払制度や受取代理制度が使えない医療機関の場合は、従来通り原則として仮払い精算方式で出産育児一時金は支給されることになっています。

直接支払制度が実施されたのは平成21年10月からで、それまでは出産後退院するときにまず被保険者が医療機関にかかった費用を支払い、その後支給申請をして出産育児一時金が支払われるという仮払い精算の方法が原則的な方法でした。何十万円という費用をとまず支払う必要がありましたから確かに負担は大きかったと思います。ずいぶん昔ですが私もびっくりした記憶があります(ちょっとのんきでしたね)。直接支払制度や受取代理制度は被保険者にとってはとてもありがたいと思います。

TBSテレビで放送している「運命の人」面白いですね。私は政治モノや経済物のドラマが大好きなのでもちろん欠かさず見ておりますが、先日文庫本まで購入しました。でもなんだかメチャクチャ忙しくてまだほとんど読めていません。この週末もほとんど仕事をしましたが来週前半で少し落ち着くかなと予想しています。そうしたら一気に読んでみます。


手続きひとつのこだわり

2011-11-27 14:11:54 | 社会保険
昨日は同じ渋谷支部の二宮先生の勉強会に久しぶりに参加しました。3人の先生が講師としてお話されましたが、それぞれ社労士としての仕事の内容が多様で、また経験に基づくものでしたので、とても勉強になりました。

なかでもこれも同じ支部の住先生のお話には共感を覚えました。手続きをする際におかしいと感じたことに対しては健保組合や行政に根拠を示してきちんと意見をいうという姿勢にです。

1つは扶養の認定について、1つは2以上事業場勤務の扱いについてです。

扶養認定については、あきらかに被扶養に該当するにもかかわらず、法定されていない確認書類の提出ができないために認められないとされたことに対して、健保組合の上層に質問状を送り即認められた話で、質問状やその回答も見せてもらいました。指摘により被保険者に不利にならない適正な事務処理がなされるようになれば良いなと思います。

2以上事業場勤務については詳しくは書けませんが再審査請求をするかどうか検討中とのことです。昨今分割・合併を企業は盛んに行いますから以前より2以上事業所勤務は格段に増えました。そもそも昔は2以上事業場の扱い自体をきちんと行っていくことができていなかったために適正な標準報酬という面で問題が内在していたわけです。

ここを指摘できるのは社労士だけですし社労士の責任でもあります。ひとつの手続きにこだわることの大切さを忘れず仕事をして行きたいものです。

♪今日は東京会の講演旅行のため今ロマンスカーの中から携帯で投稿します。上手くいきますかどうか。




標準報酬月額、被保険者への通知

2011-09-25 23:12:36 | 社会保険
 今週は顧問先2社から同じご質問がありました。標準報酬月額が変わったときには社員に連絡しなければならないのでしょうかというものです。
 これまで保険料を給与から控除した時には被保険者に通知しなければならない(厚生年金保険法第84条3項)ということについては常に念頭にあったのですが、ご質問いただいた際に「標準報酬月額の改定や標準賞与額」の通知については不覚にも頭に思い浮かびませんでした。
 しかしOURSに送られてくる社会保険料の納入告知書と一緒に同封されてくる「日本年金機構からのお知らせ」にも「従業員への標準報酬月額の通知はお済ですか?」という記載があり、「被保険者に標準報酬月額が確認できるようにお知らせをお願いします」とありました。ということは厚生年金保険法にもその規定があるはずと思い調べたところありました(以下第29条2項です)。この条文は遡って確認してみたところ旧法にもちゃんとありました。
 
第29条 厚生労働大臣は、第8条第1項、第10条第1項若しくは第11条の規定による認可、第18条第1項の規定による確認又は標準報酬の決定若しくは改定(第78条の6第1項及び第2項並びに第78条の14第2項及び第3項の規定による標準報酬の改定又は決定を除く。)を行つたときは、その旨を当該事業主に通知しなければならない。
2 事業主は、前項の通知があつたときは、すみやかに、これを被保険者又は被保険者であつた者に通知しなければならない。
 
 平成18年に消えた年金問題とその後の標準報酬の改ざん問題等に関する年金記録問題が起きて、その後「ねんきん定期便」が被保険者にも送られてくるようになったわけですが、その内容を確認できるよう被保険者への通知を定めた第29条2項が非常に重要になったのだと思います。確かにねんきん定期便をもらっても、手元の資料が控除された保険料額だけではその内容を確認するのは一般的には至難の業ということになります。 
 どのくらいの企業が、この標準報酬月額等についての被保険者への通知を行っているかは不明ですが、できれば給与明細の保険料の欄にいっしょに記載されるようなシステム(給与計算システム)にするとよいのではないかと思います。そういうシステムにしないと、個別に連絡していくことは規模によってはなかなか難しいのではないかと思うからです。日本年金機構から送られてくる標準報酬月額の改定通知書は個人別にはなっていません(被保険者全員の標準報酬月額が列挙されているA4版です)。会社が何か作る必要があるわけです。雇用保険の資格取得時のように、被保険者通知用ということで切り取り配布できるようになっていれば企業でシステムを作る必要もないのですが。ほかの国がどうなのかは不明ですが、日本の企業はいろいろやることが多くて大変だと思います。
 ちょっと興味がわいて調べたのですが、平成19年の社労士試験にもこの条文に絡めた問題が出題されていました。その点からも年金問題が起こった平成19年から注目度が高まったということがわかります。ちなみに「新標準テキスト」を確認してみたところ18年版までは記載がなかった第29条が、年金問題勃発翌年の平成19年版ではちゃんと加筆されていました(そして平成19年の本試験で出題されていたわけですからまさに「ズバリ的中」ということになります)。社労士試験というのはそのようにその時々の旬のテーマを出してきますから、そこを予想していかにテキストに載せていくかというところが非常に大きなポイントだと思います(そういう意味で優れたテキストだと思って慣れ親しんできた「新標準テキスト」が、今年からなくなってしまうのはとても残念だと思っています。)

厚生年金保険料の返還請求

2011-09-11 22:07:23 | 社会保険

 先日顧問先企業から受けたご質問の中で厚生年金の保険料についてなるほどと思ったケースがありました。同月得喪があったときの場合ですからそれほど頻繁に起こるケースではないとは思いますが知っていれば損はしないことと思います。

 入社して数日で辞めてしまったという人がいる場合でも同月得喪ということで健康保険と厚生年金の被保険者期間は1箇月ということになります。社会保険は月単位の考え方をしますのでその場合1箇月の保険料を会社は被保険者から徴収し会社負担分と併せて翌月末の納期限前に会社が納付します。例えば9月1日に入社して10日に辞めてしまった場合でも1箇月の被保険者期間になるわけです。

 その被保険者であった人がその月内に再就職をして厚生年金の被保険者になった場合、その月に再度再就職先の厚生年金の被保険者になります。例えば9月21日に資格取得すれば再就職先の被保険者に9月になることになります。

 その場合9月1日から10日まで被保険者として在籍した同月得喪の期間の9月分の保険料と再就職先の被保険者としての9月分の保険料、9月分の保険料を2重に被保険者は負担することになります。また会社も保険料の納付について情報交換をするわけではないですから、会社負担分の保険料も2重に納付されることになるわけです。

 厚生年金保険法の第19条には次の規定があります。「被保険者期間を計算する場合には、月によるものとし、被保険者の資格を取得した月からその資格を喪失した月の前月までこれを算入する。また被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したときは、その月を1箇月として被保険者期間に算入するが、その月にさらに被保険者の資格を取得した時は後の資格取得についての期間のみをとって1箇月の被保険者期間として算入する。

 この規定からすれば、上記のケースにおける9月の被保険者期間は再就職先の被保険者期間1箇月ということになります。 その場合は9月1日から10日までの同月得喪分については還付されなければなりません。これは被保険者負担分も会社負担分もということになりますが、厚生年金保険料の返還の請求は会社が行うことになります。請求書は日本年金機構のHPにはないようなので、年金事務所に行って確認していただきたいと思います。なおこれは厚生年金保険の扱いであり健康保険ではこの扱いはしていません。

 この請求の件についてはもっと広く周知をした方がよいように思いました。今のところ被保険者本人の連絡に頼るしかない状況のようですので。同月得喪で辞めた被保険者がその月に再就職したかどうかを会社が知ることは少ないように思います。しかし被保険者が本人の保険料の返還について退職した会社に連絡しづらいともあるかと思います。従って請求するケースは少ないように思います。オンラインで管理しているのですから、本来であれば保険者である日本年金機構から返還の連絡があってもよさそうに思うのですが。

昨日は社会保険労務士会の野球大会の2日目でした。我が渋谷支部は初日2試合で勝利を収めたので2日目もこの調子で昨年に引き続き優勝を狙ったのですが残念ながら3位になりました。しかし4試合すべて観戦してとても楽しかったです。心を一つにして楽しみながら頑張ったということはとても爽快なことでした。また今日は千葉のアンデルセン公園でBBクラブの有志でのBBQをしました。いつまで付き合ってくれるかわかりませんが、毎年会員の子供たちの成長が楽しみです。かなり日焼けしてしまいましたが健康的な週末でした。

 


2以上の事業所に使用される場合(Q&A 7.18追記)

2011-07-18 16:22:49 | 社会保険

 昨日のテーマである2以上の事業所に使用される場合について、少し追記したいと思います。

細かい話ですが従来の2以上勤務の取り扱いは、それぞれの会社の報酬月額を合算して1つの報酬月額を出してから標準報酬月額を決定する(届出時点での書式もそのような書き方です)、というものでした。等級表にあてはめるのは報酬(月額)を合算したあとだと考えていました。

しかし2以上の事業所に勤務する場合の随時改定のポイントは、「各事業所について随時改定の要件に該当するかどうか判断する」ということです。2等級の差を見るのであれば等級表にあてはめざるを得ず、報酬月額と標準報酬月額が混同されているように感じましたので厚生労働省に確認してみたところ、昨日も書きましたがこれまで各都道府県でバラバラの対応であったものを今回統一することになったとのこと。それぞれの事業所で固定的賃金の変動時に報酬月額を等級表にあてはめるというのは違和感があり「ねじれ」のような感じになるが、虚心に条文を読んでみるとそれぞれの報酬月額を等級表にあてはめ2等級の差を見るのもおかしくはないと考えましたとの回答でした。

報酬月額とは定時決定等の処理を経たものを等級表の報酬月額の欄のランクにあてはめたもの(等級の決定はまだ)と考えれば確かにそうかもしれません。(しかしそうすると従来の通達である報酬月額を合算して1つの報酬月額を出すという2以上勤務の処理が意味不明なのです。元々条文から見ると通達がおかしいような気がしていましたのでなんとなく整合性がとれないでいます。ややマニアックになりました。)

実務上の扱いであると、それぞれの会社で例えば報酬月額を年金事務所に届け出ておき、それを合算して最終的に標準報酬月額を決定するのは年金事務所のようです。その結果昨日のブログに書いた「旧社会保険庁の平成21年度の事務処理誤り等の一覧等の結果」によると片方の会社の喪失があったにもかかわらずもう一つの会社ではまだ2以上勤務として扱われており、その連携が悪くミスがたびたび起こっていたようです。それを考えると随時改定はそれぞれの事業所で要件を見るとしておくのが一番ミスが起こらない方法であるとは思います。なんだか報酬と報酬月額と標準報酬月額の定義があいまいになるようでちょっと怖いのですが、法律条文というのはあいまいな部分がどうしてもありますね。

2以上勤務者の標準報酬月額の取り扱いについてQ&Aが出ていますので載せておきます。

https://www.shakaihokenroumushi.jp/social/user/tsutatsu/pdf/S_20110713.pdf

なでしこJAPANやりましたね。感動しました。沢選手はいわゆる「持っている」選手だと思いました。ところで本文にある報酬と報酬月額と標準報酬月額ですが、「報酬は素材、報酬月額が素材を切ったりすること、標準報酬月額は切った素材を調理して料理を完成すること」とよく講義で話していました。だいたいそういう風に考えるとうまく理解できるようです。


2以上の事業所に使用される場合

2011-07-18 00:01:42 | 社会保険

2つ以上の会社に勤務することというのはたまにはあることです。

実務の事例としては、会社の命により2つの会社の取締役を兼任するとき、出向元と出向先両方から賃金が支払われるとき、また会社を辞めようとするときにまだ有給を消化中に次の職場で働きだしてしまうケース等があります。

この場合雇用保険法は明快で「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける一の雇用関係」のみにおいて被保険者となると行政手引にあり、また運用も喪失がないと次の取得ができないなど1つの会社の雇用関係でしか取得ができないようになっています。

それに対して社会保険(健康保険・厚生年金)については、もう20年前近くになるのですが、新米社労士だった私はテキストを読んで2以上の事業所勤務届をはりきって届出しようと社会保険事務所に出向き「届出書をもらいたい」と言ったのです。そうしたところ受付にいた方はやおら一番奥のキャビネットを2人がかりでバタバタと探し始め待つこと15分くらい経過後、「どうも用紙がないのですが、出さなくてよいですよ!」…「そんなものか」と思ったものでした。(当時は行政が出さなくてもよいと言えば出さなくてもよいのだろう程度にしか私も物を考えていませんでした。)。

この同一管内の2以上の企業で働くときに届出る「2以上事業所勤務届(厚年則2条)」又は異なる管轄の年金事務所の企業に同時に使用されるとき届出る「所属選択届(厚年則1条)」は、社会保険労務士試験にはかなりよく出題されるものであり、講義の際に説明するには細かいところまでの仕組みを理解しなければ板書できませんでしたので、実務の取り扱いはちょっとびっくりという感じでした。印象深かったので未だにその光景が目に浮かぶほどです

しかし最近(特に社会保険庁から日本年金機構に変わってから)2以上の事業所は運用をきちんと行いたいという方向になってきたようです。簡単に原則的な事項をまとめておくと、厚生年金保険法の方法としては以下のようになります。

①まず管轄の年金事務所が異なる場合どちらかの年金事務所を選択する

②それぞれの事業所で受けた報酬月額を合算して報酬月額とし、標準報酬月額にあてはめる

③②の標準報酬月額で保険料を算定し、その保険料をそれぞれの報酬月額に応じて案分となる

④選択した方の年金事務所にそれぞれの事業主が事業主負担分と本人分と合わせ納める、ということになります。

7月1日に日本年金機構からの指示・依頼によると、2以上の事業所に勤務する場合の随時改定のポイントは、「各事業所について随時改定の要件に該当するかどうか判断する」ということで、

①固定的賃金の変動のあった片方の事業所の報酬月額がこれまでと比べて2等級以上の差があれば随時改定となる。

②また、どちらの事業所も固定的賃金の変動があるがそれぞれ1等級の変動であるのに合計では2等級以上の差が出るという場合は随時改定に該当しない(あくまで各事業所で2等級以上かどうかを見る)ということです。

これはこれまで取り扱いが各都道府県でバラバラであり、また事業所を退職していたにもかかわらず引き続き2以上事業所勤務として扱ってミスになったなどを調べた結果(旧社会保険庁の平成21年度の事務処理誤り等の一覧等の結果)により「業務改善工程表」を作り統一の扱いをするようになったようです。やはり日本年金機構に組織が変わってから大分業務がきちんと行おうとしてはいるですね。

確かに2以上勤務届を出さず片方の会社だけの報酬で標準報酬月額を算定すると、その時の保険料は安くてお得な感じがするのでしょうけれど、将来の年金額がその分少なくなるので、きちんと2つ以上の勤務があるときは合算した標準報酬月額にしなければいけないのです。考えてみるとこれは出向など会社の命による場合などは特にゆゆしき問題と言えます。20年前はそこまで頭が回りませんでした~。それにしても年金制度に事務処理がまだまだ追いついていないような感じがします。これから2以上の勤務届についてはいろいろとご質問や問題点が出てきそうな気がします。(上記通知は詳しいものが出ましたらブログにアップするか人研のhpで確認できるようにします) 


退職後の国民健康保険料

2010-04-11 23:17:41 | 社会保険

社労士の仕事内容は多岐にわたります。OURSの通常の業務は人事労務管理の相談やご質問に対応するコンサルティング業務と労働保険・社会保険の手続きを行うアウトソース業務です。一応部門を分けていますがアウトソース業務でもただ手続きを行うだけではなく、顧問先から日々たくさんのご質問や相談を受けています。

よくあるご質問に、退職後医療保険はサラリーマン時代から引き続く健康保険の任意継続と地域の健康保険制度である国民健康保険のどちらの方が良いのかというものがあります。

4月1日施行の改正で、国民健康保険の保険料は雇用保険法の特定受給資格者と特定理由離職者(倒産等や正当な理由による自己都合による退職)に該当する場合は、算定基礎額である前年の給与所得を30%で算定して保険料を決定することになりました。

健康保険と国民健康保険は以前は治療などを受けた際の自己負担額が異なっており(健康保険1割に対して国民健康保険が3割等)、健康保険が有利でした。しかし2002年の医療制度改革で健康保険と国民健康保険ともに同じ3割の負担になりました。

従って今は保険料負担だけが異なるということで、退職後2年間任意継続被保険者となり健康保険に入り続けたときの保険料と国民健康保険の保険料のどちらが低額かを比較して加入制度を決める場合が多いのです。

これまで退職直前の給与が高い場合は、保険集団の標準報酬月額の平均額 を保険料の算定基礎の上限とする健康保険の任意継続被保険者のほうが(会社負担分も負担するとしても)前年の給与所得をそのまま算定基礎とする国民健康保険に加入するよりは保険料が低くなるというのが一般的な考え方でしたが、今後は国民健康保険のほうが低くなることが多くなりそうです。やむを得ず退職した場合は、ケースによって慎重にアドバイスすることが必要になりました。

このような細かいしかも制度横断的な法改正について的確にこたえることができるのは社会保険労務士しかいません。社会保険労務士業務をしているとアウトソースだけではなくコンサルティングでも社労士しかできない仕事というものがあるのだと痛感することがあります。これらのベースは社労士試験で勉強したことばかりです。確かに社労士試験では書類の書き方や添付書類などは出題も少なく勉強もしません。開業するとその点に戸惑うこともありますが、勉強したことは決して無駄にはなりません。書類の書き方などよりもずっと大切なそれらの根底にある法律を身につけることが複雑に絡み合う各法律の適用に関するアドバイスのもとになるからです。これは体系的に各法律を勉強した社労士でなければ無理なことです。実務経験だけで対応できるような生易しいものではありません。試験の範囲が広いことも勉強しているときは大変ですが、それだけ業務範囲が広いということです。

先日電車の中で社労士の資格をお父さんが持って定年後も再就職をしたという話を聞いて友人の方が「社労士なんてすごいね~」というのを耳をダンボにして聞きました。特定社労士もこれからどんどん増えて、勉強をしっかりしていけば社会保険労務士は今よりもっと価値のある資格になると思います。活躍の場は思っている以上に多いと思います。これからが楽しみです。


出産育児一時金の直接払制度

2010-01-17 23:09:54 | 社会保険
平成21年10月からスタートした出産育児一時金の直接払制度については、出産費用が結構大きな出費であるため良い制度だと思います。ただ、厚生労働省から出ている説明等の量が多く、また直接払制度に対応できない医療機関の話が前面に出すぎていて、理解するのになかなか手強く感じましたので、簡略にまとめてみようと思います。

1・額について
被保険者(または被扶養者)が出産した場合は、42万円の(家族)出産育児一時金が支給されます。
平成21年10月1日以降4万円引き上げになり38万円⇒42万円になりました。
産科医療補償制度に加入していない医療機関の場合は35万円⇒39万円です。

2・支給方法について
従来の方法の出産育児一時金を出産後被保険者がまず医療機関に支払った後、保険者に請求するというのではなく、保険者と医療機関の直接やり取りにより差額のみ調整(保険者が残った額を被保険者に支給または不足額を被保険者が医療機関に支払う)するという仕組みになりました。

出産育児一時金が医療機関に直接支払われることを希望しない場合は従来の方法をとることも可能です。

3・直接払いの場合の被保険者の医療機関への手続きについて
①被保険者証の提示
②申請・受取に係る代理契約(合意文書ともいうようです)の締結
③帝王切開等の手術や入院の場合は高額療養の場合は限度額認定証を医療機関に提示

直接払制度を利用したくない被保険者の場合も利用しないことを明確にする②の合意文書を医療機関と交わすことになります。

4・直接払いに対応していない医療機関の場合について
対応していない旨のお知らせが窓口に掲示してあります。
医療機関から直接払いに対応していない旨の説明を受け合意文書を交わします。
これまで出産育児一時金の請求方法と同様の取り扱いになります。

直接払制度を利用した場合は、請求がいらないだけではなく出産証明等が不要になるなど簡便な手続きで済みます。平成21年10月1日から平成23年3月31日までの暫定措置とされ、その後のことについては検討ということになっていますが、ぜひその後も継続して欲しいものです。

それにしても寒いですね~。風邪ひかないように。

短時間正社員への社会保険の適用について

2009-11-22 23:10:39 | 社会保険
 最近OURSの顧問先企業でも、改正育児・介護休業法の対応のため就業規則案を作成したのでチェックをしてほしいという依頼が少し来ています。まだ政省令や指針が確定していないので、本格的に就業規則や育休規程を直すのは来年の早春になるかもしれません。OURSでは育休規程の改正チェックリストやセミナーの準備中です。
 
 育児・介護休業法の来年6月(未定)改正予定部分の目玉の一つに、所定労働時間の短縮の措置等の義務化があります。3歳未満の子を養育する労働者が請求した場合に対応して、いわゆる「短時間勤務制度」を導入することが義務付けられるわけです。この短時間勤務制度は6時間以内とされています。要するに1日6時間勤務でも、1日5時間勤務でも、また複数のパターンを設けてもよいわけです。ところが6時間であれば5日働いて1週間30時間になり問題はないのですが、5時間の場合5日働いても1週間25時間です。ということになると1週間40時間が所定労働時間である企業では、社会保険の適用要件のおおむね4分の3以上の労働時間を切ってしまうということになります。
 
 短時間勤務の場合の社会保険の適用については、OURSでは先週2件このご質問がありましたので、今年の6月に通達が出ているので参考までにご紹介しておきます。改正育児・介護休業法においても使える通達だと思います。

 「短時間正社員への健康保険の適用の留意事項」として、短時間正社員制度を導入した場合に、以下3つの条件を満たしたときには健康保険を適用してよいとするものです。(H21.6.30 保保発第0630001号)

①労働契約、就業規則及び給与規程等に、短時間正社員に係る規定がある
②期間の定めのない労働契約が締結されている
③給与規程等における、時間当たりの基本給及び賞与・退職金の算定方法等が同一 事業所に雇用されるフルタイムの正規型労働者と同等であり、かつ、就労実態も 当該諸規程に則したものになっている

 上記のように、短時間勤務の規定があり、期間の定めがない契約で、賃金が正社員の計算方法と同じ(正社員が月給制で、短時間勤務になると時給などはダメということですね)で就労実態も時間が短いというだけで特に変わらないということであれば、通常の労働者の4分の3未満となっても健康保険の適用を続けられるということです(不覚にも厚生年金保険について調べるのを失念しましたが基本的に同じであるということで問題ないでしょう)。

 ところで、社労士試験の発表からだいぶ時間が経過して、残念だった何人もの方から先週あたりご連絡をいただきました。ギリギリであればある程ショックは大きかったと思いますし、まだ立ち上がれないという方もいると思います。でも、連絡があったということはもう大丈夫ですね。ある程度気持ちが整理できたから連絡をもらったのだと思っています。あとはお正月のニューイヤー駅伝と箱根駅伝でも見て気持ちを盛り上げて行きましょう。まだ気持ちの整理がつかない方もまだまだ時間はありますから大丈夫。やる気になる日は必ず来る。頑張れ~!

再度 一時帰休の社会保険の取扱いについて

2009-11-02 21:13:44 | 社会保険
2009.06.22(No.20)
企業のインフルエンザ対応も一段落し、中小企業緊急雇用安定助成金の支給申請もある程度落ち着き、改正雇用保険法の特定理由離職者の適用はまだまだ派遣元においては混乱があるもののある程度の整理はできたなど、この春の案件が一段落したところで、事務所は労働保険の年度更新と社会保険の定時決定の作業が大詰めに入ってきた時期です。
最近、厚生労働省の分割の話が出ていましたが、理由はあまりにも取り扱う範囲が多岐にわたっているからとのことだそうで、どこかで見たのは舛添厚生労働大臣の出番が多すぎるためそのような話が持ち上がった(やきもち?というようなことが書かれていました)とのことです。これは我々社会保険労務士の仕事についても同じことが言えます。同じ事務所でも、コンサル部門は賃金減額の相談や労働協約についての相談についての報告書を作り、アウトソーシング部門は年度更新の電子申請に取り組み中であり、さらに給与計算をしているスタッフもいるという感じで、頭をくるくる回転させて対応していかなければならない感じです。
NO17で、一時帰休が行われた場合の月変(随時改定)について書いてありますが、定時決定の時期になりましたので再度ポイントのみ確認させて下さい。
一時帰休で支払われた休業手当は、労基法上賃金に扱われます。従って雇用保険法の離職票を作成する際には、賃金として記載します。但し、備考欄に休業手当である旨記載して労働者に不利がないよう計算されることになります。
社会保険も同様に休業手当は報酬の扱いとなりますが、定時決定の際のポイントは以下の通りです。
①定時決定の対象月に支払われた休業手当は、これを含め計算すること。
②ただし、9月までに既に解消している場合(ということは4月から8月まで     のどこかで通常の賃金が支払われているということになるので)は、そ     の月(複数もありうる)を基礎に(9月以降に支払われる報酬として)算     定をし直すこと。
③9月以降に一時帰休が解消したら、通常の賃金が支払われる状態に戻ることにより 固定的賃金の変動とし、その月から3ヵ月連続報酬支払基礎日数が17日以上あり、 2等級以上変動となった場合には、月変(随時改定)を行うこと。
 なお、病気による休職中に支払われる休職給とは扱いが異なることに注意してく ださい。4~6月の3ヵ月間全て休職中であれば、定時決定により傷病手当金に影響 のないよう、従前の標準報酬に保険者算定されることという通達があります。

一時帰休の注意点

2009-11-02 21:11:20 | 社会保険
2009.03.11(No.17)
この冬は本当に企業にとっては厳しい状況になりましたが、何とか春になればまたよい流れになるのを信じて、頑張って頂きたいと思っています。一時帰休(一時休業)を実施している事業場がふえていると思いますが、一時帰休を実施した場合の社会保険料の元になる標準報酬の取り扱いについては、知識を持っておかれる方が良いと思いますので、今回は一時帰休を実施した場合の標準報酬の取り扱いについて書いてみます。

まず、一時帰休を行うことにより、労働基準法に規定されている「使用者の責めに帰すべき事由」による休業として、平均賃金の60%以上の休業手当の支払いが行われます。休業手当が60%だとした場合、「一時帰休に伴いそれまでの報酬より低額の休業手当の支払いが行われた場合」にあたり、通達によれば、健康保険・厚生年金保険の標準報酬の月変(随時改定)の要件である固定的賃金の変動に該当することになります。

但し、その低額な休業手当は、3ヵ月間を超え連続して支払われている必要があるとされています。従って2ヵ月低額の休業手当を支給して1ヵ月は通常の賃金を支払い、またその翌月は低額の休業手当の支給という方法では、月変には該当しないということになります。すみやかに一時帰休により減少した賃金に見合った保険料にするためには、休業手当は3ヵ月を超え連続支払う形にする(一時帰休を行う方法をそのように考える)方が良いということになります。

しかし、ここで月変に該当した場合、同じ通達にある一時帰休が解消したら再度月変をして3ヵ月後には標準報酬を見直さなければならない、ということも考慮されるべきだと思います。要するに1月~3月まで一時帰休に伴う低額の休業手当の支払いがあり、月変により4月に標準報酬を改訂した場合で、5月にその状態が完全に解消すれば5月~7月を基礎として8月の標準報酬から再度月変により改定され、9月から改定される算定(定時決定)の対象から除かれることになります。この標準報酬は原則として来年8月までこのままということになります。

従って、一時帰休に伴う低額の休業手当が連続して支払われた4ヵ月目から、一時帰休が解消した月から4ヵ月目までの期間において、標準報酬(保険料)が下がることになるわけです。


協会健保の保険料率

2009-11-02 21:06:46 | 社会保険
2008.09.28(No.11)
 夜になると秋が来たな~と実感するこの頃です。仕事を終えて家に戻る道を、虫の音を聞きながら歩いていると、なんだかちょっと寂しい気がしてしまいます。この夏は顧問先企業の懸案事項を、労働基準法や判例、通達を念頭に置きながら、どのように解決するか毎日考えていました。そのほとんどが、時間管理に関する問題で名ばかり管理職の問題とも絡み、難しいものが多いと感じます。労働時間で賃金を決定することは、限界に来ているのではないでしょうか?
 ところで10月1日から政府管掌健康保険は全国健康保険協会(協会けんぽ)の管掌に衣替えします。医療機関で受診した場合の自己負担の割合や傷病手当金などの現金給付の金額や要件などは、これまでと変更はありません。ただ保険料についてはまだあまり話題になっていませんが、今後かなり論議を呼びそうです。保険料率は当初は政府管掌健康保険と同じ1,000分の82のままですが、1年以内に各都道府県ごとの医療費に応じた保険料率が決まり、保険料の額が異なってくるのです。年齢構成の高い県ほど医療費が高いため保険料率が高くなり、所得水準の低い県ほど同じ医療費でも保険料率が高くなることから、調整されるとのことです。それにしても、施行日を目前にまだ施行規則が出ていないので詳細が不明な部分が多いです。後期高齢者医療制度も周知不足で大混乱でしたが、制度の変更を、もっと十分に周知ができるスケジュールで進められないものかと思います。

後期高齢者医療制度について

2009-11-02 21:04:33 | 社会保険
2008.5.19 (No.09 )
後期高齢者医療制度が混迷を極めていますね。昨日講義でこの制度を規定している高齢者医療確保法の目的条文を読みましたが、この制度が医療制度の問題点の解決を目指していることが良く分かります。
この法律は大きく2つの目的を持っていて、1つは前期高齢者が加入する保険制度間で生じている格差を修正するための納付金制度の新設です。現役を引退後加入する国民健康保険は、現役世代が加入する健康保険よりも給付がかさむのに保険料収入は少ないという状況です。そのやむを得ない格差を補うわけです。
2つ目が、増え続ける高齢者の医療費について、高齢者にも負担をしてもらい、同時に医療費を抑制しようということです。従来の老人保健制度では、かなりの部分で現役世代が負担する老人保健医療費拠出金でまかなってきました。この拠出金は非常に負担が重く、負担割合も分かりにくく、10年程前から高齢者のための独立した制度が検討されてきました。ちなみに後期高齢者医療制度の負担割合は公費5:現役世代拠出金4:高齢者保険料1です。現役世代の負担はやはり重いのです。
それにしても国会で十分に審議を尽くし、また国民に納得してもらってから実施して欲しかったと思います。時間は十分あったと思いますので。