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韓国時代劇「推奴」(チュノ) 王孫”石堅”(ソッキョン)

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 「推奴」(チュノ)は第16代王「仁祖(インジョ)」(1623~1649年)の時代のドラマです。中国大陸では「明」と「後金」の争いで混沌としていて、後に「後金」が「清」になり大陸の勢力が大きく変わった時代でした。
 朝鮮王朝はもともと「明」の冊封国でしたので、親「明」反「後金」政策をとり、「清」と改称した「後金」に侵攻され、服属を余儀なくされました。
 仁祖王の息子「昭顕世子(ソヒョンセジャ)」は清の人質になって、8年後に解放されたときは西洋の書物などにふれるなどして、父仁祖に憎まれてしまい、殺されてしまいます。
 ドラマでは、「昭顕世子」を後押しした文人、軍人たちがクーデターを画策します。唯一残った昭顕世子の子供で王孫の「石堅」(ソッキョン)をめぐって、敵の追撃からの逃亡や王孫を守る戦いを繰り広げて行きます。
 
 「推奴」というのは朝鮮王朝の身分制度で最下層の奴婢(ノビ)が逃亡した際、捕まえる「奴婢捕獲」を職業とする人のことをいいます。推奴チャン・ヒョクを主人公に奴婢の世界を描き、「昭顕世子」失脚の粛清で奴婢にされた軍の高官オ・ジホや、両班(ヤンバン)だったチャン・ヒョクを推奴にした原因である、奴婢イ・ダヘを中心にドラマは展開されていきます。
 王の側近の悪い大臣の娘は脳性麻痺です。その娘を妻にあてがわれた恨みで、義父を踏み台にしてのし上がると決めた婿イ・ジョンヒョクは、殺人鬼となって次々と「石堅王孫派」を殺していきます。
 
 KBS演技大賞で助演賞に輝いたソン・ドンイルの演技は、とても汚くて観ていられなかった。それほど凄い演技なのです。アクの強い役ばかり演じてはいるけれども、本人は結構インテリです。
 脳性麻痺の演技をしたハ・シウンには、体や顔の痙攣をよくここまでリアルに演じたと感心しています。脳性麻痺を描いたのはリアリズムの追及なのかしらなどと思いながら観ています。
 「推奴」は視聴率も高く、日本のファンも相当多いと思います。セリフの端々に「こんな世の中を変えたい」「身分制度のない世の中へ」「逃げた奴婢を追わない世の中へ」など身分制度を暗に批判しています。
 仁祖の時代のドラマを観たかったので、観てはいますが、私はこのドラマを一言でいうならば、「芝居性から逸脱したリアリズム重視のグロテスクなドラマ」という感じです。演出が芝居性から離れ、殺陣もストップモーション、スローモーションなどを使い、デジタルなテレビゲームのようです。殺しのシーンもリアリズムです。辛くもなります。
 
 韓国時代劇ドラマというより、暴力描写がリアルな映画や、最近のアメリカのテレビドラマに近い作品のようです。
 このドラマは好みが大きく分かれると思うのですがどうなのでしょうか。
 なぜ観ているのだと聞かれたら、オカメ顔のイ・ダヘが古典的な美しさで好演しているからです。
 そして何といっても「石堅王孫」の子役キム・ジヌちゃんがかわいくて、汚れた大人たちの中で一人天使がいるようで、キャストに選んだ人の勝ちという感じです。敵に追われて逃げるので、いつも誰かに抱かれています。その中でにっこり笑顔もあるし、いぶかしげに大人を見たり、眉をひそめたりと、何気ない演技をしているのが、十数年前の名子役のハ・スンリちゃん(ガラスの靴、青春の罠)を思い出してしまいました。
 
 
  採点2点 (10点満点)
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