村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』の装画で知られる小山佐敏氏が描いたFMfan誌のカセットギャラリーを利用して1991年ころ作ったカセット。
90分のカセットで、今回あらためて選曲した30曲も、半数以上それに基づく。
今はiTunesで、曲順など自由に入れ替えたり、ジャケを表示させて楽しむこともでき、音楽をめぐる環境は著しく便利になったと思うのだが、では中味はどうだろうか。
ダウンロード販売する音楽サイトから送られてくるメルマガには、"Clinical, Sci fi-infected rollers"であるとか、"Incredible spatial dynamics and 3D groove control"であるとかの宣伝文句が踊る。
クールな、近未来のSF調の曲がいくらでも溢れてる。
というか、ことインディーズや電子音楽の世界では、すでに多数派である。
トリップホップだかダブステップだか、よく分からないジャンルに分類されてるものの、どれをとっても似たようなもので、次から次へと出てくるアーティスト名や曲名を認知するのもひと苦労。覚えられない。
インスト曲ということもあるが、この中で最新2010年代の3や7を誰かが他の曲と取り替えて私に聞かせたとしても、私は取り換えたことを指摘できないだろう。
もともと選んでいたボウイやスライやロキシーやウルトラヴォックスは、まったく取り替えの利かない、一聴すれば確実に脳裏に刻まれる曲たちだ。
20年以上前のカセットを新たに編み直して、その後に現れた90年代以降の音楽が、テクノロジーの進歩や商品としての扱われ方の変化の他に、実質的な存在感が希薄化していることに思い至る。
1980年代、映画の『ブレードランナー』や小説の『ニューロマンサー』などと共に"サイバーパンク"という言葉がもたらされ、一種の流行現象になった。
ロボットなど日本のテクノロジーや発展する都市のイメージを舞台装置にあつらえたものも少なくなかったし、わが国からもこの流れに列せられるアニメやゲームが生まれた。
いつしか、サイバーパンクで描かれたようなガジェットがいくつも現実のものとなり、映画や小説の近未来が現実と置き換わったようにも思われるが、逆にテクノロジーの限界、人間という生きものの変わらなさ、進歩のなさもひしひしと感じる。
ニューロマンサーの主人公はサイバースペース=電脳空間に"ジャック・イン"して、巨大企業に対し諜報活動を試みたが、現実のわれわれは、せいぜいスマホやパソコンを操る程度だ。
機械を通して人間の意識が拡大するというより、前回述べたソーシャル・メディアのように人間と人間の間に機械を介在させることで、直接責任を回避しているに過ぎない場合が多い。
どんなに巨大なコンピューターでも感情や欲望を持つことはありえないし、人造人間が反乱を起こすこともない。
『未来世紀ブラジル』ほど悪夢的な管理社会にはならなかったが、SF小説の新しい題材=これから先の未来がいくらでも思い描ける、夢のある時代にもならなかった–
iTunes Playlist "HARDWIRED" 143 minutes
1) Slow Motion / Ultravox (1978 - Systems of Romance)
2) Helen of Troy / John Cale (1975 - The Island Years)
3) Truth Flood / Kuedo (2011 - Severant)
4) The Walk / Eurythmics (1983 - Sweet Dreams Are Made of This)
5) Television Rules the Nation/Crescendolls / Daft Punk (2007 - Alive 2007)
6) Modern / Peter Hammill (1973 - The Silent Corner and the Empty Stage)
7) Mega Church / Ikonika (2013 - Aerotropolis)
8) This Town Ain't Big for the Both of Us / Sparks (1974 - Kimono My House)
9) Samurai / Juno Reactor (1996 - EP)
10) White Shadow / Peter Gabriel (1978 - Peter Gabriel 2: Scratch)
11) Monster in the House / Finitribe (1989 - Grossing 10K)
12) Dr. Mabuse / Propaganda (1984 - A Secret Wish)
13) Theme for Great Cities / Simple Minds (1981 - Sons and Fascination/Sister Feelings Call)
14) Our Curious Leader / Luxuria (1990 - Beast Box)
15) 1984 / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)
16) Utopia / Jackson and His Computer Band (2005 - Smash)
17) Love Theme / Vangelis (1994 - Blade Runner Soundtrack)
18) Spaced Cowboy / Sly & the Family Stone (1971 - There's a Riot Goin' On)
19) Kingdom Come / Tom Verlaine (1979 - Tom Verlaine)
20) Olde Wobbly / Mordant Music (2009 - Picking O'er the Bones)
21) Maximum Acceleration / Ultravox (1978 - Systems of Romance)
22) Diamond Avenue / Dave Stewart & the Spiritual Cowboys (1990 - Dave Stewart and the Spiritual Cowboys)
23) The Thin Air / Magazine (1979 - Secondhand Daylight)
24) Alice Practice / Crystal Castles (2008 - Crystal Castles)
25) Karma Police / Radiohead (1997 - OK Computer)
26) She Sells / Roxy Music (1975 - Siren)
27) Could It Happen to Me? / Roxy Music (1975 - Siren)
28) Break a Mirrored Leg / Quirke (2014 - Acid Beth)
29) Cities / Talking Heads (1979 - Fear of Music)
30) Big Brother/Chant of the Ever Circling Skeletal Family / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)
90分のカセットで、今回あらためて選曲した30曲も、半数以上それに基づく。
今はiTunesで、曲順など自由に入れ替えたり、ジャケを表示させて楽しむこともでき、音楽をめぐる環境は著しく便利になったと思うのだが、では中味はどうだろうか。
ダウンロード販売する音楽サイトから送られてくるメルマガには、"Clinical, Sci fi-infected rollers"であるとか、"Incredible spatial dynamics and 3D groove control"であるとかの宣伝文句が踊る。
クールな、近未来のSF調の曲がいくらでも溢れてる。
というか、ことインディーズや電子音楽の世界では、すでに多数派である。
トリップホップだかダブステップだか、よく分からないジャンルに分類されてるものの、どれをとっても似たようなもので、次から次へと出てくるアーティスト名や曲名を認知するのもひと苦労。覚えられない。
インスト曲ということもあるが、この中で最新2010年代の3や7を誰かが他の曲と取り替えて私に聞かせたとしても、私は取り換えたことを指摘できないだろう。
もともと選んでいたボウイやスライやロキシーやウルトラヴォックスは、まったく取り替えの利かない、一聴すれば確実に脳裏に刻まれる曲たちだ。
20年以上前のカセットを新たに編み直して、その後に現れた90年代以降の音楽が、テクノロジーの進歩や商品としての扱われ方の変化の他に、実質的な存在感が希薄化していることに思い至る。
1980年代、映画の『ブレードランナー』や小説の『ニューロマンサー』などと共に"サイバーパンク"という言葉がもたらされ、一種の流行現象になった。
ロボットなど日本のテクノロジーや発展する都市のイメージを舞台装置にあつらえたものも少なくなかったし、わが国からもこの流れに列せられるアニメやゲームが生まれた。
いつしか、サイバーパンクで描かれたようなガジェットがいくつも現実のものとなり、映画や小説の近未来が現実と置き換わったようにも思われるが、逆にテクノロジーの限界、人間という生きものの変わらなさ、進歩のなさもひしひしと感じる。
ニューロマンサーの主人公はサイバースペース=電脳空間に"ジャック・イン"して、巨大企業に対し諜報活動を試みたが、現実のわれわれは、せいぜいスマホやパソコンを操る程度だ。
機械を通して人間の意識が拡大するというより、前回述べたソーシャル・メディアのように人間と人間の間に機械を介在させることで、直接責任を回避しているに過ぎない場合が多い。
どんなに巨大なコンピューターでも感情や欲望を持つことはありえないし、人造人間が反乱を起こすこともない。
『未来世紀ブラジル』ほど悪夢的な管理社会にはならなかったが、SF小説の新しい題材=これから先の未来がいくらでも思い描ける、夢のある時代にもならなかった–
iTunes Playlist "HARDWIRED" 143 minutes
1) Slow Motion / Ultravox (1978 - Systems of Romance)
2) Helen of Troy / John Cale (1975 - The Island Years)
3) Truth Flood / Kuedo (2011 - Severant)
4) The Walk / Eurythmics (1983 - Sweet Dreams Are Made of This)
5) Television Rules the Nation/Crescendolls / Daft Punk (2007 - Alive 2007)
6) Modern / Peter Hammill (1973 - The Silent Corner and the Empty Stage)
7) Mega Church / Ikonika (2013 - Aerotropolis)
8) This Town Ain't Big for the Both of Us / Sparks (1974 - Kimono My House)
9) Samurai / Juno Reactor (1996 - EP)
10) White Shadow / Peter Gabriel (1978 - Peter Gabriel 2: Scratch)
11) Monster in the House / Finitribe (1989 - Grossing 10K)
12) Dr. Mabuse / Propaganda (1984 - A Secret Wish)
13) Theme for Great Cities / Simple Minds (1981 - Sons and Fascination/Sister Feelings Call)
14) Our Curious Leader / Luxuria (1990 - Beast Box)
15) 1984 / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)
16) Utopia / Jackson and His Computer Band (2005 - Smash)
17) Love Theme / Vangelis (1994 - Blade Runner Soundtrack)
18) Spaced Cowboy / Sly & the Family Stone (1971 - There's a Riot Goin' On)
19) Kingdom Come / Tom Verlaine (1979 - Tom Verlaine)
20) Olde Wobbly / Mordant Music (2009 - Picking O'er the Bones)
21) Maximum Acceleration / Ultravox (1978 - Systems of Romance)
22) Diamond Avenue / Dave Stewart & the Spiritual Cowboys (1990 - Dave Stewart and the Spiritual Cowboys)
23) The Thin Air / Magazine (1979 - Secondhand Daylight)
24) Alice Practice / Crystal Castles (2008 - Crystal Castles)
25) Karma Police / Radiohead (1997 - OK Computer)
26) She Sells / Roxy Music (1975 - Siren)
27) Could It Happen to Me? / Roxy Music (1975 - Siren)
28) Break a Mirrored Leg / Quirke (2014 - Acid Beth)
29) Cities / Talking Heads (1979 - Fear of Music)
30) Big Brother/Chant of the Ever Circling Skeletal Family / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)