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音楽にみるサイバーパンクの終焉

2013-07-30 21:55:05 | 音楽
村上龍『コインロッカー・ベイビーズ』の装画で知られる小山佐敏氏が描いたFMfan誌のカセットギャラリーを利用して1991年ころ作ったカセット。
90分のカセットで、今回あらためて選曲した30曲も、半数以上それに基づく。
今はiTunesで、曲順など自由に入れ替えたり、ジャケを表示させて楽しむこともでき、音楽をめぐる環境は著しく便利になったと思うのだが、では中味はどうだろうか。

ダウンロード販売する音楽サイトから送られてくるメルマガには、"Clinical, Sci fi-infected rollers"であるとか、"Incredible spatial dynamics and 3D groove control"であるとかの宣伝文句が踊る。
クールな、近未来のSF調の曲がいくらでも溢れてる。

というか、ことインディーズや電子音楽の世界では、すでに多数派である。
トリップホップだかダブステップだか、よく分からないジャンルに分類されてるものの、どれをとっても似たようなもので、次から次へと出てくるアーティスト名や曲名を認知するのもひと苦労。覚えられない。
インスト曲ということもあるが、この中で最新2010年代の3や7を誰かが他の曲と取り替えて私に聞かせたとしても、私は取り換えたことを指摘できないだろう。

もともと選んでいたボウイやスライやロキシーやウルトラヴォックスは、まったく取り替えの利かない、一聴すれば確実に脳裏に刻まれる曲たちだ。
20年以上前のカセットを新たに編み直して、その後に現れた90年代以降の音楽が、テクノロジーの進歩や商品としての扱われ方の変化の他に、実質的な存在感が希薄化していることに思い至る。




1980年代、映画の『ブレードランナー』や小説の『ニューロマンサー』などと共に"サイバーパンク"という言葉がもたらされ、一種の流行現象になった。
ロボットなど日本のテクノロジーや発展する都市のイメージを舞台装置にあつらえたものも少なくなかったし、わが国からもこの流れに列せられるアニメやゲームが生まれた。

いつしか、サイバーパンクで描かれたようなガジェットがいくつも現実のものとなり、映画や小説の近未来が現実と置き換わったようにも思われるが、逆にテクノロジーの限界、人間という生きものの変わらなさ、進歩のなさもひしひしと感じる。

ニューロマンサーの主人公はサイバースペース=電脳空間に"ジャック・イン"して、巨大企業に対し諜報活動を試みたが、現実のわれわれは、せいぜいスマホやパソコンを操る程度だ。
機械を通して人間の意識が拡大するというより、前回述べたソーシャル・メディアのように人間と人間の間に機械を介在させることで、直接責任を回避しているに過ぎない場合が多い。

どんなに巨大なコンピューターでも感情や欲望を持つことはありえないし、人造人間が反乱を起こすこともない。
『未来世紀ブラジル』ほど悪夢的な管理社会にはならなかったが、SF小説の新しい題材=これから先の未来がいくらでも思い描ける、夢のある時代にもならなかった–





iTunes Playlist "HARDWIRED" 143 minutes
1) Slow Motion / Ultravox (1978 - Systems of Romance)



2) Helen of Troy / John Cale (1975 - The Island Years)



3) Truth Flood / Kuedo (2011 - Severant)



4) The Walk / Eurythmics (1983 - Sweet Dreams Are Made of This)



5) Television Rules the Nation/Crescendolls / Daft Punk (2007 - Alive 2007)



6) Modern / Peter Hammill (1973 - The Silent Corner and the Empty Stage)



7) Mega Church / Ikonika (2013 - Aerotropolis)



8) This Town Ain't Big for the Both of Us / Sparks (1974 - Kimono My House)



9) Samurai / Juno Reactor (1996 - EP)



10) White Shadow / Peter Gabriel (1978 - Peter Gabriel 2: Scratch)



11) Monster in the House / Finitribe (1989 - Grossing 10K)



12) Dr. Mabuse / Propaganda (1984 - A Secret Wish)



13) Theme for Great Cities / Simple Minds (1981 - Sons and Fascination/Sister Feelings Call)



14) Our Curious Leader / Luxuria (1990 - Beast Box)



15) 1984 / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)



16) Utopia / Jackson and His Computer Band (2005 - Smash)



17) Love Theme / Vangelis (1994 - Blade Runner Soundtrack)



18) Spaced Cowboy / Sly & the Family Stone (1971 - There's a Riot Goin' On)



19) Kingdom Come / Tom Verlaine (1979 - Tom Verlaine)



20) Olde Wobbly / Mordant Music (2009 - Picking O'er the Bones)
21) Maximum Acceleration / Ultravox (1978 - Systems of Romance)



22) Diamond Avenue / Dave Stewart & the Spiritual Cowboys (1990 - Dave Stewart and the Spiritual Cowboys)



23) The Thin Air / Magazine (1979 - Secondhand Daylight)



24) Alice Practice / Crystal Castles (2008 - Crystal Castles)



25) Karma Police / Radiohead (1997 - OK Computer)



26) She Sells / Roxy Music (1975 - Siren)
27) Could It Happen to Me? / Roxy Music (1975 - Siren)



28) Break a Mirrored Leg / Quirke (2014 - Acid Beth)



29) Cities / Talking Heads (1979 - Fear of Music)
30) Big Brother/Chant of the Ever Circling Skeletal Family / David Bowie (1974 - Diamond Dogs)
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