無意識日記
宇多田光 word:i_
 



土曜日の晩にきいた「ZABADAK楽屋におけるDEEP PURPLE論争」は笑った。要はディープ・パープルが好きな人と嫌いな人が言い争いになったという話なのだが、「ミュージシャン同士が好き嫌いを論じられる」という点に於いてパープルが如何に日本で有名なのかがわかる。もし知らないバンドだったら論争にもならない。好きだの嫌いだの言える位に何度も耳に入っていなければならない。パープルは偉大なのだ。

どれ位にパープルが偉大なのかといえば、70年代の昔から泣く子も黙るレッド・ツェッペリンと共に「2大ハード・ロック・バンド」として奉られ祭り上げられてきた程なのだ。

といってもこれは日本だけの話らしく。確かに、70年代の全米年間チャートを見てみても、ツェッペリンは上位進出の常連だがパープルは全くと言っていいほど出てこない。唯一、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だけがヒットシングルとして記録されているが(「ハッシュ」も売れたぞ、とかツッコミが入りそうだ)、ぶっちゃけそれだけの一発屋である。正直、ツェッペリンとは、少なくともチャート・アクションにおいては全く勝負にならない。同じ土俵で勝負していたとすらいえない。ハードロック・バンドとしてツェッペリンに対抗できていたのはブラック・サバス(オジー・オズボーンの居たバンドだ)位なものだが、彼らはどちらかといえば「元祖ヘヴィ・メタル」だろうな。

なぜパープルがそこまで日本で人気だったのか。単純に、音楽が日本人向けだったのだ。同時代にエマーソン・レイク&パーマーが後楽園球場でコンサートを行った事からもわかるように、日本ではキーボードをフィーチャしたクラシカルなメロディーを織り込んだロックが大人気だったのである。この傾向は90年代まで続き、イングヴェイ・マルムスティーンなどはオリコンの"総合"チャートで週間1位をとり武道館で来日公演を行った。そういうのが好きな国民性だったのだ。

しかし、裏を返せば、日本では欧米で「ロックらしいロック」として人気のあるバンドの人気が低い。ツェッペリンとパープルが「2大ハードロックバンド」と呼ばれたのは、今さっき書いた通り日本でのパープルの人気が図抜けてたのもあるが、レッド・ツェッペリンが海外ほど人気ではなかった、という理由もあったのだ。即ち(海外からみれば)ツェッペリンの過小評価とパープルの過大評価が合わさって「2大」という形容が形成可能だった訳だ。


ツェッペリンの他にもザ・フー、先述のブラック・サバス、カナダのラッシュ、イギリスのモーターヘッドやアイアン・メイデンなど、海外では20万も30万も集めるフェスのオオトリを務めるバンドが日本では武道館すらままならない。ザ・フーなんてエアロスミスと抱き合わせで漸く来日できた、という位に人気がない。

なぜここまで格差が出来たのか。理由は結構単純だ。日本人はベースに興味がないのだ。ディープパープルはキーボードとギターに比重を置きすぎる余り、アレンジ面ではベースが殆ど存在感を示していない。ロジャー・グローヴァー(パープルのベーシストね)の技量が高いか低いか、かなり熱心なロックでもわからない。それ位何もさせてもらえないのである。

一方、日本で人気のないロックバンドたちには凄腕のベーシストが居並ぶ。ザ・フーのジョン・エントウィッスル、ツェッペリンのジョン・ボール・ジョーンズ、ブラックサバスのギーザー・バトラー、ラッシュのゲディ・リー、モーターヘッドのレミー・キルミスター、アイアン・メイデンのスティーヴ・ハリスなど、そのサウンドだけで圧倒する伝説級のプレイヤーが目白押し。

しかし、日本人は彼らに興味がないんだな。ではなぜそんな事に…という話からまた次回。ちゃんと続く予定よ。

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TBS日曜劇場「ごめん愛してる」の中盤で『Forevermore』のアコースティック・ギター・インストゥルメンタル・バージョンと思しき音源が流れた。オリジナルを聴き慣れているのもあるが、やはりドラマチックなメロディーラインだなと再認識。テレビドラマのバックグラウンドミュージックにうってつけなのは、リズムや歌を抜いても変わらない。

売上も好調で、iTunesStoreではドラマの放送がある度に3位付近に返り咲いている。逆にいえばまだまだ認知度を上げる事は可能で、開拓すべき余地が市場に残っているという事だろう。即ち、ここからドラマの視聴率が上がっていけばもう一伸びが期待できると。頑張れ日曜劇場。…と言っても、ググればここからの展開がわかってしまうリメイク・ドラマ。注目されても余計なネタバレが増えるだけかもしれず、居心地がいいかは微妙な所。このまま中空飛行を続けてくれた方が好都合ではあるかもしれない。


ヒカルの新しいツイートはコードの書き方について、だった。B♭mにB13を汚く書くと読みづらい、という話。このコード、直接には今までのヒカルの曲にあまり出てこなかったかもしれない。ちゃんと参照した訳ではないけれど。もしかしたら、また誰かと共演しているのかも。

ここ20年余りヒップホップカルチャーがアメリカンポップス(っていう言い方は皮肉にしかならないが)の中心を占めるようになってコラボレーション、つまりクレジットの上ではフィーチャリングがどどんと増えた。更に2010年代に入って"DJの世代"に入ると、彼らが歌う訳でもないのでフィーチャリングの人数がどんどん増えていき、最近では一体何人名前を連ねるの、結局一体この曲は誰の曲なの、という事態が増えてきた。

これは、アメリカの音楽市場のメインストリームがストリーミングに移りつつある事と因果関係があるのだろうか。クレジットが長くなればなるほど、プレイリストを侵食できる機会が増えるとするならば、今後2〜3年はこの傾向が続くのかな。海の向こうの事情は知らない。いやこっち側の事情も知りませんが。そのうち長大クレジットに対する対処もストリーミングサービスの中で出されていくかもしれない。そっちが先、かな。

海のこちら側である我々はそんな事を気にする必要はない。ヒカルの場合自分がネタ切れになってアルバム用に10曲以上揃えられなくなってきたら誰かの手を借りる傾向がある。間違ってもアルバム全体がフィーチャリングで埋め尽くされる事はない。とすると、B♭mB13はたまたま珍しいコードで歌ってみただけ、なのか或いは既にネタ切れ…アルバム制作終盤戦なのか…? まだちょっと早過ぎるな。焦らず行こう。

…でも、油断は禁物だよね。『This Is The One』が前のアルバムから間隔1年弱で出たんだから。

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