高崎そだちてくてくさんぽ6 2016年08月29日 | てくてくさんぽ・取材紀行 高崎食材ブランド「高崎そだち」生産地めぐりのおまけ。森農園さんの食用ほおずき「ケープグーズベリー」を、夜の懇談会にお待ちいただいた。ドライにすると甘さが凝縮し、後味のアジアな香草感が丸くまとまり潔くなる。フルボディの赤ワイン、ウイスキーとの相性が鉄壁で、お酒の味わいをワンランク押し上げてくれる。 でも私的には、合わせる酒は芋焼酎推し。
高崎そだちてくてくさんぽ5 2016年08月29日 | てくてくさんぽ・取材紀行 高崎食材ブランド「高崎そだち」のツアー、1日目の最後はカフェ「アンジェリーナ」へ。周辺に地域ブランド「榛名クラブ」の果樹農園が点在しており、その拠点であり来訪者の休憩向けの施設でもある。榛名クラブのとりまとめ的役割も担い、クラブ員が生産する商品も扱っている。 説明にいらした里見農園もクラブ会員で、梨をはじめプラムと米など幅広く栽培。榛名クラブの加工品用の梨と柿も生産している。販売用のドライフルーツの梨は「豊水」と「榛名」で、特に榛名は高崎でのみ生産の品種。ほか群馬県開発の品種の梅「紅の舞」を用いたシロップも扱っている。名の通り真っ赤になり色がいいので、加工品向きに期待されているとか。プラムでジャムも生産予定と、今後も様々な展開が見込めそうだ。
高崎そだちてくてくさんぽ4 2016年08月29日 | てくてくさんぽ・取材紀行 高崎食材ブランド「高崎そだち」のツアー、初日最後の訪問先は、地域ブランド「榛名クラブ」の生産者「悴田梨園」にお邪魔した。こちらは明治期に創業の老舗農園で、現在は35種類の梨を栽培。一般的に出回る品種は「豊水」「幸水」「20世紀」など5種ぐらいだが、「秀水」「新高」「長十郎」といった、珍しかったり懐かしかったりする品種も栽培されている。 まずは販売所の裏手に広がる、梨畑の見学から。沿道の木には袋がけされた身が見られ、「有袋栽培」に取り組まれているのが分かる。袋は雨をしのぐほか虫除けの効果もあり、減農薬につながるメリットがある。色の違いは用途の違いを表しており、品種ごとに変わるのだそうだ。8月末の今の時期は「幸水」が終盤、9月中旬からの「豊水」の出初めにあたる。ほかにも1キロまで成長する「愛宕」は11月に旬を迎え、大振りだが大味ではなく甘みがあり、12月が食べごろなのだとか。 また梨園の木は背が低いことで知られ、梨狩りでかがんでの作業に腰を痛くしたことのある方もいるのでは。木の高さは植える際、農園主が作業しやすいようにその方の背丈に合わせるのだそうである。そのため100年前の木を見ると、日本人の背丈が今より低かったためかなり低いが、以降は身長の平均値が上がるのに合わせ、樹高も高くなってきている。農園で最も古い木は150年ほど前のもので、いまでも「赤穂」など当時の品種が収穫される。 販売所に戻ったら、様々な種類の梨を試食させていただいた。クラシックな「長十郎」は硬めでほのかな酸味があり、「赤穂」は身が締まりライト。最近の品種では「幸水」はジューシーで甘く、「豊水」はやや酸味があり、「秀水」は身の食感を残していて砂糖甘い。品種ごとの食感と甘みの違いを実感、梨を各種食べ比べる機会はそうないので、なかなか貴重な体験である。
高崎そだちてくてくさんぽ3 2016年08月29日 | てくてくさんぽ・取材紀行 高崎食材ブランド「高崎そだち」のツアー、続いては安中の「ゆあさ農園」へ。生産者である湯浅さんは、梅栽培と梅干しの加工とも、なかなかユニークな取り組みをしている。もとは電機メーカー勤務で、安全なものの生産を志し農業に転身したそう。梅はJAS有機の認証を取っており、自分の畑で栽培・収穫後に天日干し・加工まで自前で一貫して行っている。販路は「求める方に直売する」とのポリシーで、通販を中心に取引先も絞っているこだわりようだ。 ここの梅干しは「選べる梅干し」なのがウリ。サイズや品種を選べるところは他でもあるが、ここでは漬けている塩が選べるのが特徴だ。塩の産地は沖縄の石垣、北谷、対馬、大島、男鹿、さらに海外のゲランド、ウユニ塩湖、キリバスのクリスマス島、ヒマラヤ岩塩まで、実に幅広い。昔ながらの味を意識するため、塩分は15パーセントと高めで、一般の梅干しが8パーセント程度なのを考えればかなり濃そうだ。塩の種類で味の差が出るものかご主人に聞くと、生産者ながら「う〜ん?」と首をかしげるのが、何だか可笑しい。塩の味は海の数ほどあるといわれ、評価の高い「海の精」やヒマラヤ岩塩は梅との相性がいいらしい。 もう一つ、漬けた年代を標記した梅干しも、こちらの面白いところだ。今年漬けた新ものから1年もの、縁起の品である12年前の「サル年の梅干」、さらに今年から発売した20年ものの梅干しが凄い。平成8年に漬けたもので、見た目はほんのり黒ずんできているようにも見える。特別に一粒味見させてもらうと、ゼリーのような舌触りの後に襲い来る酸っぱさとしょっぱさが、相当に強烈だ。種を割ると出てくる「天神様」も、中までじっとり塩が染みているほど。梅干しは古いほどいい、としみじみ話すご主人の言う通り、これはごはんやおかゆに合いそうな、懐かしさを感じる梅干しである。 そしてご主人のユニークな取組みは、ロスを抑えることとバイオやエコへの高い意識だ。なんでも無駄にしないとのモットーから、キズものの梅は練り梅に加工、種も今年からタネ割りつきでの販売を開始した。伐採した梅の枝は、バイオマスにかけて「バイオモス(梅を燃す)」と称し、薪にして燃やして給湯や発電に用いたり、草刈機やリフトやクルマの動力にしたりしている。きっかけは福島第一原発の事故で、シイタケの原木栽培が廃業となり、それ用のハウスの屋根で太陽光発電を始めたことに由縁する。 薪は10年分ストックがあるそうなので、「バイオモス」燃料は当面安泰か?
ローカルミートでスタミナごはん…高崎 『焼肉 箕輪亭』の、増田和牛のランチ 2016年08月29日 | ◆ローカルミートでスタミナごはん 高崎ブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐりの昼ごはんで寄ったのは、箕郷町にある「焼肉 箕輪(きりん)亭」。地元で生産している銘柄肉・増田和牛を味わった。最近、高評価されている銘柄で、都心の高級飲食店からのニーズが非常に高いとか。群馬ではここともう一軒でしか味わえないらしいから、実にありがたい機会である。 群馬や高崎の地名に聞かないその名は、生産者である増田順彦氏に由来する。箕郷町で10年ほど畜産農家をやっていたが、生産物の質を上げていかないと先細りになると危惧。そこで独自の方法の肥育により、自身でブランドを作り上げた。販路もJAに依存せず、自らの足で開拓。結果、食味への評価が口コミで広がり、川越達也や道場六三郎ら、影響力のある料理人の目に留まったこともあり、現在では「幻の高級牛肉」として名だたる存在となっている。 その味の秘訣は、通常よりも長い肥育期間にある。未経産の但馬牛を素牛として、肉の旨みが出てくる36ヶ月かけて肥育。出荷前の6ヶ月には大麦を蒸した「炊き餌」を与え、白い脂が口の中で自然に溶ける、オレイン酸の多い塩梅に仕上げられる。かつての松阪牛のやり方だそうで、短時間の肥育だと同じやり方でもこの味は出ず、脂が水っぽくなってしまうとか。しかしながら長期肥育とかかる手間隙のため、月間の出荷頭数が5〜6頭がせいぜいなのが、希少となる所以だそうだ。目の届く範囲で飼いたいとの生産者の意向もあり、これ以上出荷頭数を増やす予定はないとも。 しかしながら「脂の質が違います。融点が低く口溶けが良く、口に残りません」と、店の方が手間と希少さ相応の味の良さを推してくれる。この日のおまかせセットはタン塩、サエズリ(タン下)、ホネヤマ (バラ肉の骨の間)、上内モモ、上イチボ(尻)、ザブトン(肩ロースの中の一部の希少部位)。いずれも、かめば脂甘さが身の丈で染み出し、後から赤身の旨みがじっとりくる。それでいて重さはなく、体に負荷がかからずいっぱい食べられる肉だ。赤身と脂が並立した、二重の旨さが舌に胃に嬉しいこと。裏メニューで出してもらった、脂を揚げた飯の友「あられ」がまたうまく、熱々ご飯の温度で自然に溶けて甘みがじんわり広がる。 群馬県は牛肉の消費量が全国で下位で、この素晴らしい肉の認知度も今ひとつらしい。だからなおのこと、美味しい牛肉を地元の群馬・高崎の方に味わってもらいたいとの、生産者の狙いもあるという。値段はやや張るものの、「安心、安全は時間がかかり高いものなんです」と店の方。野菜と同様に畜産品にも、高崎の生産者の心意気が込められてるのを実感した、プチ贅沢なランチタイムであった。