高崎のブランド食材「高崎そだち」の生産者めぐり、農産物の生産者を中心に回る中、最後に畜産事業者から「江原養豚」さんに伺った。銘柄豚「えばらハーブ豚 未来 」は、抗生物質や合成抗菌剤を一切投与せずに育てた、安心と安全にこだわった豚肉。と文字にするのは易しだが、その生産の実現への苦労、質に対する思いの深さに、なかなか聞き入ってしまうひと時だった。
こちらで無投薬飼育を始めた2000年は、EUが発育目的の飼料添加をやめたのより5年早く、当時の日本では例がない。そのため、まずは無投薬の定義づくりから始めねばならなかった。一般には肥育期間の180日中、3分の2は国指定の抗生物質入りの餌を与えるところ、ここでは離乳させながら餌付けを始めてから、出荷するまで一切与えない。加えてハーブや有機酸、乳酸菌、各種ビタミンの中でもEを強化して配合することで、安全かつ栄養価の高い豚肉に仕上げられているのである。これらのおかげで獣香が抑えられたり、保存性がよくなったり、アクが浮かない質になったりと、無薬プラスアルファのプレミアにも繋がっている。
徹底した無投薬飼育は、初年度の実験段階では一定の成果を得たものの、事業化には数々のハードルが立ちはだかっていた。病気感染のリスクで死亡率が高いのに加えて肉付きも悪く、ロス分のコストがかさむのに卸値は下がる悪循環。3年目には経営的な限界が迫り、ほぼやめることを決めた時期もあったそうである。それでも生き残りを賭けてこの飼育に臨み続けたところ、4年目に豚舎の菌環境が安定。豚が死ぬ数が減り太ってきたのだ。ここから経営が持ち直し、現在は無投薬豚の代表的銘柄として、えばらハーブ豚の名が知られるようになったのである。
飼育環境の安定による成果は、生産と流通に関わる指標的数字にも現れている。病気等のために投薬したため、無投薬飼育から分けた「保護豚」の割合が低下、飼育環境の微生物が安定するまで10年かかったというわけだ。食用に適さない内蔵の比率で家畜の健康度を示す「内蔵廃棄率」も向上、その成果として肥育期間がいくらか短縮され、価格も全国の豚肉の平均価格よりややプラスまでもってきた。薬を与えないことではなく健康管理を徹底し、それに効果のある飼料投与がプレミアです、と生産者。「JAS認定」「無薬」「NonGM(飼料に遺伝子組換穀物の不使用)」の安全の3本柱が揃う生産者は日本ではほかになく、「競争しなくてもよい豚肉」との言葉に自信がみなぎる。
「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」といった有機宅配大手の取り扱い、ぐるなびの「ベストオブメニュー」や料理王国の「食の逸品コンクール」の入賞など、品質への評価も高まってきている。そうした中でも「自分で考えた言葉で売ること」を大切にして、他者との比較ではなく自らの品物の特性をいかに伝えるか、を心がけているとも。先頭を走って事を成すことは厳しくリスクは大きいが、真の「ブランド」はそれを乗り越えないと標榜できないとの言葉には、経験ゆえの説得力がある。
健康で楽しく食事をしてもらい「幸福感を感じられる豚肉に」とは、生産者発流通者へ料理人へ消費者への、いずれにも共有・共感できるメッセージに感じられた。
こちらで無投薬飼育を始めた2000年は、EUが発育目的の飼料添加をやめたのより5年早く、当時の日本では例がない。そのため、まずは無投薬の定義づくりから始めねばならなかった。一般には肥育期間の180日中、3分の2は国指定の抗生物質入りの餌を与えるところ、ここでは離乳させながら餌付けを始めてから、出荷するまで一切与えない。加えてハーブや有機酸、乳酸菌、各種ビタミンの中でもEを強化して配合することで、安全かつ栄養価の高い豚肉に仕上げられているのである。これらのおかげで獣香が抑えられたり、保存性がよくなったり、アクが浮かない質になったりと、無薬プラスアルファのプレミアにも繋がっている。
徹底した無投薬飼育は、初年度の実験段階では一定の成果を得たものの、事業化には数々のハードルが立ちはだかっていた。病気感染のリスクで死亡率が高いのに加えて肉付きも悪く、ロス分のコストがかさむのに卸値は下がる悪循環。3年目には経営的な限界が迫り、ほぼやめることを決めた時期もあったそうである。それでも生き残りを賭けてこの飼育に臨み続けたところ、4年目に豚舎の菌環境が安定。豚が死ぬ数が減り太ってきたのだ。ここから経営が持ち直し、現在は無投薬豚の代表的銘柄として、えばらハーブ豚の名が知られるようになったのである。
飼育環境の安定による成果は、生産と流通に関わる指標的数字にも現れている。病気等のために投薬したため、無投薬飼育から分けた「保護豚」の割合が低下、飼育環境の微生物が安定するまで10年かかったというわけだ。食用に適さない内蔵の比率で家畜の健康度を示す「内蔵廃棄率」も向上、その成果として肥育期間がいくらか短縮され、価格も全国の豚肉の平均価格よりややプラスまでもってきた。薬を与えないことではなく健康管理を徹底し、それに効果のある飼料投与がプレミアです、と生産者。「JAS認定」「無薬」「NonGM(飼料に遺伝子組換穀物の不使用)」の安全の3本柱が揃う生産者は日本ではほかになく、「競争しなくてもよい豚肉」との言葉に自信がみなぎる。
「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」といった有機宅配大手の取り扱い、ぐるなびの「ベストオブメニュー」や料理王国の「食の逸品コンクール」の入賞など、品質への評価も高まってきている。そうした中でも「自分で考えた言葉で売ること」を大切にして、他者との比較ではなく自らの品物の特性をいかに伝えるか、を心がけているとも。先頭を走って事を成すことは厳しくリスクは大きいが、真の「ブランド」はそれを乗り越えないと標榜できないとの言葉には、経験ゆえの説得力がある。
健康で楽しく食事をしてもらい「幸福感を感じられる豚肉に」とは、生産者発流通者へ料理人へ消費者への、いずれにも共有・共感できるメッセージに感じられた。