ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

日々是好食…早まりゆく初ガツオ

2012年03月19日 | ◆日々是好食
日本のカツオ水揚げ港を、思いつくままに南から順に挙げていくと、枕崎、宮崎、土佐清水、高知、串本、御前崎、銚子、塩釜、気仙沼、宮古といった感じ。九州に2月中旬から春ごろに近づき、静岡から千葉沖を通過するのが5月の初ガツオの時期。そして三陸沖でしっかり脂がのってから、南下する戻りガツオの時期、となる。

 ところが最近、初ガツオの時期が年々早くなっていると聞く。カツオが北上を始めるフィリピン沖まで船を出してとってしまうからで、東京でも2月中「初ガツオ」が出回るのを見かける。この海域は孵化して稚魚が成長する場所でもあり、あまり若い魚をとりすぎると、サバやイワシやサンマなどのように成魚の減少に直結するのが心配だ。

 それはそれとして(笑)、今夜の晩酌の肴はまさに自身の今年初ガツオ。タタキだがコショウを効かせてあり、ちょっと洋風なテイスト。脂はほどほどだが身が瑞々しく、まさに若い魚の味わいがいい。ホタルイカ漁見学も気になるが、枕崎港の水揚げも見に行ってみたいなあ。

町で見つけたオモシロごはん…横浜・港南台 『金沢まいもん寿司』の、ホタルイカ三昧の軍艦巻き

2012年03月18日 | ◆町で見つけたオモシロごはん

 ちょうど去年の今ぐらいに、富山県の新湊の取材をしていた。豊饒な富山湾を控える北陸有数の漁港を擁し、大雪の中を早朝の新湊魚市場を訪れると、荷捌き場は様々な種類の漁獲でまさにおもちゃ箱状態となっていた。
 時期的に冬の魚が終わりごろ、春からの魚の走りぐらいで、冬の魚のノドグロにガスエビはともに、富山湾の底引き網漁の主要漁獲。陸からすぐに深い海底谷へと続く独特の環境でとれる、深海性の魚だ。また春からの魚介は、ホタルイカに白エビ。こちらもともに、深度のある富山湾でこそ水揚げされる漁獲で、富山を代表する「ローカル魚介」である。

 ホタルイカは全身に発行体があり、海中で光を発するためにその名がついた。敵に遭遇した際に驚かせるのが光る理由といわれ、底引き網の船で水揚げされる際には、網の中がボワッと輝いて見えるとか。最後の威嚇と思うと神秘的なような、ちょっと切ない輝きのような。
 近頃は水揚げ地に近い富山や金沢だけでなく、首都圏の居酒屋などでも3月になると「新もののホタルイカ入りました」との貼紙を見かける。沖漬で食べるのが一般的だが、刺身や釜揚げで味わえるのもこの時期の新物ならでは。飲みに行って見かけたら迷わず頼みたい、北陸に春を告げる一品といえる。

 この夜に訪れた、自宅に近い「金沢まいもん寿司」で、まずは「金沢港直送五貫盛り」を注文。ノドグロにガスエビ、ホタルイカにテイ貝にヤナギハチメと、こちらも冬と春の旬ネタが合い盛りになっていた。旬の終わりとはいえ、ノドグロはあぶりにしてあるので脂ががっちり甘く、ガスエビもとろけるようにジューシー。ヤナギハチメはメバルのことで、春告魚との別名の通り、身の弾力がシャッキリと若々しい。
 そしてホタルイカ。軍艦に刺身がのっており、ワタがねっとり、こってりとコクがある。気を良くして「ホタルイカ三種盛り」も追加、刺身に加えて、ホクホクのワタで酒が進む釜揚げ、こなれた醤油の旨みがうれしい沖漬との味比べも楽しめた。まだ雪も残る北陸路の春が垣間見える、鮮烈で魅惑的な味わいだろうか。

 富山湾ではホタルイカの漁期中、水揚げ時の発光風景を見学する観光船が就航しており、一度乗ってみたい。富山の旨い酒と、肴に水揚げしたてのホタルイカを味わった翌朝に眺めれば、威嚇の発光もウマさへの祝福の光に見えるかも?

成城石井のポテサラ

2012年03月18日 | 町で見つけた食メモ
という訳で、締切もなくデータベースも完成し、特に仕事らしいことをしなかった土曜日。ちょっと残ったまま日を置いたため酸味の効いてしまった(笑)金井山城マッコリを飲みながら、今日もおしまいである。

 アテのポテサラは好物のひとつで、居酒屋に行くとまず頼む一品。ポテサラの出来で飲み屋のつまみの実力が分かる、といっても過言ではないと思っており、芋の種類やつぶし具合、マヨネーズの酸味加減など、注文うるさいかも。市販のポテサラなら、成城石井のがいちばんうまいと思っている。

 ちなみに具はキュウリとハムのみのシンプルなのが身上なのに、近頃はどうしてレタスやニンジンを入れるのだろう。ジャガイモの食感が楽しめないわ、やたら青臭いわでいいことひとつもない。「ポテサラからニンジンキャベツ排除推進連合協議会」を立ち上げ、断固戦いたい所存だ。

ローカル魚でとれたてごはんbyFB…広島・湯来 『青空館』の、チョウザメ料理

2012年03月16日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん


 湯来温泉の「湯来ロッジ」でいただいたチョウザメは、サメといっても淡水の魚だ。湯来ロッジより水内川を15分ほどさかのぼった、細い清流になった奥地に養殖場が設けられ、隣接して食事処「青空館」も設置されている。
 キャビアの採取に成功したチョウザメの剥製に迎えられ、食事処に入ると囲炉裏のある座敷が落ち着く。この日はつくり、味噌煮、軟骨揚げ、スモークのレタス巻、手毬寿司にミンチ肉団子、そして特別にキャビアもついた。
 
 スモークのレタス巻はいぶした香りとドレッシングが洋風のしゃれた味わい。逆に味噌煮は純和風で、熱を加えると身がホコホコ、ホロリと柔らか。さらに肉団子は、ミンチにすることでダシが出るよう。和洋中どれにも合う、万能な白身だ。
 つくりは澄んだ白身で、てっさのようにかむごとに味が出てくる。旨味は鯛より濃くなく、フグの淡白さより分かりやすいぐらい。「鯛の甘みとフグの食感」がキャッチの通りで、キャビアが注目されがちなチョウザメだか、身の味もかなりのものだ。

 そしてキャビア。粒は小ぶりだが身がツヤツヤ輝き、まさに黒い宝石。小さいが魚卵のコクがその分ギュッと詰まっていて、しょっぱ目の中身がネットリ、トロリと舌に魅惑的。イクラやタラコより味の厚みがあり、いわは清冽な川の水が育んだ混じりっ気のない山の魚卵。
 料理に使うのは約800グラムほどので、まだ1キロに満たないのが、血合がのらず淡白で味がいいそう。サイズによって味や風味が変わり、昨日あら煮を食べた湯来ロッジのは6キロほどの大振りのもの。大柄のは煮込んだり濃いめの味付けにして、くせや香りを抑える調理法にするという。

 店の方いわく、フグや鯛に味を例えられるが、それらと比べて選んでもらうには安さか味が良くないといけないという。現在は天然フグぐらいの値段で、もっと安くなれば一般に普及するかも。どんな料理にも合うユーティリティ食材だけに、期待したいところだ。

 料理を味わったあと、隣接の養魚池を案内していただいた。大小様々な大きさの池に、川から引いた清冽な水が水路で流れている。入ってすぐの池は7〜8キロの大型ので、ほぼ湯来ロッジ用。そのやや左が、青空館の料理で食べた1キロ弱の池で、これを「ゆけむりチョウザメ」とブランド化を目指しているという。
 ここで養殖しているチョウザメは4種類で、一番多いベステルほかシロチョウザメ、ロシアチョウザメなど。シロチョウザメは身がきめ細かく味がいいが、寒さに弱いので育てるのが難しい。さらにロシアチョウザメは高級キャビアがとれるが、こちらも飼育が難しく、キャビアがとれる大きさまで育った例は日本ではまだないそうだ。キャビアが金色に輝くそうで、ベルーガに次ぐランクだとか。
 
 下段の一番大きな池には、そのキャビアをとるためのメスがいる。7〜8キロの大型だがそれほど数はいない様子で、「本当はここが真っ黒になるほどだといいけれど(笑)」。
 実際、チョウザメは出荷できる大きさに育つまで数年かかる上、設備維持に買い付けや研究や宣伝でコストがかかるので大変なようだ。また稚魚から成魚になる割合がまだ低いので生産性の改善など、量産や価格低下には課題が少なくない。

 水、温度、エサ、環境づくりなど、日々試行錯誤と案内の方は話す。広島・湯来の新名物・山のシーフードが、瀬戸内の鯛やアナゴやカキに並ぶ日を期待したい。


ローカル魚でとれたてごはんbyFB…日生 『福来』の、カキオコ

2012年03月15日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 相生駅からの赤穂線を日生駅で降りると、乗ってくる大量の客にビ
ックリ。ちょうどカキ祭りの日にぶつかり、街中がカキ入りの袋を下げた客で賑わっている。
 駅前から漁港方面へ、日生港に沿い船が停泊するのを見て歩く。日生湾の周辺は、陸側は色見山などすぐ小山が切り立ち、沖方面には湾口に小島が点在。カキ生育に合った、栄養豊かで穏やかな環境となっている。

 せっかくなのでカキ祭りを覗いて見ようと、会場である「五味の市」の建物に入ると、殻付きカキを大ザルで売っていた。値段は破格で、ガラガラと袋に空けて豪快に販売。かなりの行列と人だかりで場内がごった返す中、カキ山盛りの台車がひっきりなしに往来している。
 外の屋台ではむき身を入れたカキ汁、身を炊き込んだカキめし、トッピングしたカキうどんなど、カキのテイクアウトに行列が。やはりお好み焼きの列がいちばん長いよう。

 五味の市の裏手の岸壁でカキ剥き作業を眺めたら、自分もB-1グランプリで名を上げたカキオコを試そうと駅へ戻る。どこも行列が延びる中、駅そばの「福来」に15分ほど並んで店内へ。おばちゃんが3人ほどで客あしらいをしており、鉄板で一気に6枚ほど焼かれているのが圧巻だ。
 車の混雑を抑えるため、帰りのJRの切符を見せるとカキが2つおまけになるキャンペーンが面白い。見せてオーダーすると先に小皿で焼きガキが2つ運ばれてきた。

 ややしてから平たいお好み焼きが登場。箸で切ると小粒のカキがコロコロ入っている。汁はないが身がホクホク、ソースの甘辛みが、身の甘さを引き立てる。
キャベツが下に分厚く敷かれ、カキが蒸されてしっとりした印象。相生同様主張が控えめで、主役ではなく具のひとつ、といった感じだろうか。

 駅で岡山へ向かう電車を待っていると、ホームには大量の殻付きカキ入りの袋を持つ客が目立つ。プラス2個はよかったが、カキ祭りに来たにしては食べた数がやや物足りない。彼らは家に帰っても焼きガキ、と思うとうらやましい限り?