広島の奥座敷・湯来温泉へは市街からクルマで1時間ほど。公共の宿「湯来ロッジ」に宿泊し、翌朝はクルマで10分ほどの湯の山温泉を散策した。湯来温泉よりも標高が高く、かつては避暑地として企業の保養所や別荘があったが、今は旅館民宿で2軒ほどが、静かに営業している。
石灯籠が並ぶ温泉街は、奥の湯の山明神の参道にもなっている。宿の跡の空き地がポツポツ目立ち寂しいが、かつては屋根でも軒でもいいから泊めて欲しいというほど賑わったこともあるとか。浅野公の御前湯だったことから、人気があったともされる。
散策後、朝食を森井旅館さんでいただいた。自分の畑や田んぼで栽培した米や野菜を使い、山で取れた食材を用いるなど、地場の食材にこだわった料理が朝からうれしい。味噌汁の味噌も自家製で、きな粉餅もヨモギを刻んで入れ自家製でついたもの。
宿の前には自作の足湯も用意してあり、上流からひいた水で水車が回る。女将さんによると、あたりは猿は普通に出没し、この時期から「下手くそな(笑)」ウグイスが鳴き、コテージそばの木に見える位置でアカゲラが木をつついたりするなど、自然がかなり身近に感じられるという。
清流の湯来温泉に対し、山の湯風情が売り。市内中心部からわずか一時間でこんな湯をいただけるとは、広島市は実に懐が深い。加えて大温泉街にないこうした素朴なもてなし。旅館数は減ってしまったが、こうした積み重ねがリピーター獲得につながるはずだ。