浜田と湯来温泉のミッション終了後、再び山間部へ向かい三次で1泊した。盆地を埋め尽くす霧で有名なこの街で、お目当てはワニ料理だ。
ワニといってもサメのことで、山間で鮮魚が希少なこの地で貴重なシーフード。スーパーでワニ肉が売っているほどで、生活にも根付いた魚食文化なのだ。
いただいた「むらたけ総本家」では3品をオーダー。ワニの梅肉シソはさみ揚げは鳥のササミの繊維を細かくしたようで、ホロホロほぐれていくが繊維の一本一本には味を感じないほど淡白。
ワニのつくりは薄いピンク色がカジキマグロやビントロのよう。食べてみるとキメが荒くざっくりした食感で、赤身の魚の旨味も脂の甘みもなく、無味無臭な刺身。ワニの串焼きはほぼ純白の白身で、身のほぐれがよくしっとり。
使っているサメは主に浜田港で水揚げされたもので、ネズミザメという小柄なサメが味がいいそう。淡白なのでたくさん食べられるとも言われたが、単調な分ちょっと飽きてしまうか。
刺身用は鮮魚、焼き物や揚げ物は活魚を使っているそうで、逆かと思ったら生簀で観賞用にしばらく泳がせてから食べるから、とのこと。「今日食べた焼き物は、先日までそこで泳いでいたよ(笑)」
サメは消化器が未発達で体内にアンモニアがたまりやすく、それが腐敗を防ぎ山間へ時間をかけての輸送に向いていたという。今では高速道路が縦横に発達し、三次は山陽山陰をつなぐ交通の要衝だ。
だから品書には浜田港や蒲刈島などの魚を使った料理が並び、山の中ながら日本海と瀬戸内の魚がともに味わえる。今では魚食を楽しむには、かえって贅沢な立地かも。