ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはんbyFB…広島・湯来 『青空館』の、チョウザメ料理

2012年03月16日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん


 湯来温泉の「湯来ロッジ」でいただいたチョウザメは、サメといっても淡水の魚だ。湯来ロッジより水内川を15分ほどさかのぼった、細い清流になった奥地に養殖場が設けられ、隣接して食事処「青空館」も設置されている。
 キャビアの採取に成功したチョウザメの剥製に迎えられ、食事処に入ると囲炉裏のある座敷が落ち着く。この日はつくり、味噌煮、軟骨揚げ、スモークのレタス巻、手毬寿司にミンチ肉団子、そして特別にキャビアもついた。
 
 スモークのレタス巻はいぶした香りとドレッシングが洋風のしゃれた味わい。逆に味噌煮は純和風で、熱を加えると身がホコホコ、ホロリと柔らか。さらに肉団子は、ミンチにすることでダシが出るよう。和洋中どれにも合う、万能な白身だ。
 つくりは澄んだ白身で、てっさのようにかむごとに味が出てくる。旨味は鯛より濃くなく、フグの淡白さより分かりやすいぐらい。「鯛の甘みとフグの食感」がキャッチの通りで、キャビアが注目されがちなチョウザメだか、身の味もかなりのものだ。

 そしてキャビア。粒は小ぶりだが身がツヤツヤ輝き、まさに黒い宝石。小さいが魚卵のコクがその分ギュッと詰まっていて、しょっぱ目の中身がネットリ、トロリと舌に魅惑的。イクラやタラコより味の厚みがあり、いわは清冽な川の水が育んだ混じりっ気のない山の魚卵。
 料理に使うのは約800グラムほどので、まだ1キロに満たないのが、血合がのらず淡白で味がいいそう。サイズによって味や風味が変わり、昨日あら煮を食べた湯来ロッジのは6キロほどの大振りのもの。大柄のは煮込んだり濃いめの味付けにして、くせや香りを抑える調理法にするという。

 店の方いわく、フグや鯛に味を例えられるが、それらと比べて選んでもらうには安さか味が良くないといけないという。現在は天然フグぐらいの値段で、もっと安くなれば一般に普及するかも。どんな料理にも合うユーティリティ食材だけに、期待したいところだ。

 料理を味わったあと、隣接の養魚池を案内していただいた。大小様々な大きさの池に、川から引いた清冽な水が水路で流れている。入ってすぐの池は7〜8キロの大型ので、ほぼ湯来ロッジ用。そのやや左が、青空館の料理で食べた1キロ弱の池で、これを「ゆけむりチョウザメ」とブランド化を目指しているという。
 ここで養殖しているチョウザメは4種類で、一番多いベステルほかシロチョウザメ、ロシアチョウザメなど。シロチョウザメは身がきめ細かく味がいいが、寒さに弱いので育てるのが難しい。さらにロシアチョウザメは高級キャビアがとれるが、こちらも飼育が難しく、キャビアがとれる大きさまで育った例は日本ではまだないそうだ。キャビアが金色に輝くそうで、ベルーガに次ぐランクだとか。
 
 下段の一番大きな池には、そのキャビアをとるためのメスがいる。7〜8キロの大型だがそれほど数はいない様子で、「本当はここが真っ黒になるほどだといいけれど(笑)」。
 実際、チョウザメは出荷できる大きさに育つまで数年かかる上、設備維持に買い付けや研究や宣伝でコストがかかるので大変なようだ。また稚魚から成魚になる割合がまだ低いので生産性の改善など、量産や価格低下には課題が少なくない。

 水、温度、エサ、環境づくりなど、日々試行錯誤と案内の方は話す。広島・湯来の新名物・山のシーフードが、瀬戸内の鯛やアナゴやカキに並ぶ日を期待したい。