ひとしきり夜のバングラデシュ商店街を歩き、ひとかどの雰囲気を味わったところで、当国の料理でディナー。細い路地にひっそりある「ルチ」で、本場バングラデシュの味に舌鼓を打った。
前菜での一杯は、インドビール・インディアンボスに、豆サラダのチャナマサラを合わせてみた。暑い国らしい軽く甘めのビールと、適度にスパイシーなひよこ豆が、なかなかヘルシーな組み合わせ。インド料理ほどスパイスがとんがってなく、穏やかな辛味がどこかホッとさせる。
メインのカレーは、バングラデシュの魚を使ったとあるカスキカレーをセレクト。やや大きめのシラスのような小魚を塩漬けにしたもので、野菜はプチトマトにタマネギ、そして青唐辛子が数本。なのでサラリと澄んだ見た目からスープをズッとやると、鮮烈な辛味にむせること。「きつければ、唐辛子を抜いてくださいね」と店主のジャヒドさんが気を遣ってくれる。
辛さに慣れると、その味わいにどっぷりハマってしまい、スプーンが止まらない。味の基本が小魚の塩辛だから、まさに魚食文化の日本人に刷り込まれた旨味。すするたびに炸裂するアミノ酸の濃厚さは、もう感涙ものの魚旨さである。インドのよりも素材の味を立てた、日本人好みのカレーのように思え、ナンよりジャスミンライスに合うのもまた、日本風。
バングラデシュはデルタ地帯に位置し、川が錯綜する立地から米や野菜、川魚が食文化の中心となっている。前菜とメイン料理ともにその真髄を味わったようで、おかげでプチバングラ探訪のテンション盛り上がりもひとしおである。