暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

無意味

2013-05-11 | つめたい
体がとても重いのだと、彼はいつもそう言っていた
確かに彼は歩くのも辛そうで、
腰掛けた椅子が悲鳴をあげていた

彼のはらわたを脱いてやるのだ
腸も、肺も、心臓も
これで随分動けるだろう
肝も、脳も、生殖器も

彼は見違えるほど軽やかになり、
そして見違えるほど美しくなった
飛び跳ねるように走り回ったあとで、
窓を乗り越え飛び降りた

羽のようにふわふわと、
地面に華麗に降りたてるのだと、
しかし彼にはまだ分が悪い
まだまだ彼は重かった

骨も、筋も、脂さえ
まだまだある、まだまだ重い
彼のすべてを脱いてやるのだ
これで軽くなったろう
これで跳べば飛べるだろう

ほら、彼は軽そうだ
美しささえ取り払って
彼はとても軽そうだ

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