暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

wispy whisper

2018-03-22 | あたたかい
君と出会ったのは
今のように雨の降る夜だったろうか

生温い空気に不似合いな
冷たく刺さる水の音
私はひどく凍えていた、
木陰はむしろ私の肌から
温もりを吸い尽くしているようで

大きな瞼に並んで茂る
豊かな睫毛に指を絡める
君の頬に埋もれねば
私はもはや眠れないのだ

冷たい雨がふいに止む
見上げれば巨きな黒い黒い影
死霊のように浮かぶ白と
珠のように輝く黒と
こぼれ落ちるほど円い瞳が
じっとこちらを覗いていた

ああ、今日もとても寒い
君よ、願わくばその懐へ
私を収めてはくれまいか

温もりを与えてくれただけでなく
私は君をとても
とても美しいと思った
うっすら生えた産毛でさえも
雨粒に光り輝いて見えた
実際君は輝いていた
私に伝わった温もりは
きっと物理法則にとどまらない

ひどく冷たい雨だ
君の懐にいようとも

優しく微笑んでくれ、君よ
その長い耳に触らせてくれ
私の顔ほどもある
つぶらな瞳を向けてくれ
皮膚を裂く冷たい雫も
君にかかれば熱く燃える炎になろう

濡れそぼった産毛に手を這わせ
私は君に触れるのだ、
ひんやりとした長い耳へ
私の秘めた思いをひとつ
熱い吐息に込めてささやく
君よ、微笑む君は
どんな陽よりも美しい
どうか私のくだらぬ睦言で
君が微笑んでくれたことを

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