背の高い草むらは、小さな私には大きすぎるほどだった。
まっすぐに日の指す桜色の道。
ほどなくして広がる青々とした草むら。
細く鋭利な葉は日を遮るには弱く、
肌を裂くには容易かった。
無数の裂傷を作りながら、いつも私の探検は始まっていた。
土の香り、青い血潮の匂い、
遠くから運ばれる腐敗した海の臭い。
草の筒から顔を覗く虫、
広い葉からこちらを見やる虫。
落ちた草の影では蜥蜴が這い、
私は進む、無邪気に団子虫を踏み潰しながら。
青々とした飛蝗が無防備に、
幼い私の前に飛び込む。
未知の生物に顔を輝かせ、逃げるそいつの脚を掴み、
ぽろりと大きなそれが落ちた。
(そんなつもりではなかった)
(私は、そんなつもりでは)
眩む頭は影を求め、大きな木の下へと進んでいく。
肌から血を滲ませて、靴の裏に死骸を作り、
影はひんやりと凍えていた。
明るいものを奪う影。
地を這うのは鋏虫と蟻と蠲、そして団子虫。
冷たい影、凍える風、
ぽっかり口を開ける井戸。
枯れた井戸には何もおらず、ただ黒い土が覗くだけ。
淀んだ雨水に蓋をするように、私はそこへ花を投げる。
紅く、小さな可愛い花、
日陰にしか咲かない花を。
彩りを添えた花を詰め、それでも井戸はそこにあった。
ひりひりと肌が痛む。そこらじゅうで血が滲む。
痺れる細い指先で、蓬の草を毟り取る。
(だってそう教わったもの)
(それ以外は教わらなかった)
赤い壁蝨と一緒くたに、
重なる蓬へ石を打つ。
何度も、何度も、何度も、何度も。
生贄の祭壇は紅い井戸。
緑の血潮がどろりと垂れ、
私はそれを肌に擦り込む。
ひりひりと痛む肌を擦りながら、
私は飛蝗を思い出していた。
容易く脚を捨てた飛蝗を。
容易く尻尾を捨てた蜥蜴を。
(あれはスズラン)
(毒があるんだ)
桜色の道を戻っていく。
およそ似つかわしくない、血と血で肌を汚した姿で。
灼けゆく道路の色とりどりの紋様は、
団子虫のはらわたで描かれていた。
まっすぐに日の指す桜色の道。
ほどなくして広がる青々とした草むら。
細く鋭利な葉は日を遮るには弱く、
肌を裂くには容易かった。
無数の裂傷を作りながら、いつも私の探検は始まっていた。
土の香り、青い血潮の匂い、
遠くから運ばれる腐敗した海の臭い。
草の筒から顔を覗く虫、
広い葉からこちらを見やる虫。
落ちた草の影では蜥蜴が這い、
私は進む、無邪気に団子虫を踏み潰しながら。
青々とした飛蝗が無防備に、
幼い私の前に飛び込む。
未知の生物に顔を輝かせ、逃げるそいつの脚を掴み、
ぽろりと大きなそれが落ちた。
(そんなつもりではなかった)
(私は、そんなつもりでは)
眩む頭は影を求め、大きな木の下へと進んでいく。
肌から血を滲ませて、靴の裏に死骸を作り、
影はひんやりと凍えていた。
明るいものを奪う影。
地を這うのは鋏虫と蟻と蠲、そして団子虫。
冷たい影、凍える風、
ぽっかり口を開ける井戸。
枯れた井戸には何もおらず、ただ黒い土が覗くだけ。
淀んだ雨水に蓋をするように、私はそこへ花を投げる。
紅く、小さな可愛い花、
日陰にしか咲かない花を。
彩りを添えた花を詰め、それでも井戸はそこにあった。
ひりひりと肌が痛む。そこらじゅうで血が滲む。
痺れる細い指先で、蓬の草を毟り取る。
(だってそう教わったもの)
(それ以外は教わらなかった)
赤い壁蝨と一緒くたに、
重なる蓬へ石を打つ。
何度も、何度も、何度も、何度も。
生贄の祭壇は紅い井戸。
緑の血潮がどろりと垂れ、
私はそれを肌に擦り込む。
ひりひりと痛む肌を擦りながら、
私は飛蝗を思い出していた。
容易く脚を捨てた飛蝗を。
容易く尻尾を捨てた蜥蜴を。
(あれはスズラン)
(毒があるんだ)
桜色の道を戻っていく。
およそ似つかわしくない、血と血で肌を汚した姿で。
灼けゆく道路の色とりどりの紋様は、
団子虫のはらわたで描かれていた。
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