暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

足踏みの足跡

2018-05-14 | かなしい
全てはすでに終えた後
ここにあるのは打ち棄てられた
人のくらしの跡ばかり

心寂しいと言う彼は
廃墟を棄てて外へ出た
私はいやに高い空を見て
向こうの塔を眺めている

ここの時間は止まったまま
獣でさえも近寄りはしない
ときどき雨を凌ごうと
大小のいきものがとどまるだけで

辛くなるからと言う彼女は
瓦礫の上に家を建てた
私はいやに暗い塒から
ぽつりと灯った光を眺める

誰も彼もは瓦礫を置いて
誰も彼もが廃墟を棄てて
新たな道を作り出す

私はがらんどうの残骸に
ぼんやりと揺蕩い続けたまま
空の煙を眺めては
土の煙を眺めては

彼らのように乗り越えて
行くには足が重すぎるのだ
それにここは私には
とても心地が良いのだから

止まった足はいつしか消えて
止まった心もいつしか消える
揺蕩い続くのは私の瓦礫
寄る辺をなくした来訪者の
煙は大気に霞んでいった

コメントを投稿