暇人詩日記

日記のかわりに詩を書いていきます。

独善愛

2007-10-02 | 狂おしい
一枚だけの剃刀の刃
それが彼女の抵抗の全て
このたった一枚に
おそれやかなしみ
あらゆる感情が込められた

茶色く錆びた刃を眺め
彼女の暮らす世界を思う
閉塞した囲いの中で
せめて安心していればいい
安息に生きていればいい

私は二度とは許しはしない
彼女と彼女を苦しめた奴等
私は誰をも許しはしない
たとえ私であろうとも

彼女が好きだった
死ねばいいと思った
彼女が憎かった
神聖で穢らわしかった
壊してしまいたかった
殺してあげたかった
彼女に憎まれたかった
それは私の愛だった
彼女がいとおしかった
彼女を憎いほど愛していた

無力な彼女を辱しめ
私は自虐の憐憫と
他を害する悦びを知り
泣きたくなるほど嬉しかった

死ななければ
殺されたかった

私は今、
彼女の身を案じている
それしかすることもなく
それだけしていればいい
だから私は幸せだ
今、私は
泣きたくなるほど満たされている

私は彼女を辱しめ
彼女は私に抗った
剃刀の刃などたった一枚
それが私のすべてとなった
彼女は私のすべてとなった
私も彼女のすべてとなった

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