今朝はロシア製のヘヴィな人間ドラマを鑑賞しました。
「殺戮島」です。
タイトルからは、集団で殺戮を行う人々が住む島を描いたホラーのような印象を受けますが、まったく違っています。
私が日ごろ好んで観る、幽霊やゾンビや吸血鬼、あるいはシリアル・キラーやサイコ殺人鬼が活躍する浮世離れしたホラー映画に比べれば、この映画の怖ろしさはどんなホラーにも勝るでしょう。
近未来、全世界で死刑制度が廃止された結果、凶悪犯はことごとく終身刑となり、どこの国も刑務所不足に悩みます。
そこでロシアが極寒の無人島を提供し、入植という名目で、囚人を島に送り込むのです。
第1陣はロシアの囚人206名。
そこには宿舎、暖房、ベッド、3か月分の食糧と暖房のための燃料が用意され、小さな教会まで建てられています。
島に着くなり、チェンチェン人の囚人10名あまりが、組織だった動きでロシア人を数名殺戮し、権力を握ろうとしますが、相手は多勢に無勢。
全員殺害されてしまいます。
それを見た元パイロットで、妻子を殺された復讐のために6名を惨殺した男は、一人、宿舎から離れた場所で野宿生活を送ります。
必ずロシア人同士で争いが起き、虐殺が行われると予想したためです。
海鳥を捕まえては餓えをしのぎ、火を起こして暖をとりながら暮らします。
そこへ刑務所で同じ部屋に収監されていた連続殺人鬼の若者が追ってきます。
宿舎での暮らしは地獄だ、と言い訳して。
二ヶ月半後、食糧が得られず、薪が無くなって暖もとれない状態に陥り、宿舎の裏に積まれている炭を盗もうと宿舎に戻りますが、捕まってリンチにあいます。
宿舎は、モンキーと呼ばれる男が総督を名乗り、その取り巻きや元大工などの特殊技能を持つ者を支配階級にし、その他の者を支配します。
囚人には全員赤いダウンジャケットが支給されていますが、リバーシブルになっており、裏返すと青になります。
支配階級は赤、被支配階級は青を着ることとして差別し、毎日怖ろしいゲームを行います。
青いダウンを着た者たちを四つのグループに分け、日替わりで一つのグループだけを免除し、他の者たちを宿舎まで走らせるのです。
ビリになった者は、殺害され、食糧にされてしまいます。
宿舎の入り口には人が殺到し、殴り合い、ビリになることを必死で避けようとします。
どんな状況にあっても人は社会を作り、そこには利益を独占する支配階級が生まれ、搾取される多くの人々を恐怖で支配するのですね。
これがあながち作り話と言えないことは、過去のシベリア抑留やナチによるユダヤ人虐殺を思えば当たり前のことでしょう。
元パイロットはゲームを拒否することを被支配階級の人々に提案し、策略をめぐらせてモンキーを殺害し、差別を無くします。
そこへ、大きな船がやってきます。
食糧や燃料を満載して。
おまけに米国からの入植者も大勢連れてきます。
しかし米国の囚人とロシアの囚人は、船が去ったと見るやその日のうちに互いに殺し合いを始め、衛星から監視していた担当者は、もはや収拾が着かないと判断し、この計画を中止して全員刑務所に戻すことを提案しますが、上層部の判断は違っていました。
軍を送り込んで、囚人全員皆殺しにせよ、というのです。
この上層部の判断が、この映画でもっとも怖ろしいものです。
本当に悪い奴は、入れ墨を入れて派手な格好をし、チンケな殺人など犯したりしません。
スーツで決めて、しかし最も効果的に多くの人を殺害する計画を練って、合法的にそれを行うのです。
最後、軍からの攻撃にも生き残った元パイロットら3人は、島のはずれに不時着したままになっている水上飛行機を発見し、これを修理して逃げ出します。
しかし、軍艦に発見されて飛行機は銃撃されます。
果たして飛行機は逃げ切れたんでしょうか。
あるいは墜落?
仮に逃げたとして、彼らに行くあてなどあるのでしょうか。
ロシアらしい、寒々として、しかも不衛生な感じが陰惨で、ホラー映画のような法螺話とは違い、大分重苦しいものでした。
よく中高年の女性が言う「人間が一番怖いのよ」とは、全く真実を突いているものと思います。
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