ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

廃市

2011年11月04日 | その他

 日本の総理はドジョウ、ドジョウと言えば柳川鍋、柳川と言えば「廃市」ということで、福永武彦の名作「廃市」にたどり着きました。
 これは大林宣彦によって映画化されており、大林映画の臭さが鼻につく私ですが、この作品はわりと淡々とした演出で、臭みがないように思えます。

廃市 デラックス版 [DVD]
福永武彦
パイオニアLDC

 おそらく柳川が舞台の「廃市」
 卒業論文を書くために主人公のはある一家に間借りして 長逗留しますが、そこの美しい姉妹と姉の夫との奇妙な三角関係が描かれます。
 夫は妹を愛していると信じて身を引こうと、寺に籠る姉。
 自分を愛してくれない妻に不満を抱き愛人宅で過ごす夫。
 そんな二人に悩まされ、この町はもう死んでいるのよ、とつぶやく妹。
 どろどろに堕してしまいそうな題材ですが、廃市を流れる運河の水の音とともに、静謐な情感が漂っています。
 なんとなく、地球上には存在し得ない不思議な町のような空気が流れる廃市。
 そこで夫婦関係を破壊し、姉妹の関係を破壊し、家族そのものを破壊するかのような行為が行われます。
 すなわち、夫と愛人の心中。
 夫は妻を愛していたのか、それとも妹なのか、あるいは愛人をか。
 今となっては誰にもわかりません。
 
 そして卒論を仕上げ、姉妹に見送られる時、主人公のは、妹を愛してしまったらしいことに気付くのです。

 私はじつは福永武彦の作品をあまり好みません。
 愛と孤独の作家なんて言われますが、なんとなく自己陶酔の作家のようなイメージを持っています。
 なんとなく、きれい過ぎるんですよねぇ。
 しかし「廃市」だけは変に気に入って、時折読み返しています。

 もはや存在を許されない死んだ町で朽ちていく気持ちというのは、どういうものでしょうね。

 私はなんとなく、浮世離れした死んでしまった町で、ドラッグやアルコールで頭を殺しながら、緩慢に滅んでいきたい、という暗い欲求を感じずにはいられません。


 

  廃市・飛ぶ男 (新潮文庫 草 115-3)
福永 武彦
新潮社

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