日本の総理はドジョウ、ドジョウと言えば柳川鍋、柳川と言えば「廃市」ということで、福永武彦の名作「廃市」にたどり着きました。
これは大林宣彦によって映画化されており、大林映画の臭さが鼻につく私ですが、この作品はわりと淡々とした演出で、臭みがないように思えます。
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おそらく柳川が舞台の「廃市」。
卒業論文を書くために主人公の僕はある一家に間借りして 長逗留しますが、そこの美しい姉妹と姉の夫との奇妙な三角関係が描かれます。
夫は妹を愛していると信じて身を引こうと、寺に籠る姉。
自分を愛してくれない妻に不満を抱き愛人宅で過ごす夫。
そんな二人に悩まされ、この町はもう死んでいるのよ、とつぶやく妹。
どろどろに堕してしまいそうな題材ですが、廃市を流れる運河の水の音とともに、静謐な情感が漂っています。
なんとなく、地球上には存在し得ない不思議な町のような空気が流れる廃市。
そこで夫婦関係を破壊し、姉妹の関係を破壊し、家族そのものを破壊するかのような行為が行われます。
すなわち、夫と愛人の心中。
夫は妻を愛していたのか、それとも妹なのか、あるいは愛人をか。
今となっては誰にもわかりません。
そして卒論を仕上げ、姉妹に見送られる時、主人公の僕は、妹を愛してしまったらしいことに気付くのです。
私はじつは福永武彦の作品をあまり好みません。
愛と孤独の作家なんて言われますが、なんとなく自己陶酔の作家のようなイメージを持っています。
なんとなく、きれい過ぎるんですよねぇ。
しかし「廃市」だけは変に気に入って、時折読み返しています。
もはや存在を許されない死んだ町で朽ちていく気持ちというのは、どういうものでしょうね。
私はなんとなく、浮世離れした死んでしまった町で、ドラッグやアルコールで頭を殺しながら、緩慢に滅んでいきたい、という暗い欲求を感じずにはいられません。
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