今夜はミステリーを読みました。
テンポが良くて物語が疾走する快感に心奪われ、400頁を一気読みしてしまいました。
読んだのは「私が先生を殺した」です。
物語の冒頭、ある私立高校の避難訓練で校庭に全校生徒が集まる中、27歳の人気教師が屋上から飛び降り自殺します。
一体何があったのか。
物語は語り手が次々と変わり、それぞれの視点から事件に関する一部が語られます。
このあたり、湊かなえの「告白」との類似を感じさせます。
語り手が変われば物語が多重的になっていくというのは、芥川龍之介の名作「藪の中」でよく示されています。
そのため、この手法は時折見かけますが、「私が先生を殺した」では、物語が多重的になるかと思いきや、最後の語り手である自殺した人気教師によって、怖ろしい真実と切ない自殺動機が語られ、一つに収斂していくという、エンターテイメントらしい分かりやすい結末が待っています。
久しぶりに平易で抜群に面白いエンターテイメントに接することが出来たのは私にとって幸いでした。
桜井美奈という作家の小説を読むのは初めてですが、またいくつか読んでみたいと思います。