私は待つことと坂道を上ることが大嫌い。
もちろん階段を上がることも大嫌いです。
従って、登山が趣味なんて、マゾヒストとしか思えません。
その私が、学生の頃、山岳信仰に興味を持ち、恐山や月山、大峰山のふもとまで、バスで登れるところまで行き、登山者向けの宿に泊まって麓から霊力を得ようとしたことがあります。
平地にある寺院でも通常、「○○山××寺」のように、山を名乗るのが通例です。
インドで言う須弥山など、仏教にも山岳信仰的な要素が残っています。
役小角が始めたとされる修験道、山岳信仰と仏教、とくに密教とが融合した、不思議な宗教というか儀礼ですが、もともと山がちの国土で、我がくにびとが、恵みを与えてくれるとともに時にはひどい災厄をもたらすお山を畏れ敬ったのは謂わば当たり前とも言えるでしょう。
その昔は、サンカと呼ばれる山の民がいたそうです。
定住せず、山や山里を移動して暮らす人々で、被差別民とも盗賊とも言われ、未だに明確な定義は無いとか。
昭和30年以降、ほぼサンカは姿を消し、定住するようになったと言われます。
そういうわけで、私は登山をしたことがなく、今後もする気はありませんが、山への畏怖を抱き続けた人々の精神性には深い興味を持っています。
従って、エベレストをはじめとして、地元の人々が霊山として敬い、登ることを禁忌としてきた山に登る登山者に、不快感を抱いています。
お山はスポーツの場ではなく、多くが信仰の場なわけですから。
1970年代に、その名も「ホーリーマウンテン」というタイトルの映画が製作されました。
私の知る限り、最もカルト色の強い、性的で狂的で、すこぶる面白い映画です。
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しかし人によっては、その強烈さに吐き気を催すかもしれません。
9人の賢者が住むという聖山で錬金術の力を得ようとする男の物語ですが、物語がどうこうというよりも、映像の強烈さに圧倒されます。
聖山を描いてグロテスクとも言える強烈な映像が製作されなければならない所以のものは、そこにこそお山に対する人々の意識の根底があるからであるように思います。
私は生涯を平べったい関東平野の首都圏に住みながら、はるか霊山に思いを馳せる、怠け者に過ぎないのです。
そんな私に、霊山がその霊性を見せる瞬間など、到底あり得ないのでしょうねぇ。
永遠の片思いを続けなければならないようです。