ブログ うつと酒と小説な日々

躁うつ病に悩み、酒を飲みながらも、小説を読み、書く、おじさんの日記

「劇場霊」-美と恐怖

2015年12月02日 | ホラー・サスペンス・SF等の映画

 今日は休暇を取りました。
 年に20日間ある年休ですが、残したら今年いっぱいで消滅してしまいます。
 で、今月は休暇取得強化月間というわけ。

 千葉市郊外のシネコンに映画を観に行きました。
 Jホラーの名匠、中田秀夫監督「劇場霊」を観て来ました。



 20年前、「女優霊」という佳品でメジャーデビューした監督が新たに挑む製作現場での恐怖。

女優霊 [DVD]
柳ユーレイ,白鳥靖代,石橋けい,大杉 漣,根岸季衣
バンダイビジュアル

 「女優霊」は映画の撮影現場で起こる怪奇現象がメインでしたが、「劇場霊」は芝居。



 「劇場霊」は、ハンガリーに実在した伯爵夫人で、若い女の生き血を飲んだり、生き血の風呂に入ったりすれば、永遠の若さが保てると信じ、領民のなかから若い女をさらっては殺したエリザベートを主人公にした芝居の稽古が繰り広げられる中、劇中に登場する永遠の美貌の象徴である生き人形が、重要な役割を果たします。

 生き人形は、若い出演者の生気を吸い取ってしだいに人間化して、最終的には生きた人間になることを望みます。
 若くして亡くなった自分の娘を模った人形作家が作った人形で、これが今回のダーク・ヒロインということになります。

 永遠の若さを求めて殺人を繰り返したエリザベートと、永遠の美を捨てて生きる人間になることを望んだ人形の対比がなんとも哀切です。

 「女優霊」、その後の大ヒット作「リング」くらいまでは中田監督の演出は抑え目ですが、「クロユリ団地」「劇場霊」と、だんだん演出過剰気味になってきたように感じます。
 それでも、滑稽にならず、しっかりと怖くて美しい映画を撮るのは見事と言う他ありません。

クロユリ団地 スタンダード・エディション [DVD]
前田敦子,成宮寛貴,勝村政信,田中泰生,高橋昌也
Happinet(SB)(D)
リング [DVD]
鈴木光司,高橋洋
角川映画

 平日の朝一番で観に行ったのですが、到着が遅れ、予告編が始まっていたため、劇場は真っ暗。
 映画が終って明るくなったとき、250人は入る大劇場に、客は私一人だけだったと気付いた時が一番怖かったですねぇ。

 大劇場にたった一人で、劇場を舞台にした恐怖映画を観ていたのですから。
 ほんとにぞっとしました。

 ほとんど人間になりかかった生き人形が、主人公の少女に刺し殺され、出るはずの無い鮮血が噴出するシーンは出色の美しさでした。

 怪物の哀しみを見た思いです。

 美的で怖ろしい映画を平日に堪能できて、こんな幸せなことはありません。


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