T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

[ 「博士の愛する数式」を読み終えて !! 10/10 ]

2014-10-22 10:01:57 | 読書

                                                                                                             

10ー 博士との素晴らしいパーティーは、私たちと過ごす最後の夜となった

 ルートの11歳誕生日祝いは最も心に残る素晴らしいパーティーだった。それは、博士が居てくれたからで、また、その日が博士と過ごした最後の夜になってしまったからだ。

 私たちは3人力合せてお祝いの準備をした。私は料理の支度をし、ルートは食堂の床磨き、博士はテーブルクロスのアイロンがけを担当した。

 いざパーティーを始めようという時になって、小さな手違いと、ちょっとした出来事が起こった。

 ケーキの箱にロウソクが入ってなかったのだ。ルートが、自分が行くのが一番早いからというのでお願いした。

 [暫くすると、そんなに時間も経っていないのに、博士が、遅いんじゃないだろうかと呟いた。博士が時計を見て時間についての言葉は発したことは、今までなかったのだ。2・3分すると、また、遅すぎはしないかねと心配し、30秒おきに時計に目をやり、博士が座っている椅子の音がガタガタなっていたので、私が迎えに出た。商店街の入口でルートに出会った。最初の店は閉まっていたそうだ。]

 [二人で急いで帰ってきたら、博士が、少しでも早くパーティーが開けるように、ケーキを冷蔵庫から出して、テーブルの上にケーキを置こうとして、中のケーキをテーブルの上に落としたらしい。博士は、頭を下げたままケーキの空箱を抱えていた。]

 私は博士から空箱を貰ってテーブルに置き、ケーキは少し崩れていたが、私とルートで、できるだけ元の形に戻してローソクを立てた。そして、テーブルクロスの汚れをローストビーフを入れた皿で隠して、どうぞ博士、お掛けになって下さいと博士を椅子に案内した。

 [博士は、心も落ち着き、漸く顔を上げ、ルートに視線を向けると、かすれた声で、「君は何歳かね」と言い、頭を撫ぜながら、「名前は」と尋ねた。ルートがいつもの様に自己紹介した。]

 ルートがロウソクの炎を消し、三人の拍手が止み、食堂の灯りをつけた。その明かりで、博士は、テーブルの下に落ちていたメモに気付いた。そのメモには、未亡人に頼んで購入しておいたルートへのプレゼントを閉まっていた場所が書かれていたのだ。博士は、プレゼントのグローブを、無事、ルートに渡すことができた。ルートは博士に抱きつき、私が注意するまで、食事しながら左手にグローブをはめていた。

 ルートは博士からプレゼントをもらった後、ルートは、博士にお祝いの苦労した野球カードを渡した。

 [私とルートは、江夏のプレミアムカードを手渡した時の博士の表情は、生涯忘れないだろうと思う。博士はリボンを解き、暫くカードを見つめ、何か言おうとして顔を上げるが、ただ唇を震わせるだけで何も語らず、私たちの前で足を折り、頭を垂れ目をつぶって、両手を合わせた。私たちは二人は、差し出した以上の物を受け取っていると感じることができた。]

                                                                                                   

11ー 医療施設の博士の胸には、江夏豊プレミアムカードが揺れていた

 博士が専門の医療施設へ入ったのは、パーティーの翌々日の日曜だった。

 連絡してくれたのは未亡人だった。急ではなく、施設の定員に空きが出るのを待っていたのですと未亡人が答えた。

 私が、パーティーの時間が勤務時間を過ぎていたからでしょうかと尋ねると、未亡人は、義弟が唯一のお友達と一緒に過ごせるのは、もうあの夜が最後になるだろうと、私には分かっておりました。あなたご自身もお気づきになっていらしたでしょう? 80分のテープは壊れてしまいました。義弟の記憶は、もはや1975年から先に1分たりとも前進できなくなっておりますと言われた。

 [私はルートは1ヶ月か2ヶ月に一度゛博士に会いに行きました。もちろんルートはグローブは忘れなかった。博士の胸には、「僕の記憶は80分しかもたない」とのメモも、私の似顔絵とルート記号が書かれたメモもなく、ただ一つ、ルートがプレゼントした江夏のプレミアムカードを、未亡人がクリアーケースに入れ、ケースの端に穴を開けて紐を通し、首に下げていた。それは、博士が博士であることを証明するIDカードそのものになっていると思えた。]

(テープが壊れているので、どのように対応したのかは記述されてなく、ルートと博士が、キャッチボールを少しの時間やっている場面だけが記述されていました。しかし、3人の間には、心というテープがあったとのだと思われた。)

                                 終

 

 

 

  

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