T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1134話 [ 「鬼平犯科帳 5 ・兇賊」を読み終えて -2/3- ] 2/3・水曜(晴)

2016-02-02 15:19:43 | 読書

「あらすじ」

五 九平は隠れ家やの居酒屋の店で、甚五郎一味の幹部を見た

 その頃、鷺原の九平は、青山の久保町にある居酒や〔いせや〕の中二階に、潜んでいた。

 〔いせや〕の亭主は、吉右衛門といい、九平より10も上の70歳で、これも一人身の福々しい人相をした老爺で、近辺では、〔大黒の吉右衛門〕で通っている。

 実は、九平を盗人にしたのが、この吉右衛門なのである。

 九平は、若い頃に、故郷で、恋仲の女が他の男と通じて、その女に捨てられた。

 九平は、二人を殺して江戸に出てきた。

 江戸で悪事を働いていた九平を拾い上げてくれたのがきた右衛門で、芝の料理屋〔八百蓑〕の下働きに口ぎきをしてやった。

 その頃の吉右衛門は、浅草の料理屋の板前をしていたのだが、裏へ回れば、ひとり働きの盗人〔板尻の吉右衛門〕であった。

 吉右衛門は、九平を手なずけて、引き込みを九平にさせて〔八百蓑〕へ忍び込み、120両を盗み取って逃げた。

 それから約40年も経っていた。

「かくまってくれ」

 と、半年ぶりに顔を見せた九平を迎え、

「九よ。おまえ、まだ盗みをしているのか?」

 吉右衛門はあきれ顔でいた。

 吉右衛門に、九平は詳しいことを語らなかった。

―中略―

 九平は平蔵のことが気にかかってならなかった。

 あの夜の平蔵の言動を思い浮かべるたびに、

(あの時の夜鷹のおもんへの扱いといい、後をつけたおれを見つけていながら素知らぬ顔でお屋敷の前まで……そして、おやじ、ご苦労、ときたもんだ。いやはやどうして、大したお人さ)

 九平は、盗人の身を忘れ、すっかり惚れ込んでしまったようだ。

 それなら、すぐさま役宅へ駆けつけ、倶利伽羅峠の一件から、あの夜、戸口の外で囁き交わしていた悪党二人の言葉を、平蔵に知らせたらよいものだが、必然、こっちの素性も明るみに出ることになる。

(そいつは、困る。この年になって、もう、お縄にはかかりたくはねえもの)

 九平はやきもきしていた。

 吉右衛門のところへ隠れてから、15日目の夜がきた。

 この夜、九平は、倶利伽羅峠で見た3人連れのうちの一人の顔を、吉右衛門の店に見出した。

六 九平が見つけた甚五郎一味の盗人宿

 その男は、一抱えほどの風呂敷包みを傍らに置き、神妙な顔つきで飲んでいた。加賀やの店の前で囁き交わしていた男のうちの一人でもある。その声にも九平は覚えがあった。

 間もなくして、その男は出て行った。

 九平は、裏口に待ち構えていて、すぐに後をつけた。

 雑木林の向こうに、日中なら大安寺の大屋根が望まれようという丘の上の百姓家に、男は入っていった。

 商人風の男がこの夜更けに、こんなところの百姓家へ入ったというのは、九平から見ると、ただことではねえことになる。

(盗人宿かな)

 と思った。 この直感は適中していた。

 この百姓家は、盗賊・網切の甚五郎の盗人宿の一つであり、男は、手下の野尻の虎三という者であった。もちろん、九平はそこまで知っていたわけではない。

(さて、どうしようか……)

 近づくのは、ちょっと怖かった。

 九平は引き返し、吉右衛門が気づかぬように、寝床に潜り込んだ。

 翌日、九平は、吉右衛門に日暮れまでに帰るからと、百姓姿に変装して、昨夜の百姓家を望む畑道へ来た。

 ただ、何となく、様子を見に来たのだが、九平の両眼が光った。くだんの百姓家から現れた人影が一つ。紛れもなく、峠の三人づれのもう一人の男だった。甚五郎一味の文鋏の友吉だったのである。

ー中略ー

 先回りした九平の前に友吉が現れた。

 九平の老顔には、少年のような興奮の色が溢れていた。

(てへっ……な、何だか、おいらが火付盗賊改メになったようじゃぁねえかよ)

 もはや、疑いのないように思われた。

 どこぞの盗賊……それも、かなりの大物が、江戸市中の諸方に潜伏していながら、〔鬼の平蔵〕の暗殺を企てている。

(ま、間違えのねえこった!!)

 だからといって、鷺原の九平、盗賊のどもへ探りを入れてどうしょうというのか。そこまでは、もう考えていない。

 得体の知れぬ興味が湧き起り、老いた九平の冒険心が燃え上がった。

 商人姿の文吉は、九平の尾行に全く気付かず、向島の〔大村〕という料亭に入って行った。

 その日は、どうにも疲れていたので、吉右衛門の家に引き返した。

 翌朝、吉右衛門に無断で、昨日の百姓おやじの扮装で外へ飛び出した。

七 九平は平蔵宅から帰る怪しい老人の侍と小者の後をつけた

 2千石の大身旗本・最上監物の書状を携えて、最上家の用人・山本利右衛門という者が、役宅の長谷川平蔵を訪ねて来た。

 最上監物からの書状は、

「……わが家名に関わる事件<こと>ゆえ、ぜひとも談合していただきたい。暮六ツまで゛に、向島の大村まで、密かにおはこび願えないか。いや、ぜひとも、おはこび願いたい」

 との文面で、平蔵は(うんざり)したが、用人に、ともあれ参上すると返事をした。

 用人・山本と小者は監物邸に戻らず、なんと、向島の〔大村〕に入って行った

 それも、(不思議はない)のやも知れぬ。

 すでに、主人の監物が〔大村〕にいて、飲酒して返事を待っているのだとしたら、それも頷ける。

 この朝、九平が、先日からの百姓家を見張っていると、武家屋敷の小者の扮装をした者が出てきた。

 後をつけて行くと、九段へ出たところから、いつの間にか、老人の侍と一緒になり、火付盗賊改方の役宅へ入って行ったではないか。

 しばらくすると、何事もなく、また、どこかへ行こうとしている。九平は、いそいそとして二人の後をつけた。

 今日は、九平、どこで手に入れたものか旅僧の変装をしていた。

八 密偵・伊三次が〔五鉄〕にいた九平を発見、駕籠で役宅に連行

 〔大村〕の表口で見張っていた九平は、腹が減ってきたので、いったん引き揚げて、本所の〔しゃも鍋ー五鉄〕へ入った。

 〔五鉄〕の亭主・三次郎は平蔵が無頼時代の顔なじみだった。

 九平が、煮えはじめた〔しゃも鍋〕へ箸をのばし、舌鼓をうった。

 そのとき、火盗改方の密偵・伊三次が〔五鉄〕の中の九平が目についた。手持の人相書にそっくりだと三次郎に言って、駕籠を頼んだ。

 伊三次が、

「とっつあん。芋酒やの九平さんだね」

 と言うと、九平は手にした猪口を落として、腰を浮かせた。その瞬間、九平のひ腹へ、伊三次の拳が深く沈んだ。

 伊三次が付き添った駕籠は、まっしぐらに役宅に駆けて行く。

「芋酒やのおやじを捕まえてきました」

 おりしも役宅にいた同心・酒井祐助は、伊三次、でかしたと、九平を駕籠から引きずり下ろした。

 伊三次の、長谷川さまはの問いに、酒井が、

「長谷川さまは、向島の大村へ出かけられた」

 と、答えて、九平の猿轡を外して、

「これ、おやじ……」

 言いさした時に、九平が、

「ええもう、こうなったら、やぶれかぶれだ」

 伊三次は異常な予感を覚えて、

「やい、おやじ。申し立てたいことがあるなら、早く言わねえか」

 と言いながら、九平の肩を小突いた。

                                              

                           次の九章に続く

 

 

 

 

 

  

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