T.NのDIARY

写真付きで、日記や趣味をひとり問答で書いたり、小説の粗筋を纏めたブログ

1504話 [ 「闇の歯車」を読み終えて -12/?- ] 6/21・木曜(曇・晴)

2018-06-20 18:15:00 | 読書

「あらすじ」

「押し込み」 (伊兵衛と佐之助が顔を見られるという予期せぬ事態が起こった押し込み)

一 (同心の新関と岡っ引の芝蔵は伊兵衛の回りを探っていく)

 南町奉行所の同心・新関多仲は、伊兵衛が櫓下を通り過ぎたところで、一軒の水茶屋に入るのを見ると、ためらわずに自分も同じ軒をくぐった。

 店に入ると、新関は伊平衛が坐っている場所を確かめ、その姿が見える席に腰をおろした。

 岡っ引の芝蔵に伊兵衛の身辺を注意しろと言った直後から、新関は町の中で頻ぴんと伊兵衛を見かけるようになった。伊兵衛は、まるで新関の回り筋を知っていて、わざとそうしているかのように、一日に二度も新関の眼に触れる場所に現れたりした。

 ………。

 伊兵衛が腰を上げるのを見て、新関も女中を呼んだ。

 四半刻ほど、伊兵衛は上品な手ぶりでお茶を飲んだが、その間、伊兵衛に近づいて来た人間はいなかった。それは新関が予想した通りだった。新関の推測に間違いなければ、伊兵衛はそういう自分を、新関に見せようとしているのだ。

 ………。

 伊兵衛は自分の家の垣根の中に入って、枝折り戸を締め、桟をおろそうとしている。その前を、新関はじろりと伊兵衛を眺めて通り過ぎた。伊兵衛は顔をあげなかった。

 芝蔵の店に入り、新関は芝蔵に、「いま、伊の字のおともをして一回り町を歩いてきたところだが、奴は、やっぱり何か企んでいるに違いねえぜ」と言う。

「さいですか。あっしも、おかめにも、この頃はちょいちょい行って張ってはみるんですが、どうもそういう匂いはしてこねえんでさ」

二~五 (押し込みまで数日の常連四人の思いと様子)

 二)

 前金を手にしている弥十は、娘のおやすの飲み過ぎだと言う説教にもかかわらず、ここ四、五日はせっせとおかめに通いつめている。

 娘夫婦と一緒に暮らす窮屈さを感じる弥十は、

 ―――ま、いいさ。金が入るまでの辛抱だ。

 五日後に迫った押し込みと、その二か月後にもらう大金のことを考え、心はとりとめなく膨らんでいる。

 三)

 仙太郎は、婚約者のおりえに、おきぬのことを知られていることを知り、「きっと別れる」と言わされ、五日後にせまった押し込みを、いまは怖いと思わなかった。百両の金が欲しい、とそれだけ考えていた。

 四)

「お静」

 伊黒は、静江をこんな裏店のあばら家で死なせたくはない、という気持に衝き動かされている。伊黒ははじめて金のことを洩らす気になった。

「すがすがしい場所で、うまい魚でも喰って、波の音を聞きながら養生するのだ。な、行くか」

 静江は黙って伊黒の顔を見た。

 静江は次第に食が細くなり、一日一日と衰えてきていた。

 喋ることは、まだ尋常だった。だが静江の中で何かがひっそりとと死にはじめているのを感じ、伊黒は暗然としたのであった。

 ―――静江は、間もなく死ぬだろう。

 伊黒はそう思っている。そして伊黒も、死を恐れていなかった。

 五)

 押し込みを明日に控えた夜も、佐之助は、小料理屋が多い町をおくみを求めて歩いたが、所在はわからなかった。途中、芝蔵の姿を見て、おかめも行かず家に帰る。

    「六」に続く

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