- 審決等の四も苦と倶であることを述べる -
審決(しんけつ) - 対象が何であるかをはっきりと認知すること。決定的に知ること。勝解の心所の定義でいわれる。
「苦根を既に意識とも相応すること有りと云ひて、審決の四も苦と倶なりというに、何の咎かあらん」(『論』第五・三十五右)
「述して曰く。前に已に苦根は意に在りと説きつるが如し。故に後の余の四も亦相応することを得。此れは他宗に就いて設として、五識には、欲等なしと説くが故に、苦根ありという義を説くなり」(『述記』第六本上・二十八右)
(「論。苦根既有至苦倶何咎 述曰。如前已説苦根在意。故後餘四亦得相應。此就他宗設説五識無欲等。故説自意識有苦根義」)
苦根は、すでに意識とも相応するものであると述べた。従って審決等の四も第六意識と相応するすることに、何の問題(過失)があろうか、あろうはずがない、と。
此れは正義を説く 「又、五識と倶なるにも亦微細の印境等の四つ有る義は、前に説けるが如し」(『論』第五・三十五右) 「述して曰く。此の説は正義なり。五識にも並びに有ると。已に欲は憂苦と相応すと説くが故に。唯、四は苦等と倶なりと説く。並に前に説けるが如し。微細の解等あり。五受と相応す」(『述記』第六本上・二十八左) (「論。又五識倶至義如前説 述曰。此説正義。五識並有。已説欲與憂・苦相應。故但説四與苦等倶。並如前説。有微細解等。五受相應 。」) 「斯に由って欲等は五受と相応す」(『論』第五・三十五右) (「論。由斯欲等五受相應 述曰。結政義也。此論上文逐難分別。」) このような理由に由って欲等の五は五受と相応することがわかるのである。 第三能変 別境 ー 余門を例す ー (「自下第六三性。第七三界。第八三學。第九三斷。第十漏・無漏。第十一報・非報等諸門分別。」) 『成唯識論巻第五』 『成唯識論述記巻第六本上』 終
『成唯識論』巻第五・別境の結びに、余門を例すとして、諸門分別が述べられます。
此の五(別境の心所である、欲・勝解・念・定・慧)をまた、性と界と学と断と漏無漏と報非報との等分別することは、理の通り思うべきである。
別境について、五門に分けて説明がされていました。
1. 列名釈義門
2. 遮遍行門
3. 独並門
4. 八識分別門
5. 五受分別門
これを以って別境の説明が終わり、巻第五は終わるわけです。その最後に、本来なら述べられなくてはならない第六門から第十一門などの諸門からの説明も、以上の五門と同じく、その理に由って考えるべきである、「理の如く思うべし」であるとして、諸門の説明は略しているのです。
導本奥書には
顕慶四年十一月二十五日於玉華粛誠殿三蔵法師玄奘奉 詔譯
飜経沙門基筆受
模写明詮僧都之導本 安和元年十月十六日点此巻畢
興福寺沙門真興と記されています。尚、この記載については若干の問題があると指摘されていますが、唯識を学ぶ上では支障があるわけではありませんので、省略します。歴史的な勉学しようと思われる方は、深浦正文著 『唯識学研究 下』(永田文昌堂発行)・富貴原章信著 『日本唯識思想史』(大雅堂発行)を紐解いてください。
次回からは『成唯識論』巻第六に入ります。
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