Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

ブランカニエベス/Blancanieves

2014-02-16 00:13:25 | 映画 は行
         
2012年/スペイン・フランス/104分
監督:パブロ・ベルヘル
音楽:アルフォンソ・デ・ビラリョンガ
出演:マリベル・ベルドゥ、ダニエル・ヒメネス・カチョ、アンヘラ・モリーナ、マカレナ・ガルシア、ソフィア・オリア、インマ・クエスタ、ホセ・マリア・ポー
ストーリー:1920年代のスペイン。天才闘牛士アントニオはある時、アクシデントに見舞われ、荒れ狂う牛に体を貫かれて瀕死の重傷を負う。それを観戦していた妻はショックで産気づき、娘カルメンを生むと同時に亡くなる。一方、全身不随となったアントニオは、不幸にも恐るべき悪女エンカルナと再婚してしまう。はたして継母となったエンカルナは好き放題を繰り返し、カルメンにも手ひどく虐げるのだった。やがて美しく成長したカルメンは継母によって命を狙われ、死にかけたところを小人闘牛士団の一行に救われる。カルメンは“ブランカニエベス(白雪姫)”と名付けられ、彼らと共に巡業の旅へ出ることに。そして、いつしか女闘牛士として人気者になっていくブランカニエベスだったが…。~allcinemaより

大雪だからブランカニエベス/Blanvanieves:白雪姫と言う訳では全然なく・・・。しかし、外は白い雪の世界そして雪と格闘する雪掻きの現実。雪の降る前に観られてよかった。

この作品を勧めてくれた友人の「妖しい世界」と言う一言がすべてを語っている気がする。
冒頭、オーケストラの音合わせに合わせて紅い幕が左右に開いたところから、あれよあれよという間に作品世界に導き入れらてしまった感じ。
モノクロで彩られる台詞の一切ない、だからこそ感じることができる豊かな世界に溺れてしまった。
台詞のない分、音楽がそれ以上にしゃべって、喋りまくる、けれどあくまで抑制が効いて決して出過ぎない。フラメンコと闘牛の掛け声が呼応してそれを聞いているだけでぞくぞくする。そしてフラメンコのパルマ(手拍子)が効果的で楽しさを印象付けたり、不安を煽ったり・・・。悲しみと苦しさ、父と娘の束の間の温かい時間、そして不条理が支配するやりきれない世界。
童話の内包する残酷さを改めて思い、下敷きとなっているグリム兄弟の「白雪姫」の残酷さを今一度、思い出す。
舞台をスペインに据え、闘牛士と継母と小人闘牛団そして毒りんごとで新たに甦った「白雪姫」という世界を旅した後に残るひりひりするような苦みが残る。

ところで、この作品を観て初めて闘牛場で観客がハンカチを振る意味がわかったのは発見だった。
そして、全く字が書けない人はサインをしなければならないところでは十字を書く、と何かの本で読んだ記憶があったのだが、十字を45°傾けて書類にサインしている場面を見て、なるほどこれが!!と思った。他に写真撮影の場面だとか初聖体拝領の日のドレスの色が黒く染まった瞬間など、印象に残る場面が多い作品だった。
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ペコロスの母に会いに行く

2014-01-16 22:27:07 | 映画 は行
             

2013年/日本/113分
監督:森崎東
原作:岡野雄一
出演:岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮、竹中直人、大和田健介、松本若菜、原田知世、宇崎竜童、温水洋一

ストーリー:長崎で生まれ育った団塊世代のサラリーマン、ゆういち(岩松了)。ちいさな玉ねぎ「ペコロス」のようなハゲ頭を光らせながら、漫画を描いたり、音楽活動をしながら、彼は父さとる(加瀬亮)の死を契機に認知症を発症した母みつえ(赤木春恵)の面倒を見ていた。迷子になったり、汚れたままの下着をタンスにしまったりするようになった彼女を、ゆういちは断腸の思いで介護施設に預けることに。苦労した少女時代や夫との生活といった過去へと意識がさかのぼっている母の様子を見て、彼の胸にある思いが去来する。~シネマトゥディより

新所沢Let'sシネパークで1週間限定で上映と最初は案内があったのが、評判がよいのでしょう、HPで作品情報を見ると終映日未定になっていた。
重いテーマなのだけれど、温かな視線でユーモアを交えて描かれる日々、それは、こまかいピースを丹念に見つめ、集めて一つの絵にしていくような、そんな一つ一つのピース、エピソードが愛おしく思えてくる・・・。
時間軸に忠実に生きていくゆういちたちと、そうした時間軸を自在に往ったり来たりするようになっていく母みつえの生きてきた道が長崎を舞台に交錯し展開する。そしてここに描かれていたのは単に介護の話ではなく、登場人物それぞれの人生であり、その中で一人一人が輝いていることに心打たれる。生きていることの意味、重さをしみじみ思う。
エンドロールで現実のゆういちと母みつえの写真が流れ、そこに写る二人の姿が作品中の二人とぴったり重なってずしんとなった。
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舟を編む

2013-05-06 22:53:38 | 映画 は行
        
2013年/日本/133分
原作:三浦しをん
監督:石井裕也
出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、渡辺美佐子、黒木華
『辞書は、言葉の海を渡る「舟」:ひとは言葉という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。』~チラシより

静かにしみじみと心に語りかけてくる作品。辞書作りにその人生をかけそして捧げて生きる人々の地味だけれど、ひたむきにひたすらに言葉を追い求める姿が美しい。そして、一冊の辞書の背後に広がる膨大な作業、言葉の海と日々挌闘し続ける辞書編集という仕事の奥深さを垣間見ることができた。常に意識的に言葉と接し、言葉を選び、語釈をしそれを積み上げていく。ゆったりした時間が流れ、全てが丁寧で、俳優然り、美術然りetc.etc.心地よい時間を過ごしていた。
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ベティー・ブルー/愛と激情の日々(デジタル・リマスター版)

2013-02-05 00:23:09 | 映画 は行
               
1986年/フランス/121分
原題:37°2 le matin
監督・製作・脚本:ジャン=ジャック・ベネックス
原作・脚本:フィリップ・ジアン
音楽:ガブリエル・ヤレド
出演:ベアトリス・ダル、ジャン=ユーグ・アングラード、ジェラール・ダルモン、コンスエロ・デ・ハヴィランド

チラシの遠くを見つめているような、あるいは見果てぬ夢を追い求めているような女性の表情にいたく惹かれて川越スカラ座で観た。
「製作25周年記念:デジタル・リマスター版」とのことだが、私はこれが初見。
しかし、25年前という「古さ」は全くない。愛することと生きることという根源的な問いを投げかけているからだろうか。それはまた性と生でもある、と明示しているように感じるのだ。
そしてエキセントリックに思われるベティーの行動が、人が誰でも心の奥底にひっそり持っているかもしれない狂気を眼前に暴いていることに気付かされ愕然とするのだ。
劇中何度も聞こえてくることになるゾルグの弾くピアノにベティが入れていた「♭シ」がハ長調とぶつかる音と安定をかき乱すリズムとで落ち着かない形容しがたい不安と緊張を観る側に与える。
余りにも繊細でかつ大胆、全身全霊で愛し、生を駆け抜けていったベティーの一途な姿に心を揺さぶられずにはいられない。
そしてまた切り取られる風景の一つ一つが忘れ得ぬ残像として残る。
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ブラック・ブレッド/Pa Negre

2012-07-12 00:10:03 | 映画 は行
                
2010年/スペイン・フランス/113分
原題:Pa Negre
監督:脚本:アウグスティ・ビリャロンガ
原作:エミリ・テシドール
出演:フランセスク・コロメール、マリナ・コマス、ノラ・ナバス、ロジェール・カサマジョール、リュイサ・カステル、マルセ・アラーナガ、マリナ・ガテイル、アリザ・クラウェット、ライア・マルール、アドゥアル・フェルナンデス、セルジ・ロペス

スペイン内戦を終えたばかりのスペイン・カタルーニャを舞台にカタルーニャの森で起きた事件を発端に畢竟、戦争とは何なのか、戦争によって人間はどうなるのか、ということを11歳の少年アンドレウの成長を通して描かれた作品。起きていることは全て彼の視点で描かれる。
小さな一つの村の中に存在する勝ち組と負け組、しかしそれで全てがぱきっと割り切れるほど世界は単純ではないことが直ぐに明らかになる。
政治、思想、社会の仕組みによって家族は翻弄され続ける。何が正義で何が真実なのかということもわからなくなる。信じていたものが次々に覆され、信じていたが故に裏切られた傷を抱くことになるアンドレウは望むと望まないに拘わらず変わらざるをえない。彼の変貌によって、戦争の持つ一つの恐ろしい断面を見ることになる。
原題の『Pa Negre』はカタルーニャ語。作品の中ではカタルーニャ語とスペイン語が使われているが、その使いわけ方、使われる場の違いに内戦がカタルーニヤにもたらした一つの面を見せられた気がした。
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ピアノマニア

2012-01-27 23:13:11 | 映画 は行
           
2009年/オーストリア・ドイツ/97分
原題:Pianomania
監督:リリアン・フランク ロベルト・シビス
撮影:ロベルト・シビス ジャージー・パラツ
編集:ミシェル・バルバン
出演:シュテファン・クニュップファー、ピエール=ロラン・エマール、ラン・ラン、ティル・フェルナー、クリストフ・コラー、アルフレート・ブレンデル、ジュリアス・ドレイク、イアン・ボストリッジ、リチャード・ヒョンギ・ジョー、アレクセイ・イグデスマン、クリストフ・クラーセン、ロビアス・レーマン、マリタ・プローマン、ルドルフ・ブッフビンダー

ストーリー:ピアニストを影から支える調律師にスポットライトを当てたドキュメンタリー。フランスの名ピアニスト、ピエール=ロラン・エマールが、バッハ晩年の未完の傑作「フーガの技法」を録音することになり、演奏するピアノにスタインウェイ社の逸品「245番」を選ぶ。スタインウェイ社の技術主任でドイツ人調律師のシュテファンは、バッハ時代の古楽器を研究し、エマールからの細かい注文にも丹念にこたえながらピアノをたくみに調整していく。究極の響きを求めるピアニストと調律師の共同作業を追う一方で、ラン・ラン、ティル・フェルナー、アルフレート・ブレンデルら、シュテファンに絶大な信頼を寄せる名演奏家たちの貴重なリハーサル風景も盛り込まれる。~映画.comより

ピアノという楽器にかかせないもの・・・ピアニストと調律師。どちらも求める音に対してとことん拘り続け、互いに真剣勝負を繰り広げる。
ぽーんと楽器から発せられる音を如何に理想の音にするか・・・。ピアノを挟んでの丁々発止のやりとり、そしてピアニストからの要求に対して全ての神経を音に集中させて孤独に音と向き合う調律師の禁欲的で求道的な姿。それはまたピアニストが音を紡いで音楽を高みに羽ばたかせる姿と重なる。
素晴らしいドキュメンタリー作品
公開されてすっ飛びで観に行ったのだが、60席の小さな劇場はたまたまメンズデーとも重なり男性客が8割でほぼ満席状態。こんなに調律師に興味のある人々が、というかピアノそしてクラシックに興味のある観客が多いことが素敵に思えた日でもあった。

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ブリューゲルの動く絵

2012-01-20 00:42:57 | 映画 は行
          
2011年/ポーランド・スウェーデン/96分
監督:レフ・マイェフスキ
出演:ルトガー・ハウアー、シャーロット・ランプリング、マイケル・ヨーク
原題:The mill and the cross

ウィーン美術史博物館が誇るブリューゲルコレクションの逸品《十字架を担うキリスト》は、ゴルゴダの丘へ十字架を背負い歩くキリストの受難を描いた名作。ブリューゲルは16世紀のアントワープを舞台に聖書の物語を描くことで、いつの時代にも通じる人間の愚かな振る舞いへの警鐘をこめた。映画では絵画にはない人々の日々の営みを暖かく見つめ、私たちの目前に、生きた物語としてブリューゲルの世界を蘇らせている。~チラシより

新年会を兼ねて友人とバウスシアターに『ブリューゲルの動く絵』を観に行った。既にこの作品を鑑賞していた別の友人から、単にブリューゲルの絵が動くのではない作品だということ、その内容は題材にされている絵が《十字架を担うキリスト》ということで宗教的だったという感想を聞いていた。
そして実際に劇場で観てみると、何と言うか・・・「絵が動く」ということをどこか牧歌的というかアニメーションのように想像していたのが全く違う。ルネサンスの時代に生きていた人間がその絵の中に描かれているままの格好で動くのである。そしてその時代の中に同時進行で受難劇が重なるのだが、それはまさにブリューゲルがこの絵で描いていたことを観ている側に解き明かす、といった感じ。当然のことながら宗教、キリスト教の世界が繰り広げられる。彼の作品にはいたるところに寓意が込められているということを再認識しながら観ていた。風の音、風車の回る音などの自然が発する音、そして人が生活する際に自然に出る音といった「音」が耳に残る。(音楽は・・・う~ん??取ってつけたようで浮いてる感じだったなあ)
人はいつの時代にあっても、また不条理な世界、不合理な世界にあっても、昔も今も全く変わらず生き死んでいくのだなあ~。ここで描かれたルネサンスの時代と現代との「生と死」の大きな違いってないんじゃないか、と。
ところで風車小屋の恐ろしく長く続く階段の美しさが印象に残ったのだが、一緒に行った友人があれは岩塩坑で有名なポーランドのヴィエリチカだと教えてくれた。
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瞳は静かに

2011-12-29 23:52:55 | 映画 は行
             
2009年/アルゼンチン/108分
原題:Andrés no quiere dormir la siesta
監督・脚本:ダニエル・ブスタマンテ
出演: ノルマ・アレアンドロ、コンラッド・バレンスエラ、ファビオ・アステ、セリーナ・フォント
予告編:YouTube
ストーリー:1977年、軍事政権下のアルゼンチン。母親を事故で亡くし、祖母のオルガ(ノルマ・アレアンドロ)と暮らし始めた8歳のアンドレス(コンラッド・バレンスエラ)。遺品の中から反体制派のビラが見つかるが、「子どもにはわからない」とオルガたち大人はアンドレスをますます支配しようとする。しかし、繊細な年ごろのアンドレスは次第に大人に不信感を抱くようになり……。

私はアルゼンチンという国の歴史について殆ど知らない。ただ1977年に軍事政権下にあったこの国を一人のアンドレアスという子どもの目を通して描いた作品ということと、スペイン語の映画ということで観た。
作品全体を覆っている重苦しい空気、見えない圧力の強さに息苦しくなる。本当は何が起こっているのかは一切知らされずにいるアンドレアスの瞳に映る彼にとっての真実と、嘘で固められた現実の世界、そこでびくつきながら生きている大人たち。母と兄と3人で暮らしていたアンドレアスの瞳が、母の死によって父と祖母のもとで暮らし始めてからはっきり恐ろしいほどに変化していく。言いようのない不安、本当のことを知らされていないという相手に対する不信感をアンドレアスと共有しながら、彼のその変化を見ていた。
殆どパンフレットは買わないのだが、アルゼンチンについて知りたかったので購入した。その中で作家の星野智幸さんが書いていた一文に、自分が感じていた不安の正体の一つはこれだったのか、と深く納得し、また今一度作品を味わい直していた。

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BIUTIFUL/ビューティフル

2011-09-07 22:57:45 | 映画 は行
             
原題:Biutiful
2010年/スペイン・メキシコ/ 148分
監督・原案:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演: キャスト: ハビエル・バルデム、マリセル・アルバレス、ハナ・ボウチャイブ、ギレルモ・エストレラ、エドゥアルド・フェルナンデス、ディアリァトゥ・ダフ、チェン・ツァイシェン、ルオ・チン、ルーベン・オカンディアノ
ストーリー:スペインのバルセロナに暮らす男・ウスバルは、妻・マランブラと別れ、男手一つで二人の子どもを育てていた。彼はアフリカ系や中国系の不法移民たちへの仕事の口利きや、警察への仲介などで収入を得ている。ある日、彼は病院で自分が末期ガンで、余命二ヶ月の宣告を受ける。しかし、そのことは誰にも告げず、子どもたちに少しでも金を残そうとしていた。マランブラとも再び同居を始め、彼は死の準備を整えようとするのだが…。~goo映画より

これは絶対に観たいと思っていたのだが、ようやく吉祥寺のバウスシアターで観ることができた。
重いというのは覚悟していたのだが、その重さもさることながら、切なさ(そんな一言では表せないのだが)に胸が詰まった。死期が迫った時、人間はどう生きるか、そしてどう死んでいくのかという問いに対して、ではここでウスバルはどう生きたのか、どう死んでいったのか、と。彼は生き抜くのだ、家族のために、抱えている山積みの問題をなんとか整理するために、奔走する。とにかくウスバルを演じるハビエル・バルデムを始めとして彼の二人の子ども、別れた妻、不法移民の人々etc.etc.といった全ての登場人物が素晴らしい。
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ブラック・スワン

2011-05-16 23:31:02 | 映画 は行
             
2010年/アメリカ/108分
監督:ダーレン・アロノフスキー
キャスト:ナタリー・ポートマン、バンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー

大抵の作品の場合、エンド・ロールが流れている時に立ち上がって席を後にする観客が必ずいるのが、この作品に関しては珍しくも劇場に灯りが入るまで立ち上がった観客の姿はなかった。見事に全員が座っていたのだった・・・みんな、動けなくなっちゃったのかな?など思ったり。
現と幻の境界が次第次第に曖昧になり、自分を追い詰め、追いこんでいく二ナの鬼気迫るというか狂気の世界に幻惑された。バレリーナ・ニナを演じたナタリー・ポートマンを始め、二ナの母親、ライバルのリリーも素晴らしかった。そして映像の美しさ、怖さが一体となった「白鳥の湖」の舞台の初日は圧巻だった。しかし、なんでだろう?作品全体を振り返った時、私は映像のインパクトの強さの割に感動が深まらなかった気がする・・・不思議。        
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バーレスク

2011-01-31 23:51:47 | 映画 は行
                 
               この声で、夢への扉を開けてみせる
2010年/アメリカ/100分
原題:Burlesque
監督・脚本:スティーブ・アンティン
出演:シェール、クリスティーナ・アギレラ、エリック・デイン、カム・ジガンデイ、ジュリアン・ハフ、アラン・カミング、ピーター・ギャラガー、クリステン・ベル、スタンリー・トゥッチ

話の展開自体は、ある意味とおってもありきたりなのだけれど、それを補って余りあるのが全編を彩る「歌」そして「踊り」
アギレラの歌とシェールの歌に酔いしれ、散りばめられ蠱惑的な踊りにすっかり心奪われる。それが全て、それで満足~

吉祥寺のバウスシアターに置かれていた『バーレスク』の迫力ある看板。"IT'S A SHOWTIME"の文字がネオンでチカチカ光ってました!
                 
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ベンダ ビリリ!/BENDA BILILI

2010-11-04 00:44:11 | 映画 は行
             
2010年/フランス/87分
監督:ルノー・バレ&フローラン・ドラテュライ
出演・音楽:スタッフ・ベンダ・ビリリ

ストーリー:映画の始まりは、2004年。コンゴを愛する2人のフランス人映像作家が、ある日、キンシャサの路上で、ビリリの音楽を偶然耳にしたことから始まった。戦争による混乱と貧困でカオスとなったキンシャサで、障害を持ち、家がなく動物園で眠り演奏する。そこはまるで世界のドン底。しかしその音楽は豊かに輝き、メンバーはとことん前向きだった。2人はビリリに魅了され、彼らのアルバム制作とドキュメンタリー映画の制作を決意。それから5年。数々の困難や挫折を乗り越え、2009年にアルバムが世界発売。わずか数カ月後には、何と大々的なヨーロッパツアーまでが実現。彼らの音楽、彼らのパフォーマンスは、出会った人すべてに感動を呼び起こし、それはまさしく奇跡だった。映画は2009年夏の、その成功までを描いている。「ベンダ・ビリリ」、それはリンガラ語で、「外側を剥ぎ取れ」という意味。障害はあろうとも魂は自由なのだ、外側ではなく内面を見よ!彼らの音楽が、彼らの生き方が伝える強いメッセージがここにある。(公式HPより)

穏やかな晴天に恵まれた文化の日に友人と吉祥寺デート。なんちゃって
二人で大分前から、いい映画を観たいね、と話していたところバウスでこの『バンダ・ビリリ!~もう一つのキンシャサの奇跡』が公開されることを知り、この日に観ることを決めていたのだった。
「スタッフ・ベンタ・ビリリ」が10月に初来日し各地でコンサートをしているのは勿論知っていた。どころか、激しく行きたかったっ!!でも、予定が合わず諦めた、という経緯もありこの日をすんごく楽しみに出かけたのだった。
作品中で流される音楽は無論のこと、ドキュメンタリとして映画作品として出色の出来!!素晴らしかった~
昔のザイール、現在のコンゴ民主共和国の混沌とした現状の中、音楽で結びつき、音楽を力として世界に羽ばたく彼らの5年間の軌跡を丹念に描いている。彼らの音楽が歌詞と共に幾つも演奏される。昨日トンカラ(段ボール)の上で寝る、明日はマットレスの上で寝るかもしれない、マットレスの上で寝ても、今日はトンカラの上で寝るかもしれない、と歌う。親たちよ、我が子のためにポリオのワクチンを飲ませてやってくれ、と歌う。その詩はどれもリアリティーに溢れ、あくまで詩的、そして奏でられる音楽はリズミックで陽気だ。メンバーの一人一人が丁寧に描かれるが特にリーダーのリッキーと彼が拾い上げたストリートチルドレンのロジェとの関係、そしてロジェの驚くほどの成長ぶりに目を見張らされる。

写真は愛知県「長久手町文化の家」での来日公演の折りに展示されていた彼らが使っている車椅子。この公演を聴きに行った方から頂きました。
      
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パリより愛をこめて

2010-06-05 00:04:20 | 映画 は行
               
2010年/フランス/95分
原題:FROM PARIS WITH LOVE
監督:ピエール・モレル
原案:リュック・ベッソン
出演:ジョン・トラボルタ、ジョナサン・リース=マイヤーズ、エリック・ゴードン、リチャード・ダーデン、カシア・スムトゥアニク

予告編で観た血の気の多いスゴ腕諜報部員のジョン・トラボルタに惹かれた。
あっけにとられ引き込まれるアクション、そしてサスペンス!チャーリー・ワックス(ジョン・トラボルタ)とジェームズ・リース(ジョナサン・リース=マイヤーズ)の組み合わせが何とも面白く、全編にわたってのスピードとノリのよいリズムにある種の爽快感を覚える。
ワックスが突き止めたテロ組織のアジトで、隠し撮りされたリースの写真を見つけた場面から、な~るほど!と先が仄見えるのだけれど、だからといってそれは興を削ぐことにはならず、やっぱりそうだったか~!!と事実が分かった時に思えたのだ。
それにしても、ジョン・トラボルタに圧倒された。
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抱擁のかけら

2010-02-13 00:27:23 | 映画 は行
                
2009年/スペイン/128分
原題:LOS ABRAZOS ROTOS
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョ、ホセ・ルイス・ゴメス、ルーベン・オチャンディアーノ、タマル・ノバス

観たのがスペイン語の次の日だったので、どこかでちらっと勉強の続きのような気分もあったのですが・・・でも、やっぱりそこはアルモドバル作品でした!!
ただ、かなり評価は分かれそうな気がします。アルモドバル監督作品が好きなら、それなりに、またペネロペを始めとする俳優陣が好きなら、そりゃもう堪らなく・・・でもどちらもそこそこなら、やっぱりそこそこなんじゃなかろうかと。色んな要素の詰め込み過ぎで、映画自体がとおっても説明的になってしまっている感はぬぐえず、それが散漫な印象を与えてしまって・・・。それは一緒に観た友人がずば~っと指摘してましたが、その通りだと同感しましたもん。
話の筋は陳腐なほどに、ある意味メロドラマの王道~!ただ、そこに何がしかのカタルシスを感じられるかどうかで、受け取る側の印象が変わってくる気がします。私は、やっぱね~、と思いつつそう思えたことで満足感を味わえたのですが。
しかし、散りばめられた色彩の鮮やかさにはっと胸を突かれ、その色の集合体も断片も忘れ難く心に残りました。特に車内の二人のフィルムに重なる手が切なく、けれど探しあてたという確信にも満ちているようにも見えて・・・。
それにしても劇中で新編集されていた『謎の鞄と女たち』、観てみたい~!!
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バグダッド・カフェ[ニュー・ディレクターズ・カット版]

2009-12-15 23:56:22 | 映画 は行
               
  20年たった今も、彼女たちはあなたを呼んでいる。
         名曲『コーリング・ユー』とともに、
         砂漠に舞い降りた天使
         今も多くの映画ファンを
         魅了し続けている
         80年代の傑作を再びスクリーンで!(チラシより)
2008年/ドイツ/108分
監督:パーシー・アドロン
出演:マリアンネ・ゼーゲブレヒト、CCHパウンダー、ジャック・パランス
主題歌:「コーリング・ユー」ジュヴェッタ・スティール

テーマ曲の『コーリング・ユー』が流れた時に、ああ!!この映画のテーマ曲だったのか!!と初めて知った。映像とこの曲が一つになって、すうぅ~っと心の奥に語りかけられているような気持ちになる。
名作だという話は耳にしていても、未だ観たことはなく、ならばDVDで、と思ってもレンタル・ショップで目にしたこともなく・・・。それが公開から20年を記念してニュー・ディレクターズ・カット版で公開されているということで、勇んで劇場に足を運んだのだった。
観に行ってよかった!ジャスミンとブレンダを軸にバグダッド・カフェに集まる人々それぞれが変で、それでいて愛おしい。カフェの中ではいつも流れている何ともいえないバッハの平均律、しかもプレリュードばっかり。登場してくる人々が少しずつ少しずつ、自分でもそうと気付かないほどひっそりと変わっていくように、その音は変化していくのだ。そしてそれが最後にはなんて素晴らしく楽しいの!!と浮き立つ音楽に変わっていることに目を見張る。
これが20年前に公開されたとは・・・。年月によって決して色褪せることのない普遍の人と人との間に流れる様々な思いを鮮やかに描いているからなのだろうか。人間、捨てたもんじゃない、と
ところで友人と『ドゥーニャとデイジー』を観た後、次にこの作品を選んだことが不思議な偶然に思えて、それも嬉しくわくわくしていた。
♪Calling you♪
あ~、この場面はこういう会話が交わされていた。あ~、ここではこんな風だった・・・などなどがどっと押し寄せ、思い出されて・・・。

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