Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

夜明けの祈り

2017-11-03 22:07:46 | 映画 や行
         
2016年/フランス,ポーランド/115分
原題:LES INNOCENTES
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ルー・ドゥ・ラージュ(マチルド)、アガタ・ブゼク(シスター・マリア)、アガタ・クレシャ(マザー・オレスカ)、バンサン・マケーニュ(サミュエル)、ヨアンナ・クーリグ
ストーリー:1945年12月、ポーランド。赤十字で医療活動に従事するフランス人女性医師マチルドのもとに、ひとりの修道女が助けを求めに来る。彼女に連れられて修道院を訪れたマチルドは、ソ連兵の暴行によって妊娠した7人の修道女たちが、信仰と現実の間で苦しんでいる姿を目の当たりにする。マチルドは修道女たちを救うため激務の間を縫って修道院に通うようになり、孤立した修道女たちの唯一の希望となっていく。~映画.comより

この作品を観てからほぼ1ヵ月経ってしまっているのだが、これを観たことは残しておこうと思った。
1945年のポーランドで何が起こったのか。第二次世界大戦直後の彼の国で歴史の波に翻弄され、混乱する世界が登場人物一人一人の目を通して描かれる。
その時にはそれが最善だと、それぞれが思い込み行動していたのだが、果たしてその後帰国したマチルドはどうなったたのだろう、同僚の医師サミュエルの立場は、また、この後共産主義の中に呑み込まれていったポーランドにおいて修道院、しかも女子修道院というものが果たして存在を許されたのかどうか、そして修道女たちは・・・etc.etc.
観る側にここで起こったことは起こったこととして突きつけ、そしてどうなっていくのだろう、と投げかけてくる。
一緒に行った友人と、観終わった後、重くなった心を抱えながら、しかし佳品だったねと言いながら帰った。
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屋根裏部屋のマリアたち

2013-01-21 00:28:06 | 映画 や行
                
2010年/フランス/106分
原題:Les femmes du 6eme etage
監督:フィリップ・ル・ゲイ
脚本:フィリップ・ル・ゲイ、ジェローム・トネール
出演:ファブリス・ルキーニ、サンドリーヌ・キベルラン、ナタリア・ベルベケ、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ベルタ・オヘア、ヌリア・ソレ、コンチャ・ガラン、マリー=アルメル・ドゥギー、ミュリエル・ソルヴェ、オドレイ・フルーロ、アニー・メルシエ、ミシェル・グレイゼル
ストーリー:1962年のパリ。証券会社を経営するジャン=ルイと妻シュザンヌは、新たにスペイン人メイドのマリアを雇う。彼らの豪奢なアパルトマンの屋根裏には、スペインから出稼ぎに来た女性たちが肩寄せ合って暮らしているのだが、その劣悪な生活環境を初めて知ったジャン=ルイは即座に改善の手を打ち大いに感謝される。ある日、顧客の未亡人との浮気を疑うシュザンヌに追い出されたジャン=ルイは屋根裏部屋で暮らし始める。~goo映画より

今年初めての映画作品は『屋根裏部屋のマリアたち』、川越スカラ座で鑑賞。
作品中ではフランス語が主なのだけれど(舞台がパリなので)スペイン語も沢山聞けてその交わり具合も楽しめる。
6階の屋根裏で暮らすスペイン人女性たちの背景は様々だけれど、1960年代のスペインでのフランコ独裁について作品中できっちり描かれている。そういう背景を背負いながら、でも彼女たちはそれぞれの個がはっきりしていてどの一人も興味深く、それでいてお互いに助け合い、辛い時には慰め合い、そして前を向いている。そのタフさが気持ちよく、同時に女性としての可愛らしさを感じる。何とも爽やかな後味が残る作品で、2013年の幕開けにふさわしい~と一人喜んで帰宅した。

ところで、私は劇場の前から2列目に座ったのだが、ここは1列目と2列目の間に長い机がある。
「会場内で食べてもいいですか?」
と劇場スタッフに尋ねたところ
「どうぞどうぞ~」
とのことで、私は持参のサンドイッチを前の机に置きそれをぱくぱく食べてご満悦だったのだが、隣に座っていたご夫婦はお弁当と携帯用の小さな魔法瓶(サーモ・マグのような)を自宅から持参されて仲良くお食事タイムを楽しんでましたなんか、そういう光景が似合う劇場なのがいいです~!!

以前行った時に会場内の写真を撮っていたのを思い出した
川越スカラ座の記事⇒こちら
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闇の列車、光の旅

2010-07-08 00:17:37 | 映画 や行
                
2009年/アメリカ・メキシコ/96分
原題:SIN NOMBRE
監督・脚本:ケイリー・ジョージ・フクナガ
出演:エドガール・フローレス、パウリナ・ガイタン、クリスティアン・フェレール、テノッチ・ウエルタ・メヒア、ディアナ・ガルシア、ルイス・フェルナンド・ペーニャ、エクトル・ヒメネス

突きつけられる厳しい現実に胸をえぐられ、重いものに胸ふさがれる。これが現在の中米の一つの現実なのだと。
ここで描かれる、ホンジュラスからアメリカを目指す不法移民の貨物列車の屋根に乗っての旅。アメリカを目指して移民の旅をするサイラと彼女の父と彼女の叔父、そして彼らが出会うメキシコのギャング団の一員として先の全く見えない生活を送っているカスペル(ウィリー)。彼の所属するMSと呼ばれるギャング団のおぞましさ!
そんな出口の見えない世界から、偶然一緒になった彼らは光を求めて命がけの旅に出る。
常に死と隣り合わせの過酷な旅、貨物列車の屋根から眺める風景の美しさと裏腹の現実に慄然としつつこの先にどうか光があるようにと彼らと共に旅をしていた。
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夜顔@EUフィルムデーズ2010

2010-06-21 00:12:37 | 映画 や行
              
2006年/ポルトガル=フランス/70分
原題:Belle Toujours
監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
出演:ミシェル・ピコリ、ビュル・オジエ、リカルド・トレバ、レオノール・バルダック、ジュリア・プイゼル

東京国立近代美術館フィルムセンターで開催されていたEUフィルムデーズ2010。日替わりで興味深い作品が、数えてみると22作品、並んでいたがその中で鑑賞したのは「昼顔」から38年後に再会したアンリとセヴリーヌの話「夜顔」。

観終わって友人が開口一番、
「あ~、こんな美しいフランス語久しぶりに聞けて嬉しい!最近のフランス映画のフランス語は全体すごく早口でずずっとつながってる感じだったから、余計に美しさが際立って感じられた」
そういえば、字幕見ながらスペイン語だとこう言う、この単語は発音の違いか、とか聞こえたのは、そうか、そういうことだったのか!!と納得。
とにかく、会話が密で、空気と共に会話が濃くなるような、会話が纏わりついてそれが息苦しくなるような感じがする。そして、ふっと会話が途切れた時間が、会話のない会話を交わしているうな、意味のない沈黙がないような・・・。友人曰く、フランス人にとってレトリックは人生で最重要、にこれまた深く納得。
そんなことを心に留めながら時間が経って思い出す度、いつまでも喉に小さな魚の骨が刺さっているという幻影、もうとっくにそこにはなくなっているのに、を見てしまうような、不思議にひりりとした感触が残る。
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屋根裏のポムネンカ

2009-09-28 00:11:51 | 映画 や行
              
2009年/チェコ、スロヴァキア、日本/75分
監督:イジー・バルタ
脚本:エドガル・ドゥトカ、イジー・バルタ
撮影:イヴァン・ヴィート
美術:イジー・バルタ
音楽:ロマン・パヴリーチェク

芸術の国チェコで、65年ものあいだ親しまれてきた人形アニメーション。
待望の最新作は、屋根裏にこっそり住んでいる“ガラクタ”たちのフシギな世界!(チラシより)

夏の真っ盛りに観た、まさに夏の夜の夢のような、冒険譚。演じるのはチェコからやってきた、屋根裏の住人たち、ただし、みんな人形。その屋根裏の世界に人間が入ってくる瞬間も自然で面白く・・・人間が現れると、それまで活き活き動いていた人形が息を止め人形にもどってしまう、その魔法が消えてしまう一瞬が、いかにも脆くて儚く。そして、底辺に流れるひりひりする風刺が物語の進行とともにずしんと利いてくる。

「おもちゃのチャチャチャ」・・・子供の頃、よく思った。おもちゃが夜、箱を飛び出して遊ぶんだったら、きっと私は寝ないでずっと目を覚まして、遊ぶおもちゃを見てやろう。そして遊びにきたおもちゃの中に好きなのがいたら、つかまえてもう帰さない、自分のにしちゃお、って。
ふと、そんなことも思い出させた「屋根裏のポムネンカ」だった
コメント (2)
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雪の女王(新訳版)/鉛の兵隊

2007-12-20 00:10:27 | 映画 や行
               *公式サイト
「雪の女王(新訳版)」
1957年/ロシア/65分
監督・脚本:レフ・アタマーノフ
原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン
原題:СНЕЖНАЯ КОРОЛЕВА
声の出演:ヤニーナ・ジェイモー、アンナ・カマローワ、マリヤ・ババローワ、ガリーナ・コナーヒナ
              
「鉛の兵隊}
1970年/ロシア/20分
監督:レフ・ミリチン
原作:H.C.アンデルセン
音楽:Y. フランケリ
原題:СТОЙКИЙ ОЛОВЯННЫЙ СОЛДАТИК
声の出演:M.ヴィノグラードワ、A.コンソフスキー、S.ツェイツ

「アンデルセン原作の名作アニメーション『雪の女王』がリマスター版として再びスクリーンに帰ってきた。・・東映の社員だった宮崎駿監督が、アニメーションを作ろうと決心したきっかけとなった作品と言われている。」<goo映画>解説より

別にコアなアニメファンではないけれど、やっぱりロシア語でのロシア・アニメ、それも50年前の作品~、観てみたいじゃないですか!しかし、このジブリ美術館と立川シネマシティとのコラボレーションシリーズはほんとに素敵な作品を上映してくれる

とても50年前の作品とは思えない美しさ。そしてそこに流れるロシア語の流麗な響き!靴を脱ぎ裸足になることで、勇躍カイが囚われた氷の国、死の国でもあるだろう、へ一途な思いだけを抱いて旅するゲルダ。雪の女王は冷たく白く・・・そう、ある点でナルニア国の白い魔女のようにも見える。冷たい氷を融かすのはゲルダのカイを取り戻したいという思い、愛だけ。
オルフェオとエウリディーチェでは死の国に囚われたエウリディーチェを結局オルフェオは取り戻せなかった。イザナギは黄泉の国に行ってしまったイザナミを取り戻せなかった。
しかし、神話の世界から遠く離れてアンデルセンの童話ではゲルダはカイを取り戻す・・・興味深い~。

そして、「鉛の兵隊」、素晴らしかった悲劇的であるのに、愛の究極の姿を描き出し、しかもそれが音楽劇で展開するアニメーションの世界。濃密な20分を堪能する。

観たのは公開初日ではなかったのだけれど、美味しいチョコレートいただいちゃったよ!!
           
コメント (6)
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4分間のピアニスト/VIER MINUTEN

2007-11-30 23:07:18 | 映画 や行
              *公式サイト
2006年/ドイツ/115分
原題:VIER MINUTEN
監督・脚本:クリス・クラウス
出演:ハンナー・ヘルツシュプルング、モニカ・ブライブトロイ、スヴェン・ピッピッヒ、リッキー・ミューラー、ヤスミン・タバタバイ

予告編も何度か目にし、そしていつだったか偶然点けたTVドイツ語講座でもこの作品を紹介しているのを見かけた。だが、如何にも重そうで辛そうで、しかもピアノがメイン、観ようかどうしようか迷っていたのだけれど、結局覚悟を決めて観てきた。
予想を裏切らず、重くて辛くて、そしてピアノが作品の骨子となっていた作品だった。音楽に内在する力、そして音楽によって、音楽によってのみ解放される魂について改めて考えさせられる。

ピアノ教師として刑務所にやってきたクリューガー、そして問題児のジェニー、それぞれが心に重荷を背負って生きている姿が痛々しくて、でもそれを超えてダイレクトに響いてくる音楽に心震える。
モーツアルト、ベートーヴェンなど色々なピアノ音楽が画面から流れ出すが、何度も流れ耳に残るのはシューベルトのD.935-2の即興曲。
そしてそして・・・あのシューマンのコンチェルト!!ジェニーの解放された魂の歌が響く時・・・もう圧巻~♪もう満足~♪
コメント (4)
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