Casa de lápiz:鉛筆庵

鉛筆庵に住む鍵盤奏者が日々の生活の徒然・音楽などを綴ります。

バーン・アフター・リーディング

2009-04-30 00:19:06 | 映画 は行
         
2008年/アメリカ/96分
原題: BURN AFTER READING
監督・製作・脚本:ジョエル・コーエン 、 イーサン・コーエン
出演:ブラッド・ピット、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、フランシス・マクドーマンド、ティルダ・スウィントン

ストーリー:CIAの機密情報が書き込まれた1枚のCD-ROMを、勤務先のフィットネスセンターで拾ったチャド(ブラッド・ピット)とリンダ(フランシス・マクドーマンド)。そのころ、元CIA諜報員のオズボーン(ジョン・マルコヴィッチ)は、機密情報の紛失にうろたえていた。一方、オズボーンの妻ケイティ(ティルダ・スウィントン)は、財務省連邦保安官ハリー(ジョージ・クルーニー)と不倫中で……。(シネマトゥデイより)

大笑いするのではなく、とにかく終始にんま~り、にかにか、くくくっとしてしまう。
出演している俳優たちの豪華なこと、その話の展開の意外なこと、とにかく目を離させない。(思いがけない表情が見えて・・・くききっ
絡み合う人物と次々起こる予期せぬ出来事が複雑に組み合わされて、それはボタンを掛け違えて、それを最後まで誰も直せないまま、あれよ、あれよと言う間に事は全ての人々の思惑を越えて進んで行ってしまうのが何とも可笑しくて・・怖い!?(笑)
絡み合うと複雑な様相を呈するのに、一人一人はみんな自分に対して正直と言うか一直線、しかもその直線があっち向いたりこっち向いたり、てんでんばらばら。その直線が刀が空中ではっしと渡り合うような緊張(?!)に、にんまりしながらummm・・となる。
破綻しそうで最後まで話を保っていってしまう、というのが凄い!!面白かったなぁ!
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ホルテンさんのはじめての冒険

2009-03-25 00:18:29 | 映画 は行
               
2007年/ノルウェー/90分
原題:O'HORTEN
監督・脚本・製作:ベント・ハーメル
出演:ボード・オーヴェ、ギタ・ナービュ、ビョルン・フローバルグ、エスペン・ションバルグ

        勤続40年の生真面目な運転士、ホルテンさん。
       定年退職日に人生初の遅刻をしたから、さあ大変!
          はたして彼を待ち受ける運命とは?(チラシより)

ベテラン運転士ホルテンさんが運転するノルウェーの首都オスロと第2の都市ベルゲンを結ぶ”ベルゲン急行”が何処までも続く雪原を走っていくその勇姿に先ず心奪われる。目が痛くなるほどの「白」の世界を疾走する急行列車、はあぁ~、素敵だぁ~!
ハンで押したような正確な毎日、それがホルテンさんの生活だ。彼は朝早く起き、お弁当を作り、水筒にコーヒーをつめ、出かける前には小鳥のかごにふんわりとカバーをかけて職場に向かう日々を退職する67歳まで続けてきた。ひょっとしたらこうした規則正しい日々が退職後も永遠にずうっと続くような気がしていたのかも。
そんなホルテンさんに思いがけない転機が訪れたのは、なんと!退職するその日。
そこから始まる変化に次ぐ変化の日々、それは彼が望んでそうなったのではなく、いつの間にかその変化の渦の真ん中にいることになっていたのだけれど・・・。その中にいるホルテンさんはその変化に最初はどこか戸惑いながら、その変化の中でどんどん変貌していくのだ。「人生は手遅ればかりだが、逆に考えれば何でも間に合う」と言うシッセネールの言葉はホルテンさんに、またスクリーンのこちら側にも温かく響く。そしてここで出会う人々、遭遇する出来事に何度クスクスさせられたことだろう!
スキーのジャンプ台に立つホルテンさんの姿に向こうに見える街の灯を、ちょっと怖いけれどわくわくすると彼の目と同化したような気分になって眺めていた。ラストで黒い制服を脱ぎ捨てて、犬のモリーとともにベルゲン駅に降り立つホルテンさんの素敵に素晴らしい笑顔がいつまでも心に留まる
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ハックル

2009-03-08 23:49:32 | 映画 は行
              
2002年/ハンガリー/75分
監督・脚本:パールフィ・ジョルジ
出演:バンディ・フェレンツ、ラーツ・ヨージェフネー、ファルカシュ・ヨーゼフ、ナジ・フェレンツ、ヴィラーグ・フェレンツレー

*「ハックル」=ハンガリー語で「しゃっくり」の音を意味する。

天地を逆にしてもちゃんと読めちゃうこのチラシ、不~思議、不思議いつか観られるかも・・・と取っておいてよかったなぁ。
で、やっぱりチラシ同様何とも不~思議世界が展開する。全編通じて響くチェクリックおじいさんのしゃっくりの音。そこにハンガリーの小さな村の風景と出来事が映し出される。あまりにも淡々と進むので逆に目が離せないという不思議さ。いや、変化は、というか事件は起きているのだけれど、それも何だかこの村での日常のように思えて・・・って、村の男たちが消えていくんですけど
一切、字幕がなく最後の最後に結婚式で歌われる歌だけに字幕がつくというのが、意味深で、痛烈なブラック・ユーモアのようであり、そして事件の答えのようでもあり・・・。不思議に面白い作品でした!

ところで思い出した~!
ハンガリー語でしゃっくりの音が「ハックル」ならしゃっくりは「ホケトゥス/Hoquetus」・・・ハンガリーの作曲家クルタークの4手連弾にこの題名の作品があって演奏したことがあるんです。これたいそう短いのですが、面白い曲です。
           
ハンガリーでは「しゃっくり」って何がしかの特別な意味があるのかと、つい考えてしまう。
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パリ/PARIS

2009-02-10 00:32:08 | 映画 は行
                
2008年/フランス/129分
監督・脚本:セドリック・クラピッシュ
出演:ジュリエット・ビノシュ、ロマン・デュリス、ファブリス・ルキーニ、アルベール・デュポンテル、フランソワ・クリュゼ、カリン・ヴィアール

『みんなどこか寂しくて、哀しくて、それでも誰かを愛したい、誰かと繋がっていたい---』(チラシより)

パリに行ったことはなくても、この作品を観ているとパリの街を巡っているような気分になる。そしてピエールが彼のアパルトマンのベランダからその眼下に広がるパリの街を眺めている時は一緒にその街を見下ろしていたのだった。様々な表情を見せるパリ。夜にはエッフェル塔がクリスマス・ツリーのように光り黒い闇の中にふんわり浮かび上がっているのが印象的だった。
そのパリの空の下に暮らす人々の織りなす様々な人間模様がここでは描かれる。そのそれぞれがどこかしらで繋がっている。それは温かくて、けれども誰でもが死を背負いながら生きていくのが人間だという現実を目の前に示してもいるのだ。
一緒に行ったフランス語が堪能な友人が、最初の場面でピエールの姉のエリーズが丘の上からパリの街並みを見ながら「あれは?」という子どもたちの質問に「世界よ」と答える場面で彼女が普通ならmonde(英:world)というところをl'universe(英:universe)と答えてたのが、すごく奇異な感じがした、と言う。けれど映画が進むにつれて互いが繋がっていくのを見、そして車に乗ったピエールの視線がパリの街をずうっと一繋がりに見上げているのを見て、だからこそ「universe」という単語を選択したのかとすごく納得したんだと話してくれた。こうして教えてもらえてよかったあ!と友人に感謝すると共に、こうした言い回しや言葉の選択に作り手の思い、メッセージを改めて感じてもいた。
人が己の生を生きていくということ、そして人との繋がりについて改めて思っていた
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ベンゴ/Vengo

2008-12-21 00:15:41 | 映画 は行
              
2000年/スペイン・フランス/89分
監督:トニー・ガトリフ
出演:アントニオ・カナーレス、オレステス・ビリャサン・ロドリゲス、アントニオ・ペレス・デチェント、ボボーテ、ルイス・コリエンテス、フェルナンド・ゲレロ・レボリョ、フランシスコ・チャベロ・リオス

舞台はスペイン、アンダルシア地方。いかにも乾いて暑そうで、そして厳しい環境の中に憎みあう二つの家族。
冒頭の修道院の中でのフラメンコとアラブ音楽のセッションからその豊かな音楽にもう、うっとり~フラメンコギターのトマティートとエジプト、スーフィ音楽の伝承者シーク・アマッド・アル・トゥミが登場しドキドキワクワクの音楽に圧倒される。とにかく、作品中、どこをとっても音楽、それもフラメンコなのだ!

しかし、vengoというタイトル見て最初スペイン語を思わなかったなんて・・・スペイン語勉強してるのに、恥ずかしい~。最後の最後になって、あれ?vengo?でも・・・venir:来る、やってくる。ちょっと腑に落ちない。あっ!vengar:復讐する。どっちも1人称単数だとvengoだ。カコはあの場所にやって来たけれど、復讐するのではないとこの題名はその二つを掛け詞として使っているのかなあ?なんてしばらく考えてしまった。
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パコと魔法の絵本

2008-10-17 23:13:00 | 映画 は行
           *公式サイト
2008年/日本/105分
監督・脚本:中島哲也
原作:後藤ひろひと
出演:役所広司、アヤカ・ウィルソン、妻夫木聡、土屋アンナ、 阿部サダヲ、加瀬亮、小池栄子、劇団ひとり、山内圭哉

『下妻物語』『嫌われ松子の一生』の中島哲也監督の作品だというので期待一杯で観に行った『パコと魔法の絵本』・・・

どこか、舞台を見ているようでもあり、徹底的に不思議ワールドに絡み取られ、徹頭徹尾、怒涛のハイ・テンションにもみくちゃになっているというか。溢れる色はやっぱり『嫌われ松子の一生』を彷彿とさせるヴィヴィッドな色彩、色の洪水、そこに多用されるCGはその夢のような世界をより深める役を果たしているように思われる。
そして登場人物すべてがとにかく・・・うぅぅ~、すっごく、何というか・・・濃い。そして怪演!?が繰り広げられる。その中にあって、いやその中だからこそ余計にパコの可憐さが際立って胸に残るのだ。

劇中で木村カエラが、一曲歌うのだけれど素敵だったなぁ~
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ヒトラーの贋札

2008-06-23 00:10:27 | 映画 は行
             *公式サイト
2007年/ドイツ・オーストリア/96分
原題:DIE FALSCHER
監督:ステファン・ルツォヴィツキー
出演:カール・マルコヴィックス、デーヴィト・シュトリーゾフ、アウグスト・ツィルナー、マルティン・ブラムバッハ、アウグスト・ディール

これも『新所沢パルコ開館25周年記念スペシャルセレクション』Let'sシネパークで鑑賞。観客もかなり多くまた男性が多かったのは、やはり題材とアカデミー賞外国語映画賞受賞という作品だったからだろうか。素晴らしい作品だった!

第二次世界大戦中のユダヤ人収容所での話ということでその重さについては覚悟していたつもりだが、やはり重くそして重厚な作品だった。特に絶望的な状況の中で「何としても生きること」「生き抜くこと」というメッセージが通奏低音のようにずっと作品中に鳴っていて、それが観ていてひしひしと伝わってくるのだ。
私は「ベルンハルト作戦」について全く知識がなかったので、『この話が実際に強制収容所で贋造(がんぞう)に携わった印刷技師アドルフ・ブルガーの著書「ヒトラーの贋札 悪魔の仕事場」を原作としフィクションを加え映画化された(公式サイトより)』と知り、実際この作戦が成功していたら世界はどうなってしまっていただろうか、と戦慄が走った。
そしてこの作品の中で果たす音楽の役割、それが収容所内でどう使われていたかについてはより深く衝撃を受けていた。
この作戦に協力させられて収容所内で贋札作りにいそしむ彼らに余計な音が耳に入らぬようにと・・それは壁一つを隔てたところにいる彼ら以外のユダヤ人たちの出す音についてである・・音楽が流されているのである。この作品では流されていた曲は全て歌曲、聞いていた限りイタリア語だった、それは同盟国だったから?それともこの中では妙に明るく、もっと言えばあっけらかんと響くから?それは時に辛すぎて耳をふさぎたくなる。特に「マリア・マり」は何度か流れ、その曲に抱いていたイメージとのギャップが苦しかった。そして予告編で耳にしていた「星は光りぬ」はオーケストラ伴奏だったのだが、作品中では謝肉祭の出し物の一つとして無伴奏で歌われるのだ。なんという歌だったろう!
音楽は音楽なのに、その持つ両面が鮮やかに対比させられ、諸刃の剣として目前に突きつけられる。
そしてもう一つ、作品中でタンゴが効果的に使われていたのも印象に残った。
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ペネロピ/PENELOPE

2008-06-21 00:03:53 | 映画 は行
                *公式サイト
2006年/イギリス/101分
監督:マーク・パランスキー
出演:クリスティーナ・リッチ、ジェームズ・マカヴォイ、キャサリン・オハラ 、リチャード・E・グラント、リース・ウィザースプーン
                豚の鼻を持って
                      生まれてきた私は
                   夢見ていた・・・
              恋することを。

『新所沢パルコ開館25周年記念スペシャルセレクション』と題してLet'sシネパークでは一週間ずつの限定上映ではあるけれど、5月17日から興味深い作品を公開していた。そのラインアップは「人のセックスを笑うな」「マリア・カラス最後の恋」「潜水服は蝶の夢を見る」「ペネロピ」「ヒトラーの贋札」だった。こんな風に一挙にたとえ一週間限定とはいえ上映してくれるというのは、素敵だ

というわけで観たのは、先祖にかけられた魔女の呪いのため「豚の鼻」を持って生まれてきた名家・ウィルハーン家の娘ペネロピのお話。
お伽噺のふんわりした世界を味わわせながら、でもキッと一本筋の入った明確な主張が感じられて・・・
豚鼻のペネロピは、違和感なくて、それどころか可愛かったなあ。でも、やっぱり人間の鼻に戻った時には、ああ今までは豚鼻だったのね!と思わされたけれど。
彼女を世間の好奇の目から守る為に屋敷の中だけで育て、その呪いを解くために彼女のお見合いに奔走するという親の愛情、歪んでいると思うけれど、そして彼女に対する過干渉が滑稽に見えてしまうけれど、その気持ちは想像できる。だからこそ、そこから飛び出し自分の足で歩いていこうとするペネロピの思いに共感し、その前向きな姿を応援していた。
そして、ペネロピのクリスティーナ・リッチの魅力は勿論だけれど、マックスを演じたジェームズ・マカヴォイ!・・・あのタムナスさんが、「つぐない」のロビーが、今度はマックス~(本棚にあった笛を「ほ~」と吹いた時には、おっ、タムナスさん!)青い瞳が強く印象に残りましたわ~!
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ファヴェーラの丘

2008-04-18 23:37:25 | 映画 は行
              *公式サイト
           リオデジャネイロ、ブラジル
         スラム街で生まれた希望のリズム
2005年/アメリカ/81分
原題:Favela Rising
監督:ジェフ・ジンバリスト、マット・モカリー
出演:アンデルソン・サー、ホゼ・ジュニオール、マルシオ・ニューンズ、アンドレ・ルイス・アゼヴェード、ズエニール・ヴェントゥーラ

~『シティ・オブ・ゴッド』でも描かれた、信じられないほど暴力的なリオのスラム街“ファヴェーラ”。音楽によって、絶望的で息詰まるような日常から、希望ある未来を子供達に示そうと立ち上がった男、アンデルソン・サーを追ったドキュメンタリー。(チラシより)~

アフロレゲエの音楽ドキュメンタリーという本作、アフロレゲエってどんな音楽なのだろうとそこに惹かれて観たこの作品。
『シティ・オブ・ゴッド』は未見なのでこの作品で初めてファヴェーラの麻薬ギャングと腐敗した軍警察による支配によって起きていた、あまりにも凄惨・悲惨な映像を目にし、絶望と無力感に襲われてしまった。しかし、その暴力の連鎖に『音楽』を持って立ち向かっていった人間のいたこと、そしてそこに関わる人間が少しずつ増えていきアフロレゲエの活動を通して絶望を希望に変えていく過程、そして生み出されていく希望、未来に感動する。そこに響く音、激しく刻まれるリズム~♪音楽の持つ底知れないパワーに震える。こうした爆発的なパワーを内包する音楽についてそこに関わり続けている自身について、また深く考えることになっていた。
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バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び 

2008-02-13 00:05:35 | 映画 は行
                *公式サイト
2005年/アメリカ/118分
原題:BALLETS RUSSES
製作+監督+編集+脚本:ダニエル・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン
出演:アリシア・マルコワ、イリナ・バロノワ、ナタリー・クラフスカ、フレデリック・フランクリン、ジョージ・ゾリッチ他、バレエ・リュスの歴史を飾る伝説的なダンサーたち
ナレーター:マリアン・セルデス

1909年に旗揚げされた伝説のバレエ団「バレエ・リュス」。ディアギレフの死により解散したが、その後1931年に再出発し1962年にその歴史を閉じるままでの半世紀を貴重な記録映像と、40年ぶりに2000年に同窓会に集まった元団員たちの証言・回想で構成されたドキュメンタリー。

その美しさ、老いてなお輝く美しさ。インタビューに答える元団員たちの年齢は80歳、90歳・・・刻まれた皺の一本一本まで美しい。

インタビューに答える団員の言葉と姿に、その当時の映像を重ねていくというシンプルな構成で作り上げられたこの作品。バレエ・リュスという名前くらいしか知らないという私でも思わず身を乗り出して夢中で見入ってしまう。バレエ・リュスに関わり「活躍し、協力した芸術家たち」(そこに出てくる名前の豪華絢爛なこと!)がバレエ団の歴史の中で踊り、話し、また舞台装置が目の前に現れるのだから、これは夢中にならずにはいられないではないか。(ダリの製作した舞台装置の白鳥はそのエピソードとともに面白かったなあ~)
その後、分裂したバレエ団はそれぞれの演目を持ってヨーロッパ以外の新大陸の国々へと旅をし、それぞれの国々でバレエの礎を築いていく。ハリウッド映画に出演しているフィルムも紹介され興味深い。

しかし、画面に登場する彼らの美しさ・・それは表情であり、仕草、言葉であり、全てである。同時に全身全霊をかけてバレエを愛し、踊り続け、生きてきたというプライド。ほれぼれとその美しさに見惚れ、顔は自分で造っていくものなのだとつくづく思った。
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ペルセポリス

2008-01-24 23:56:24 | 映画 は行
            *公式サイト
2007年/フランス/95分
原題:Persepolis
監督・脚本:マルジャン・サトラピ&ヴァンサン・パロノー
音楽:オリヴィエ・ベルネ               
声の出演:キアラ・マストロヤンニ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ダニエル・ダリュー、サイモン・アブカリアン、ガブリエル・ロペス、フランソワ・ジェローム 

『1970~90年代の激動するイランを舞台に監督自身の反省を綴った<少女マルジ>の成長物語』チラシより

激動するイランを縦軸に、歴史に翻弄されるマルジの家族、そしてマルジ・母・祖母という母娘3代の絆を横軸に、その中で悩みつつ成長していく少女マルジがモノクロームのくっきりしたしかも丁寧で人の手を感じさせるアニメーションによっていきいきと描かれる。
イランのパーレビー王朝の崩壊、革命政府の樹立、イラン・イラク戦争、その終結というその一連の外郭だけは、マスコミによって知らされていたけれど、その中で苦しむ人間の姿は全く伝えられなかったのだということに愕然とする。特に女性に対する激しい差別、人権無視には唖然とする。ただ、これは自分が属している世界と比べての中でしか判断の基準を持たないのでそう感じてしまうのだろうか、と思ったりもする。

しかし、ここに登場するマルジの祖母の毅然とした態度、ジャスミンを香らせ、常に身だしなみを整えている素敵な姿、「いつも公明正大でいるんだよ」とマルジに言い聞かせる言葉が深く印象に残る。
そしてマルジの両親。彼女を想う強い気持ちがひしひしと伝わってくる。特に彼女を送リ出す空港でのシーンはその心中を思うと胸が一杯になる。
家族、両親の愛を一杯にして育ち、そしてウィーン留学の中でアイデンティティの喪失と復活を通して苦しみつつ自我を確立していくマルジ。しかし、マルジはイランの国の身分・階級ということは全くわからないが、相当恵まれた環境、特権階級に所属しているのではなかろうか、と思う。でなければ、あの混乱の時代にウィーンに留学して何の支障もなく長期間生活できなかっただろう。そういう彼女が、新たな決意を胸に今一度イランを旅立とうとする姿に「幸多かれ」と思わず願っていた。

アニメーションでしか描けない世界がここにある~
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パラダイス・ナウ

2007-12-30 00:20:25 | 映画 は行
                 *公式サイト
            「イスラエル占領地ナブルス
          自爆攻撃に向かう、二人の若者の48時間」

2005年/フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ/90分
英題:PARADISE NOW
監督・脚本:ハニ・アブ・アサド
出演:カイス・ナシフ、アリ・スリマン、ルブナ・アザバル、アメル・フレヘル、ヒアム・アッバス、アシュラフ・バルホウム 他(DVD)

『物事を“邪悪”と“神聖”にわけるのはナンセンスだ。
私は複雑きわまりない現状に対する人間の反応を描いているのです』
         ~ハニ・アブ・アサド監督;チラシより

映画は淡々とイスラエル占領下にあるナブルスで抑圧され、明日の希望のない生活を強いられているパレスチナの人々の日常生活を映し出す。そして、その日常の中に何気なく挟まれるイスラエル軍とパレスチナ人との緊張、そしてそうした中で増幅されていく互いに対する憎悪を眼前に提示する。そうした中での宗教、そして自爆テロ・・・。声高に語りかけるのではなく、あくまで淡々と日常を積み重ねることによって、その向こうにある「何か」をより強く訴えかけてくる気がした。

この作品を観た次の日、パキスタンでブット元首相が自爆テロの犠牲になったという衝撃の報道を読む。
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ヘアスプレー

2007-11-14 00:33:00 | 映画 は行
             *公式サイト
2007年/アメリカ/116分
原題:HAIRSPRAY
監督:アダム・シャンクマン
出演:クイーン・ラティファ、ジョン・トラヴォルタ、クリストファー・ウォーケン、ザック・エフロン、ミシェル・ファイファー、ブリタニー・スノウ、ニッキー・ブロンスキー

歌~、ダンス~、衣装~、どれをとってもエンターテインメントに徹していて目も耳も心もうっきうき!!思わず身体が動いてリズムを一緒にとってしまってました。
ビッグサイズのトレーシーのあくまで前向きで積極的で、しかもひたむきな姿が気持ちいい。彼女の身のこなしのまた何と軽いこと、のびやかな歌声の気持ちいいこと
ひたすらハッピーなようで、作品は1960年代の人種差別を色濃く映し出す。それは冒頭『ボルチモア大学 黒人学生の入学拒否』という新聞の一面の記事が大写しされることで、観ている側はどきっ、とする。そういう時代背景なのか、と意識させるのである。トレーシーが出演することを夢に見る「コーニー・コリンズ・ショー」には白人の日、黒人の日がある、といった具合である。
しかし、とにかくここでは、全てが前向きなので、深刻でありながら明日への希望を持たせてくれる。
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パンズ ラビリンス

2007-10-12 00:03:49 | 映画 は行
             *公式サイト
2006年/スペイン・メキシコ/119分
原題:EL LABERINTO DEL FAUNO
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:イバナ・バケロ、セルジ・ロペス、マリベル・ベルドゥ、ダグ・ジョーンズ、アリアドナ・ヒル

この作品、期待一杯で出かけたその期待をはるかに超え、そしてまた或る意味で想像を絶したダークで深いそして重い世界が広がっていて、どっぷりその中に沈んで・・・揺さぶられ、溺れてしまった
最初から最後まで激しい緊張が続き、それが暗い色調の中に展開する。その暗さは、フランコ軍とゲリラとの戦闘が繰り広げられる現実の世の中でも、物語の主人公オフェリアが牧神:パンと出会い試練の旅をする迷宮:ラビリンスの中でも同様なのが、見ていて本当に切ない。
現実の世界で自由に息ができない時、オフェリアの目の前に現れたパンの迷宮は、そこで辛い試練を与えられようと、それを解決しようと立ち向かうことを選ぶことができる、という現実世界では彼女が決して許されない「自由」が存在していたのだ。しかし、立ち向かう事を選ぶ自由はあってもその中でもパンに質問することは許されず、与えられた試練は越えていかねばならない。
それは彼女の周囲の人々、母カルメン、メルセデス、フェレイロ医師、フランコ軍の圧制に苦しみ抵抗する全ての人々も同様である。どちらも「no」を言うことを許されない。
この閉塞された世界は、最後に課せられた試練の場面でオフェリアが全てを賭けてパンに「¡ NO !」という言葉によってついに開け放たれる。その言葉はまた、ビダル大尉に向かってメルセデスの口から発せられることになる。現実と迷宮の世界は常に呼応し合う。
この螺旋の階段を上り下りするように行き来する彼女の織りなし構築した世界は、結局は悲劇的な結末であり同時に至福の結末だったのだと、胸が痛くなる慈しみの気持ちと切なさと悲しみの中で納得する。
素晴らしかった
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ボルベール<帰郷>/VOLVER

2007-07-14 00:03:15 | 映画 は行
             *公式サイト
2006年/スペイン/120分
監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、チュス・ランプレアヴェ

張り切って行ってまいりました「ボルベール<帰郷>」
前売り券を手に入れられなかったので、「一体どれだけ混んでいるのだろう?」と、どきどきしたのですが、そんなに混んでもいず、好きな場所を選べたのでよかった~。

扱われている題材、事件はこの上なく重く暗いのだけれど、それはあくまで題材に過ぎず、全編通して響く生命への賛歌、母であり娘であり女である、全てひっくるめた「女性」への賛歌の高らかな響きに知らず知らず自分の心が呼応し、実に素直に身を委ねていることに気付く。
ラ・マンチャの乾いた風景、陽に輝くその白さが眩ければ眩いほど、その影の暗さはまた濃く映る。その影の濃さにそれぞれの秘密、絆、因果が絡み合いその闇はより一層深く濃く感じられるのだ。そしてその上に散りばめられた鮮やかに乱舞する色彩に目は喜び心が浮き立つ。
登場する女性は誰もがたくましく潔く、魅力的。大胆と繊細、激情と冷静、運命に翻弄される姿と、それに果敢に立ち向かう姿、相反するすべてが不思議なユーモアを伴って輝き渦巻いている。

どんなに強く見えても人は「ボルベール<帰郷>」する場所を求め、彷徨い迷いながら生きている・・「だけど思い出してみて、ほらそこにある!」と風がやさしく頬を撫で呼びかけてくる。
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