ポレポレ東中野で先行上映中の、三上智恵監督最新作「戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)」を見てきました。今、沖縄辺野古で起きている新基地建設阻止闘争を克明に追った力作です。
シュワブゲート前で座り込みを続け、「私を死なせてから行きなさい」と工事車両の前に立ちはだかる85歳の文子おばあは、沖縄地上戦を体験した生き証人です。彼女は、今の政府のやり方をみると戦時中の苦しみや、政府が沖縄にずっと強いてきた犠牲が蘇る。基地建設をやめるまで、自分の痛み、苦しみが終わることは無い、と言い切ります。
反対運動をリードし続け、自分達をゲート前から排除しようと動員されている若い機動隊員に、「同じ沖縄の人間だろう」と呼びかけるヒロジさんは、「沖縄は日本じゃないんだ、ずっと植民地なんだと認識せざるを得ない」と怒りの表情で語ります。
親と一緒にゲート前に通い続ける元気な兄妹たちの中の、まだあどけなさの残る女の子は、「何とか大勢の人たちを集めてば~っと攻め込みたい」と屈託ない笑顔を見せます。
海上で抗議船を操縦する若い女性船長は、「頑張る」と微笑を見せたすぐ後に、「でも正直どうしたら止められるのか分からない」と、途方にくれたように涙を浮かべます。
こうして、夫々の思いを抱えて戦ってきた人たちが、去年11月の沖縄県知事戦で翁長さんが勝った時には爆発的な喜びと安堵の表情を見せて、その映像を見る私たちも感動と共感で心が揺さぶられますが、一方でその後の成り行きを思って、重苦しく辛い気持ちが拭えませんでした。
現に映画でも、選挙直後から、日本政府が「粛々と続ける」と基地建設の継続を宣言し、人々の戦いは厳しさを増していく様子が描き出されています。文子おばあは、ゲート前で警察官に押し倒されて頭に怪我を負い一時入院する事態になりました。ヒロジさんが一時逮捕・拘留される騒ぎもありました。海上では海上保安員たちが、暴力的にカヌー隊の人たちを排除し、怪我人が続出する様子も映し出されています。
彼らは選挙の勝利でも変わらない政治に翻弄され、それでも絶対に基地は建設させないという決意を新たに、今も戦い続けています。
辺野古には、政府が言うような普天間の代替としてではなく、オスプレイ100機を配備できる新たな巨大軍港の機能を持った基地が作られようとしているそうです。
さんご礁の間を魚たちが泳ぐ青く静かな海に、戦争をするための軍港の存在は、全く似つかわしくありません。豊かな伝統文化の中で生きる沖縄の人たちの人間味溢れる暮し振りが、戦争をし続けるアメリカ、そんなアメリカの顔色ばかり伺う日本政府の血の通わぬ冷酷無比な判断の愚を際立たせます。
それなのに、民主主義や人々の暮らしの重さは、権力の前に無力なのだろうかと呆然としてしまいます。しかし、心ある人がこの映画を見たら、日米政府がやろうとしていることは、やはりおかしい、間違っていると思い、それがいつか事態を動かすのではないかという気もします。
先行上映中のポレポレ東中野は連日入れない人も出るほどの盛況とのことで、それ程多くの人が関心を持っているというのは喜ばしいことです。間もなく全国で上映が予定されているとのことなので、是非多くの人に見てもらいたいとも思います。
更に日本国内だけでなく、当事者でもあるアメリカを始め、海外でも上映することができたら、国際世論を動かし、今の事態に大きな一石を投じることになるのではないかと、期待が膨らみます。
とまれ、沖縄の魂がこもった素晴らしいドキュメンタリー映画、是非皆さんもご覧ください。
「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
笹井明子
シュワブゲート前で座り込みを続け、「私を死なせてから行きなさい」と工事車両の前に立ちはだかる85歳の文子おばあは、沖縄地上戦を体験した生き証人です。彼女は、今の政府のやり方をみると戦時中の苦しみや、政府が沖縄にずっと強いてきた犠牲が蘇る。基地建設をやめるまで、自分の痛み、苦しみが終わることは無い、と言い切ります。
反対運動をリードし続け、自分達をゲート前から排除しようと動員されている若い機動隊員に、「同じ沖縄の人間だろう」と呼びかけるヒロジさんは、「沖縄は日本じゃないんだ、ずっと植民地なんだと認識せざるを得ない」と怒りの表情で語ります。
親と一緒にゲート前に通い続ける元気な兄妹たちの中の、まだあどけなさの残る女の子は、「何とか大勢の人たちを集めてば~っと攻め込みたい」と屈託ない笑顔を見せます。
海上で抗議船を操縦する若い女性船長は、「頑張る」と微笑を見せたすぐ後に、「でも正直どうしたら止められるのか分からない」と、途方にくれたように涙を浮かべます。
こうして、夫々の思いを抱えて戦ってきた人たちが、去年11月の沖縄県知事戦で翁長さんが勝った時には爆発的な喜びと安堵の表情を見せて、その映像を見る私たちも感動と共感で心が揺さぶられますが、一方でその後の成り行きを思って、重苦しく辛い気持ちが拭えませんでした。
現に映画でも、選挙直後から、日本政府が「粛々と続ける」と基地建設の継続を宣言し、人々の戦いは厳しさを増していく様子が描き出されています。文子おばあは、ゲート前で警察官に押し倒されて頭に怪我を負い一時入院する事態になりました。ヒロジさんが一時逮捕・拘留される騒ぎもありました。海上では海上保安員たちが、暴力的にカヌー隊の人たちを排除し、怪我人が続出する様子も映し出されています。
彼らは選挙の勝利でも変わらない政治に翻弄され、それでも絶対に基地は建設させないという決意を新たに、今も戦い続けています。
辺野古には、政府が言うような普天間の代替としてではなく、オスプレイ100機を配備できる新たな巨大軍港の機能を持った基地が作られようとしているそうです。
さんご礁の間を魚たちが泳ぐ青く静かな海に、戦争をするための軍港の存在は、全く似つかわしくありません。豊かな伝統文化の中で生きる沖縄の人たちの人間味溢れる暮し振りが、戦争をし続けるアメリカ、そんなアメリカの顔色ばかり伺う日本政府の血の通わぬ冷酷無比な判断の愚を際立たせます。
それなのに、民主主義や人々の暮らしの重さは、権力の前に無力なのだろうかと呆然としてしまいます。しかし、心ある人がこの映画を見たら、日米政府がやろうとしていることは、やはりおかしい、間違っていると思い、それがいつか事態を動かすのではないかという気もします。
先行上映中のポレポレ東中野は連日入れない人も出るほどの盛況とのことで、それ程多くの人が関心を持っているというのは喜ばしいことです。間もなく全国で上映が予定されているとのことなので、是非多くの人に見てもらいたいとも思います。
更に日本国内だけでなく、当事者でもあるアメリカを始め、海外でも上映することができたら、国際世論を動かし、今の事態に大きな一石を投じることになるのではないかと、期待が膨らみます。
とまれ、沖縄の魂がこもった素晴らしいドキュメンタリー映画、是非皆さんもご覧ください。
「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
笹井明子