2017年が間もなく終わろうとしている。「謙虚に」「丁寧に」「しっかりと」の言葉と裏腹に、安倍政権による国政の私物化、米政府への追従、国会軽視が際立った一年だった。
こうした安倍自民党の一強独裁体制の状況下、今後私たちが最も警戒すべきことのひとつは、安倍首相が強い思い入れをもって目指す「改憲」実現に向けた自民党の戦略であろう。
2017年5月3日、憲法記念日のこの日、安倍首相は、日本会議主導の改憲集会と読売新聞を使って「2020年までの憲法改正」の意思を表明した。
10月の衆議院解散・総選挙では、少子高齢化や北朝鮮情勢の「国難突破」を大義にしつつ、「憲法改正」を自民党選挙公約としてしっかり入れ込んだ。
2015年に集団的自衛権の行使を認める安保関連法を成立させて以降、戦闘状態にある南スーダンに自衛隊を送り込み、北朝鮮の脅威を理由に2018年の軍事費を過去最大の5.2兆円とするなど、憲法9条の理念とは相容れない状況を意図的に作り続けている。
彼らは「改憲」の準備を着々と整えており、衆参両議院で三分の二議席がある現在、最も有利なタイミングで「憲法改正」の発議を行うべく虎視眈々と狙っているのが現実だと考えるべきだろう。
これに対し、自民党の目指す「改憲」を認めない私たちから見た問題点は、大きく言って二つあるといえる。
ひとつは、従来のように「改憲をさせない」ことを目的化させた運動を続けた場合、憲法条文を変えることは防げるかもしれないが、憲法の理念から遠く離れたところにまで進んでしまった現実に対し、是正する手立てが見出せないという点だ。
そして、もうひとつの問題点は、守りの姿勢を続けているだけでは、政府のペースに乗せられて、政府の思惑どおりの結果を招いてしまう可能性が非常に高いということだ。
前者については、立憲民主党の枝野代表がいう「改憲論議は違憲の安保法制を廃案にしてからの話だ」という言葉に理があり、野党第一党である立憲民主党に、主張どおり違憲状態解消に全力を尽くすことを期待したいと思う。
一方、後者に関しては、特に国民投票法の欠陥解消に向けて、私達自身が今後積極的に取り組む必要があると感じている。
「メディアに操作される憲法改正国民投票」(岩波ブックレット)というブックレットの中で著者の本間龍氏は、現行の国民投票法が「投票運動期間中のメディアの広告規制がほぼ存在せず、資金力のある政党や企業が、莫大な予算を投入して広告宣伝戦を有利に展開できる」とその不公平性を指摘し、公正な投票のための改善策を提案している。
これは予てから今井一さん達が問題提起してきたことだが、最近になってようやく民進党や立憲民主党の議員らが関心を示し、法制化に向けた具体的な動きが出てきている。このことは、改憲の可能性が現にあるという事実からの逃避脱却の第一歩として、歓迎すべきだと、私は考えている。
さて、長年に亘り護憲派を自認してきた私としては、自民党の攻勢におろおろする状態を自らもそろそろ脱却し、改憲発議を想定して、護憲サイドの広告のアイディアを考えてみたいと思っている。
2014年に日本でも放映された映画「NO」では、広告宣伝はお金をかけても成功するとは限らない。知恵を絞り、真実を語り、選択への夢と希望を示せれば、金銭的に不利な中でも勝ち目があることが示されていた。
かつて財界の護憲派として発言を続けてこられた故品川正治さんは、「国民投票」という国民の直接的な意思表明は、惰性で進められている政治状況をダイナミックに変えるチャンスにもなり得ると、指摘されていた。
間もなく訪れる2018年。現行憲法の誕生の歴史や現在的な意義、未来に繋がる希望をもう一度捉え直し、きちんと位置づける。その試みを通して自民党の「改憲」を迎え撃つ。私はこれを私自身の新年の目標にしたいと思っている。
「護憲+コラム」より
笹井明子
こうした安倍自民党の一強独裁体制の状況下、今後私たちが最も警戒すべきことのひとつは、安倍首相が強い思い入れをもって目指す「改憲」実現に向けた自民党の戦略であろう。
2017年5月3日、憲法記念日のこの日、安倍首相は、日本会議主導の改憲集会と読売新聞を使って「2020年までの憲法改正」の意思を表明した。
10月の衆議院解散・総選挙では、少子高齢化や北朝鮮情勢の「国難突破」を大義にしつつ、「憲法改正」を自民党選挙公約としてしっかり入れ込んだ。
2015年に集団的自衛権の行使を認める安保関連法を成立させて以降、戦闘状態にある南スーダンに自衛隊を送り込み、北朝鮮の脅威を理由に2018年の軍事費を過去最大の5.2兆円とするなど、憲法9条の理念とは相容れない状況を意図的に作り続けている。
彼らは「改憲」の準備を着々と整えており、衆参両議院で三分の二議席がある現在、最も有利なタイミングで「憲法改正」の発議を行うべく虎視眈々と狙っているのが現実だと考えるべきだろう。
これに対し、自民党の目指す「改憲」を認めない私たちから見た問題点は、大きく言って二つあるといえる。
ひとつは、従来のように「改憲をさせない」ことを目的化させた運動を続けた場合、憲法条文を変えることは防げるかもしれないが、憲法の理念から遠く離れたところにまで進んでしまった現実に対し、是正する手立てが見出せないという点だ。
そして、もうひとつの問題点は、守りの姿勢を続けているだけでは、政府のペースに乗せられて、政府の思惑どおりの結果を招いてしまう可能性が非常に高いということだ。
前者については、立憲民主党の枝野代表がいう「改憲論議は違憲の安保法制を廃案にしてからの話だ」という言葉に理があり、野党第一党である立憲民主党に、主張どおり違憲状態解消に全力を尽くすことを期待したいと思う。
一方、後者に関しては、特に国民投票法の欠陥解消に向けて、私達自身が今後積極的に取り組む必要があると感じている。
「メディアに操作される憲法改正国民投票」(岩波ブックレット)というブックレットの中で著者の本間龍氏は、現行の国民投票法が「投票運動期間中のメディアの広告規制がほぼ存在せず、資金力のある政党や企業が、莫大な予算を投入して広告宣伝戦を有利に展開できる」とその不公平性を指摘し、公正な投票のための改善策を提案している。
これは予てから今井一さん達が問題提起してきたことだが、最近になってようやく民進党や立憲民主党の議員らが関心を示し、法制化に向けた具体的な動きが出てきている。このことは、改憲の可能性が現にあるという事実からの逃避脱却の第一歩として、歓迎すべきだと、私は考えている。
さて、長年に亘り護憲派を自認してきた私としては、自民党の攻勢におろおろする状態を自らもそろそろ脱却し、改憲発議を想定して、護憲サイドの広告のアイディアを考えてみたいと思っている。
2014年に日本でも放映された映画「NO」では、広告宣伝はお金をかけても成功するとは限らない。知恵を絞り、真実を語り、選択への夢と希望を示せれば、金銭的に不利な中でも勝ち目があることが示されていた。
かつて財界の護憲派として発言を続けてこられた故品川正治さんは、「国民投票」という国民の直接的な意思表明は、惰性で進められている政治状況をダイナミックに変えるチャンスにもなり得ると、指摘されていた。
間もなく訪れる2018年。現行憲法の誕生の歴史や現在的な意義、未来に繋がる希望をもう一度捉え直し、きちんと位置づける。その試みを通して自民党の「改憲」を迎え撃つ。私はこれを私自身の新年の目標にしたいと思っている。
「護憲+コラム」より
笹井明子
まず、護憲派は、安倍自民党がどのような条文を発議してくるのか、予想すべきです。護憲派の中にも勘違いしている人が多そうですが、発議される条文には「自衛隊」という文言は入らないはずです。文言に「自衛隊」が入るかどうかで、賛否が大きく変わるかどうか、
早期に調査すべきです。
つぎに、護憲派は、予想した条文に対して、具体的な反論を加えるべきです。発議される条文は、現行の政府解釈を下敷きにするはずなので、現行の政府解釈からの逸脱や骨抜きがあれば、指摘します。
第三に、護憲派は、現行の政府解釈の中で、軍事力の抑制に大きな役割を果たしてきたルールを発議案に盛り込むように自民党を説得すべきです。そのルールとは、軍事費をGDPの1%以内に抑えるというルールです。自民党が説得を突っぱねれば、軍拡志向を国民に強く印象付けられますし、説得を受け入れれば、自民党内タカ派が怒り狂うはずです。
第四に、護憲派は、安倍総理主導の憲法改正が国民に立憲主義の何たるかを分からせるための絶好の機会でもあることを理解すべきです。軍事費をGDPの1%以内に抑えるというルールが仮に可決したときに、安倍総理がやることは予想が付きます。GDPの定義を変えるか、GDPを粉飾するか、軍事費の定義を変えてしまうか、です。そうさせないためにどうすればよいかを考えるのが、立憲主義を理解するということです。
いただいたご意見をどう政治の世界に反映させられるかを含め、来年はしっかり考えていきたいと思います。
よかったら又ご意見をお寄せ下さい。