老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「戦争と憲法」序説

2011-08-02 16:47:20 | 憲法
憲法第9条の規定をどう捉えるかで、「後に」学説等(憲法解釈は学者の専売特許ではない)が紛糾しているが、当時の市民はそうした神学的な教義から自由であった。否むしろ戦争からの「被害」を二度と受けたくないという直接的な欲求しか念頭になかったであろう。

こうした当事者という視点は9条解釈にとって重要であり、憲法制定が歴史となった現在からは、原点としての重みは一層増している。

こうした視座は最近ねずまさし氏の論考から再び示唆を受けた。それによれば、9条の制度趣旨は、端的にアメリカから見てそれまで敵国であった日本を武装解除したいという目的であったという。それも永久的に。

戦争末期は神風特攻隊の攻撃を繰り返し、戦争初期には真珠湾のアメリカ艦隊を急襲して撃沈させている。こうしたクレイジーな戦術を繰り返す日本を理解しがたい敵国として冷静に見ていたアメリカの本音がそこにある。

日本が英米語を敵性言語として遇して、戦争末期には教科書から削除した国家理性しか持ち合わせていない国であるのに対し、アメリカは戦争半ばからドナルド・キーン兵士等を日本語習得教育に従事させ、大学でネイティブアメリカンの言語を研究していた社会学者ルース・ベネディクト女史を派遣して、日本軍捕虜を日本理解のための取材対象として調査するように命じたのである。

こうした手続きは、アメリカがすでに戦争半ばで「日本占領」を予定し、占領をアメリカ主導で遂行する目的からのものであった(「菊と刀」の前半部分に記載されている)。

そういう国であったからこそ、憲法9条の第一の目的と制度趣旨が「日本の国家としての非武装」にあり、第一も第二も武装解除が重要であり、占領目的となった「ポツダム宣言」にある「再民主化」の問題を平和裏に遂行するための憲法制定であった。

平和主義は武装解除の帰結にすぎず、逆ではない。つまり、「平和主義」を完成させるための憲法9条第一項(平和主義のための「戦争の放棄」)よりも憲法9条の第2項(「軍隊の不保持」)こそが、アメリカにとっての重要な項目なのである。

アメリカにとって9条は上記のようなドライな規定であった。その証拠にアメリカは東アジアに紛争(朝鮮戦争)が起こると、9条の宣言の舌の根も乾かぬうちに日本に再び武装することを命じている(自衛隊の前身警察予備隊)。

そして、現在のアメリカの態度を考えればこの国が本当に「御都合主義」の国であることが明白になってくる。外交戦略として国際主義の名前を冠しているが、その実体は条約締結国:同盟国を利用する対象としてしか見ていないのである。

こうした御都合主義のアメリカに対して日本政府は徹頭徹尾「追従主義」を採ってきた。この際立ったアンチシンメトリーが日米外交史の特徴であり、他の性格は皆無であった。主人が呼べばポチが答えるという比喩が的確な戯画として有効であった。

* * *

しかし、敗戦の当事者はそういう政府の解釈に追随する義務は全くない(国民主権の原則)。もし、歴代の日本政府の代理人が考える追随主義が正解というならば日本は従属国家であり、「偽りの民主主義」ということになる。

ここから、アメリカ政府の9条武装解除論を批判して、第一項の平和主義のための戦争放棄が重要な規定であり、2項はその目的遂行の重要な手段であり、軍隊と軍備の不保持はこう解釈される、との議論が生まれる。

ところで、憲法9条の解釈がこれで完結するわけではない。憲法9条と憲法の他の規定(とりわけ基本的人権の宣言)は戦争から生まれた平和主義の憲法であったが、それは未来にも適用される憲法の拘束という解釈前提でもある。

憲法は過去と未来を貫く結節点に位置し、過去に起源を持つ性格と未来をも拘束する性格を重層的に(クロスオーバー)併せ持つものである。

それが日米政府の御都合主義から解き放たれたものであり、戦争放棄を宣言しておきながら「現実」(国際関係の現実という虚偽意識)的であるから再武装するのだという、ころころ変わる政策では、憲法ではない。したがって、安易な「憲法改正」は「憲法」違反である。

上記に展開してきた後半の問題は、「序論」という表題から以上とし、詳細は次回に回したい。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵

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1 コメント

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国家騒乱の罪 (通りがけ)
2011-08-03 09:47:03
「地位協定を破棄して火事場泥棒官僚マスゴミファッショ内閣国家騒乱テロ政治を殲滅せよ」

>検察最大の弱点は裏ガネ!特捜は廃止 ~検察が二人を放逐(Goodbye! よらしむべし、知らしむべからずさま)
>>http://c3plamo.slyip.com/blog/archives/2011/08/post_2160.html
>コメント転載(改変あり)

別のとこに書いたコメントだけど、こいつらもまったく同じことであり、辞職したなら起訴から逃れられない身分になったわけだから直ちに逮捕して特捜に強制捜査に入るべきだね。

>直ちに地位協定を破棄して反人道政治犯罪組織を断罪し解体せよ。断罪無き自主解体は刑事責任の所在をごまかすためであり、犯罪組織の常套手段である摘発逃れ・証拠隠滅・とかげのしっぽ切りであるから、必ずまず最初に厳しく断罪を行わねばならない。

投稿者 通りがけ : 2011年8月 2日 18:07

>▼大阪地検特捜部の不祥事を受けて、先日発表された東京、大阪、名古屋の三地検の特捜部改革は、独自捜査偏重の路線を見直して、国税庁などからの送致事件の対応を強化するという

ということは新たな省庁間横滑り利権を特捜は開発したということだなw
これからは泥棒官僚政府の復興税導入や消費税増額で脱税冤罪利権は超巨額の宝の山になるからw

なにが検察改革だ、笑わせるなって。法を曲げた冤罪共犯の最高裁法務省もろともとっ捕まえて検察全員牢にぶち込んでからいったん解体して全部作り直せ。

投稿者 通りがけ : 2011年8月 3日 06:07

冤罪共犯の最大の首魁マスゴミを書き忘れてたw
小沢氏側、まずは辞め検とマスゴミを告発し巨額の損害賠償(総額5000億円くらいかなw)を分捕って、全額福一の石棺化工事に投入するのがよかろう。

そのまえに地位協定破棄して思いやり予算5000億円で福一の地下ダム壁工事を突貫で完成させる。
同時に米国債を売り払って東北大震災の復興資金を50兆円ほど一気に投入する。
これらの3事業の緊急出資の原資には3つのうちどれを充ててもよいが、3つとも必ず国家の最大の強権を行使して絶対に確保すること。

すべての放射能被曝被害補償と除染原状回復は東電と保安院とすべての原発保有会社が全額を負担する。当然電力会社全滅するから直ちに発送電を分離して民間に開放する。

復興増税や消費税増額は一切認められないよ、国法(憲法)を曲げた菅内閣は全員逮捕してテロ行為国家騒乱罪で裁くからねw
(了)
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