老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

真の国民主権、基本的人権、平和主義を護るには

2013-07-29 09:43:12 | 憲法
日本国憲法は国民主権、基本的人権、平和主義が規定されていることに特徴があると言われ、この三つの基本原則を損ねる様な憲法改正は改悪であり、自民党の憲法改正案はまさに改悪であろう。

一方現行憲法で国民主権、基本的人権、平和主義が完全に保証されているかと言えば必ずしもそうとはとは言えない。それを確たるものにするには現憲法では不十分であり改善が必要である。

例えば安倍政権は8月から生活保護費を減額するらしいが、これに対して都知事選に立候補した宇都宮弁護士や「全国生活と健康を守る会連合会」は、全国の生活保護受給者に行政への不服申し立てを促し、棄却された場合は集団訴訟を起こす方針と報じられている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130727-00000007-asahi-soci
生活保護減額、一斉に不服申立てへ 集団提訴も視野、朝日新聞デジタル 7月27日

そこでこの問題について最終的に行政訴訟が起こされた場合に現行憲法で十分と言えるか検証して見ようと思う。そうすれば憲法改善の必要性が見えて来るはずである。

提訴する側は生活保護費の減額は憲法25条に抵触し、基本的人権の侵害という趣旨の訴状を提出するであろう。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

一方生活保護費の削減は先の衆参両議院選挙に勝利した安倍政権の方針でもあり、地方自治体も受給者の不服申し立てを認めれば総務省(安倍政権)の地方特例交付金減額のしっぺ返しの恐れがあり、安倍政権の生活保護費減額方針に従わざるを得ないであろう。よって訴訟は遅かれ早かれ時間の問題といえる。

そうなれば安倍政権と生活保護者の基本的人権(憲法25条)を巡っての裁判争いとなり、安倍政権としても絶対敗訴するわけにはいかない。しかし憲法は次の三つの条文で裁判官の人事権を行政府(内閣)に与えているから、内閣はやろうと思えば次期最高裁長官に内閣の政治信条に叶った人物を指名し、順次その他の最高裁判事も下級裁判所の裁判官も同じような任命ができるのである。

憲法第五条二項 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。

憲法第七十九条 最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。

憲法第八十条 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。

現在の竹崎最高裁長官の任期は2014年7月7日(70才)(ウイッキペディア)までで、次期最高裁長官は現長官の推薦を得て内閣が指名するのが慣習らしいが、安倍首相のことだから自ら人選するであろう。今後どうなるか最大の関心事である。


因みに以前紹介したことのある日本会議の現会長は元最高裁判所長官であった三好氏と紹介されている。その司法界への人脈を利用すれば安倍首相の意図する最高裁の裁判官の人選は容易であろう。

これでは憲法第七十六条三項に、「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」と唱われていても、このとおり実行できる裁判官は限定されるであろう。なぜなら過去に時の政府に不利な判決を下した裁判官は一生地方裁判所暮らしであることを見せつけられているからである。行政訴訟の判決にはこのような内閣の無言の圧力が司法にかけられているといっても過言ではない。民主党政権下では比較的原告(住民側)勝訴の判決が多くなったと感じていたが、自民党政権になりまた元に戻るのではあるまいか。

このように憲法上で司法と行政との関係を見ると司法は行政から完全に独立しているとはいえず、基本的人権が護られるているのは裁量権の広い憲法の条文上のことであり、今回の生活保護費の削減もいざ憲法25条の基本的人権を行政側と裁判で争うことになれば、上記のように裁判官の人事権が行政側にある以上、公正な裁判が保障されているとは言えない。国民主権もまた然りである。そうなると、「生活保護費が削減されたとしても、非正規社員の年収より多く、憲法25条に抵触するとは言えない」との判決を書く裁判官が出てくる可能性もあろう。

よって護憲と言うことは現状維持と言うことであり、行政訴訟で公正な裁判はいつまでも期待できないうことである。三権分立とは教科書上の教えで、日本国憲法では名ばかりであると言えよう。平和主義もまた然りである。それには日米安保条約を破棄して中立外交が現状よりベターと言えよう。よって護憲ではなく改善の為の先進的憲法改正が必要と思うところである。

余談であるが、日本国憲法で上記のように内閣が裁判官人事を握る規定がどうしてできたか想像するに、GHQが日本占領下で施政する過程で、日本を独立させた時に、左右どちらかの政治勢力に与するような裁判判決が下された場合を想定して、それを是正できるように内閣に裁判官の人事権を握らせておいたのではないか。それが自民党政権下では公害訴訟や薬害訴訟やハンセン病患者の隔離政策などで基本的人権が無視される判決が続けられる原因に繋がって行ったのではないかと思う。

最後に日本会議国会議員懇談会のメンバーをみると麻生財務大臣、下村文科大臣、岸田外務大臣、稲田朋美特命大臣、高市早苗自民党政調会長なども所属し、安倍首相の憲法改正への並々ならぬ執念が推し図れる。安倍首相はかつて懇意であった富士フィルム会長の古森氏をNHK経営委員長に抜擢した経緯もあり、裁判官人事へ影響を及ぼすのも時間の問題ではないかと思う次第である。

「護憲+BBS」「メンバーの今日の、今週の、今月のひとこと」より
厚顔の美少年

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