老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「三たびの海峡」

2012-09-26 10:01:35 | 戦争・平和
「サラの鍵」について、自国の恥部に向きあおうとする姿勢こそ、誇り・・・と書きながら、半年ほど前に読んだ「三たびの海峡」を思い出しました。日本にも、きちんと向き合おうとする人がいたのでした。

戦前、朝鮮から17歳で強制連行され、九州の炭鉱で奴隷のように働かされた主人公が戦争が終わって韓国に帰り、それから数十年後、あるきっかけで三たび海峡を渡り、若い頃苦渋を舐めた地を訪れます。

小説はその年月を交互に描きます。強制的に連れてこられる場面、炭鉱での場面、息をのむようなシーンが次々に出てきて、ぐいぐいと引き込まれました。そしてこれは在日韓国人の方が書いたのだろうか、まさか日本人がここまで書くことができるのだろうか、と思いつつ読み進めました。

帚木蓬生という福岡に住む日本のお医者さんが約20年前に書かれたものとわかったのは、読んでいる途中。正直言って驚きました。1995年に映画化もされたそうなのですが、知りませんでした。三國連太郎さん、南野陽子さんたちが出演されているそうです。

西日本新聞の「九州の百冊」というページの中の一部を紹介させて頂きます。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/book/kyushu100/2007/09/post_88.shtml

・・・ここから・・・

執筆の動機は北九州市内の病院に勤務中、在日の患者に多く出会ったことという。
「一番腹が立ったのは」。終始淡々とした口調を崩さなかった帚木さんが、ふと語気を強めた。「教育に対してです。曲がりなりにも文・理の教育を受けてきたのに、私は何一つ知らなかった」。
時根(小説の主人公)は語る。
〈自分の都合のよいように、粉飾したり改変を加えた歴史からは、束の間のつじつま合わせしか生まれて来ない。たとえそれがいかに心地よいものであっても、長続きはせず、いつかしっぺ返しが訪れるのだ。私は日本にそういう道を歩んでもらいたくはない〉
「誰かが時代のなかで書いておかなければならないことがある」と語る帚木さんはこれを「土壌を作る」と表現する。

・・・ここまで・・・

朝鮮・韓国の人々をどのようにして連れてきて働かせたのかを知らない若い人の中には「お金を稼ぐために自らやってきた」と思っている人も多いとか。

知識としては知っているであろう私たち世代の人間も、その知識を血の通ったものにするために、フィクションと切り捨てずに一読することを心から薦めたいと思います。せっかく作ってくれた土壌を荒れ地にしないためにも。

「護憲+BBS」「明日へのビタミン!ちょっといい映画・本・音楽・美術」より
コナシ

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