老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

21世紀を読む;米覇権の後退と多極化世界へ(1)

2018-08-01 13:45:35 | 安全・外交
1、転形期から争乱期へ(覇権の交替期へ)

以前からこの掲示板で何度も指摘してきたが、現在の世界は【転形期】であり、当分の間は、この転形期の混乱が続く。現在の世界の混乱は、世界が転形期から争乱期に入ったためだと認識できる。

※転形期から争乱期に入った世界
https://blog.goo.ne.jp/rojinto_goken/e/0de8de0783ebcf51c18cda07a1ed6ec6

歴史認識の違いはあるが、世界は、【覇権】の交替期に入ったと考えてそんなに間違いはないだろう。

※覇権⇒覇権とは「武力を使わずに他国に影響力を持つこと」である。支配という言葉から思い起こされる、武力によって他国を傘下に置く植民地、保護国、傀儡政権などは、覇権の範囲に入らない。・・・(田中宇 覇権の起源)・・

★覇権の本質

実は戦後日本のありようが、アメリカの「覇権の本質」の最も典型的な事例である。昨今はいささか変わってきたが、以前の日本人の大多数は、米から抑圧されているという自覚を全くと言って良いほど持っていなかった。

戦後の日本人にとって米国という国は、まばゆいばかりに輝く自由で豊かな国だった。戦前の抑圧された社会とは全く異なる社会の存在を国民に教えてくれたのが、アメリカという国家だった。かく言う私自身もアメリカが大好きで、野球、映画、音楽(ジャズやポップスなど)に血道をあげていた。アメリカの政治制度、歴史などもかなり勉強した。

このような日本への影響力の行使それ自体が、まさに【覇権】そのものなのである。

つまり、傀儡政権それ自体が、「覇権の結末」だともいえるのである。その場合、その影響力行使に武力を背景にした脅しが存在するかどうかは、覇権国の指導者の個性にもよるし、傀儡国家の指導者の個性にもよる。さらに傀儡国家の国民の【反米意識】の濃淡にもよるので、微妙な点である。

最近では、G7の会合やNATOの会合におけるトランプ大統領の振る舞いが、覇権国家としての米国の抑制した礼儀正しい振る舞いとあまりにもかけ離れた非常識で無礼なものであるため、トランプや米国に対する不満が噴出している。「覇権国家」には、「覇権」を受け入れている国家やその国民を納得させるだけの説得力と相手国を尊重しているというそれなりの礼儀が求められる。それを欠くと、「覇権国」は、覇権から降りなければならない。

よくよく世界を見ていると、明確に反米を掲げている国以外のあらゆる国の政府は、米政府からの注文や忠告を無視する事はしない。日本政府が米国政府要人の発言に一喜一憂している姿を思い出してほしい。これが「覇権国」とそれを受け入れている国家の「覇権の関係」を象徴している。

★覇権国の必要性

では、何故世界は、「覇権」という形式を必要としたのだろうか。簡明直截に言えば、圧倒的な武力があるから「覇権国家」になれるのであって、武力の弱い国は決して覇権国家にはなれない。だから、武力で支配すれば良いのに、何故回りくどい「覇権」のような方法を採るのか。

それは、七つの海を支配した大帝国【覇権国家】だったイギリスの植民地支配の方法論にその淵源がある。イギリスの植民地支配の方法論が、現在の【覇権】のありようの骨格を作った。

イギリスは君主制を採りながら、「歩きながら考える」というきわめて穏健な民主主義国家である。これは、主権在民という民主主義が国家の理想の姿だという近代国家の理念があるからである。

その建前を維持するためには、二つの点が重要になる。

①圧倒的な武力が必要⇒その武力を維持する圧倒的な経済力が必要。
②支配する国の内情を徹底的に調査し、把握する必要⇒【諜報活動】が必要⇒【諜報】は最も重要な覇権の手段⇒イギリス=M16 アメリカ=CIA

★諜報組織の重要性

経済力がさほど強くないイギリスが米国を支える「覇権国家」として世界に君臨できたのも、M16という諜報組織の力が大きい。イギリスが「覇権」をアメリカに譲ってもM16が米国のCIAを指導し、米国と一体となって諜報活動を行い、アメリカを助けてきたから、イギリスは影の覇権国家として存在し続けたのである。現在のイギリスはEU離脱などで経済的に困難な状況に陥るかもしれないが、世界に冠たる諜報機関が健在ならば、必ず生き残るだろう。

覇権国だったイギリスは、MI6(軍事諜報部、SIS)など世界最強の諜報機関を持ち、今もその「諜報力」はイギリスの国力の最重要の部分である。他の大国から機密や技術を盗み出し、それを金儲けに変えて国家の生き残りを画策できる。

「覇権国家」というものは、建前とは違うこのような隠された錬金術を持っている。それが覇権国家の所以であり、覇権国家以外ではなかなかできる技ではない。

★イスラエル諜報組織(モサド)の影響力拡大

ところが9.11以降、その役割はイスラエルの諜報機関(モサドなど)が担っている。イスラエルの諜報機関は中東情勢に精通していたからである。現在のトランプ政権の中東政策を仕切っているのはイスラエル。周囲が敵ばかりのイスラエル。彼らが生き残れてきたのは、【情報収集能力】。モサドはその中核である。彼らの諜報能力は半端ではない。同時に、要人暗殺など汚れ仕事も厭わない。米国の手法がだんだん荒っぽくなっているのもイスラエルの影響かもしれない。

ここまでは、現在起きている世界の混乱の最大の要因は何かを理解する前提である。

2、軍産複合体とは何か

なぜ、詳細に「覇権」の在り方を書いたかというと、現下の国際情勢を理解するキーワードが【軍産複合体】だからである。

・・「軍産は、米国の諜報界を中心とする「スパイ網」で、第2次大戦後、米政界やマスコミ、学術界、同盟諸国の上層部に根を張り、冷戦構造やテロ戦争(第2冷戦)の世界体制を作って米国の覇権体制を維持してきた。」・・田中宇 (軍産の世界支配を壊すトランプ)・・・

つまり、【軍産複合体】というのは、アメリカの【覇権】を支える中枢であり、頭脳であり、手足であり、富を生み出す魔法の杖でもある。これなくして米国の【覇権】は成立しない存在である。

また、イスラエルのロビー活動の影響も無視できない。アメリカ政府の政策決定に甚大な影響力を行使している。莫大な資金を使い、多くの議員に献金している。さらに、9・11以降、イスラエルの諜報機関がアメリカ諜報機関に影響力を増している。現在のアメリカ政府の政策決定におけるイスラエル・ファクターを無視してはアメリカ政府の方向性が理解できない。

★メディアに対する影響力(フェイク ニュースの存在)

現在日本で流されている世界のニュースの大半は、これら様々な国や機関の利害が集中している軍産複合体の見方にそって流されている、と理解しなければならない。なぜなら、欧米メディアの大半は軍産複合体の影響下にあり、多かれ少なかれ、アメリカ「覇権体制」の維持発展に資するニュースを流している。

トランプ大統領がアメリカメディアとの関係が非常に悪いと言う事は、彼が「軍産複合体」の意向にそぐわない人物だと言う事を示している。トランプ大統領のロシアゲート疑惑も、元をただせば、ヒラリー・クリントンが私用メールを公的な仕事に使った、という疑惑に端を発している。この疑惑がヒラリーの得票を減らし、トランプ大統領の当選を促した結果になった。この疑惑を拡散するのに、ロシアの関与があった、というわけである。

そして、ヒラリー・クリントン女史は人も知る典型的新自由主義者でネオコン。「軍産複合体」の強い影響下にある人物。この一事をもってしても、トランプ大統領と軍産複合体の確執が理解できる。トランプ大統領は軍産複合体の星を落選させたのである。

この視点から米国政治事情を見ると、日本国内で流布されているアメリカ政治のありようがかなり変わって見えてくる。ロシアゲート疑惑もトランプ大統領の致命傷にはならない可能性が高い。

3、アメリカ国内の政治的立場の相違

米国内には、二つの立場がある。
(1)唯一の【覇権国家】あり続ける。
(2)米国が唯一の【覇権国家】であり続ける戦後の世界体制の変革を考える⇒覇権の一部を米国以外の国に譲り渡す⇒覇権の多極化

軍産複合体は当然(1)の立場である。この軍産支配が続けば、BRIC’Sと呼ばれた新興国などの経済発展が「経済制裁」の名のもとに阻害される。世界の健全な経済成長を図る立場から言えば、(1)のアメリカが唯一の覇権国家である立場から脱却する以外ない。

日本では無批判に報道されているが、アメリカ主導の【経済制裁】の下でどれだけの国家が成長の目を摘まれたか。トランプ大統領の出現で、アメリカの「経済制裁」というものの本質が明確に見え始めた。

具体的に言うと、北朝鮮への制裁は曲がりなりにも国連安保理決議を経ているが、イランへの制裁は、安保理決議を経ていない。それどころか、多くの国が反対である。それでもアメリカはイランへの経済制裁を実行しようとしている。これが覇権国家のやり口。一言で言えば、アメリカの覇権を維持することに邪魔な国家に対して発動されたり、反米国家に発動されるものだと言う事である。

「唯一の覇権国家」アメリカを維持する立場から言えば、アメリカ以外の世界の全ての国家が経済的に貧困国であるのが理想。そうすれば、アメリカの立場を危うくする国は出てこない。全ての国がアメリカを頼り、アメリカの顔色を窺う。そうなると、常に米国の主張が世界の主張として通る。これが軍産の利潤を最大化する最善の方策。つまり、世界に冠たる「経済国家」建設がその要諦になる。

その最大の強みである経済強国の立場を脅かししているのが、日本やドイツ。そして、BRIC’Sなど新興諸国。今や米国は国内の製造業などは壊滅状態。米国経済はIT産業と軍需産業、基軸通貨としてのドルの威力で持っていると言っても過言ではない。

だから、製造業や農業などの国内産業の不満はたまる一方。覇権国家でない普通の国家は、血のにじむような企業努力でその危機を乗り切ろうとするが、アメリカは違う。覇権国家としての強みを生かし、他国の些細な非違をあげつらい「経済制裁」を課して競争相手を潰す。

今、トランプ大統領がなりふり構わずやろうとしている「貿易戦争」は、これまでのアメリカのやり口の総集編的方法である。アメリカが主導して作り上げた国際貿易のルールや機関(WTOなど)を無視して、自国の都合を押し付ける。覇権国家でなければ、そんな無茶で理不尽なやり口を強行する国は、国際社会によって潰される。アメリカだからできる。

このやり口を見れば、アメリカという国家は、民主主義国家などではなく、本質的にタイラント(暴君)だと言う事がよく理解できる。

★ロシアの立場

ところがソ連時代からそうだったが、ロシアは「覇権の多極化」にきわめて積極的。特にプーチン大統領になってからのロシアは、ゴルバチョフやエリチン時代に失った旧ソ連の栄光の回復に積極的。

簡単に言うと、ゴルバチョフもエリチンもアメリカに良いように騙された。旧ソ連邦諸国にはNATOの影響力を拡散しないという約束を反故にされ、今やロシアの喉首にまでNATOのミサイル基地が建設されている(東欧各国で行われたカラー革命など)。

KGB出身で、アメリカの凄さも狙いもよく知っていて、旧ソ連時代の栄光もよく知っているプーチン大統領には、それは我慢できない屈辱である。その為、プーチン時代のロシアは、軍備力を整備し、その力を増している。はっきり言うと、覇権の多極化こそプーチン大統領の究極の目的だろう。

★軍産複合体とロシアの確執

と言う事は、軍産複合体にとって、きわめて不都合で不愉快な存在。軍産はロシアに対し厳しい敵視政策を行っている。以前にも書いたが、2014年のウクライナ危機は米諜報機関がウクライナ国内のネオナチと結んで起こした政変。資金は、ジョージ・ソロスが出したとされている。(わたしの読んだ資料では約10億ドル)

同様なことをクリミア半島(ロシア海軍基地がある)で行おうとしていることを事前に察知したプーチン大統領が、国民投票を経てクリミアをロシアに併合した。

クリミア危機は、その背後に米軍産複合体とロシアの【覇権】をめぐる対立がある。一方的にロシアを悪者にする見方は、軍産複合体のプロパガンダに乗せられる危険性が高い。

★軍産の得意技=濡れ衣作戦

わたしたちがよく知っておかねばならないのは、軍産や諜報機関が得意な方法に、【濡れ衣】作戦というプロパガンダの手法がある。イラクのフセイン大統領やリビアのカダフィやシリアのアサド大統領などに浴びせられた極悪非道な独裁者という【濡れ衣】が、彼らを国際的に孤立させ、米国の侵略行為を正当化した。

米軍産の力は非常に強く、欧米各国や日本メディアなどに強い影響力がある。それらをフル稼働させて、軍産複合体の利益を最大化させる戦争の正当化を行ったのである。(イラク戦争前のフセイン悪人説キャンペーンを思い出してほしい)

※つまり、現存する世界の危機の大半は、軍産の利益を最大化するためのプロパガンダの一環だという事を冷静に認識し、対処しなければ、国の方向を誤る。覇権国家でない国の指導者は、覇権国家の指導者以上の知性と理性と冷静な判断力が求められる。

★覇権の多極化

覇権の多極化を考える(2)の立場は違う。米国内では、軍産のふりをして、軍産内に入り込み、ベトナムやイラクのような無謀な戦争をしかけ、破滅的な失敗を行い、軍産複合体の弱体化を図る。当然だが、このために数百万規模の人命が失われた。それでも、米国内の軍産の勢力はなかなか弱体化しない。

一説によると、軍産複合体企業から献金を受けている政治家の数は、アメリカ国内でも優に400人を超えているそうである。さらに、彼らが影響力を行使できるNATO諸国、日本、韓国などアジア諸国、中南米諸国などの政治家などを加えると膨大な数に上るはずである。

アイゼンハワー大統領が退任するとき、軍産複合体の危険性を予言し注意を喚起したが、時すでに遅し。彼の危惧がそのまま具現化しているのである。

「護憲+BBS」「安全・外交政策を考える」より
流水

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