老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

「日本はなぜ、『戦争ができる国』になったのか」を読む(その2)

2024-05-04 09:54:30 | 安全・外交
1,はじめに

前回のコラムにつづき、今回も矢部宏治氏の著書「日本はなぜ、『戦争ができる国』になったのか」を元に、私の疑問である「憲法のミステリー」(謎解き)に迫ります。前回のように矢部さんの本の紹介なら、読者に読んでもらえば済む話なので、自分の「理解」に限定しての投稿になります。

その理解の一端を言うと、矢部さんの本が出る以前には、憲法学者たちが「謎」として意識しておらず、まして一般国民は「米軍基地」の多さとアメリカとの関係だけが突出していることに慣れっこになっていて、学者もそれを受け入れていた節があり、今回の著書の解読では、「日本人というのが、怠惰な国民である」との認識でした。(憲法のこれからの命運ぐらいには関心をもてや、という意味です。)

2,憲法の起草者であるマッカーサーの最初の構想に関して

矢部氏の本の見出しでは、『戦後世界の新しい理想、国連軍構想』となっていて、そこで、日本近代史研究の権威、ジョン・ダワー氏は、「マッカーサーの構想では、日本の「非武装中立」は、沖縄を含む太平洋の主要な島々に、国連軍を配置することによって守られることになっていた」と述べています。(「昭和」ジョン・W・ダワー著・みすず書房)

矢部氏が言うように、マッカーサーは、「国連軍」という今では聞きなれない「軍」を配置して、軍事力を持たない日本の防衛を維持するという、今となっては「信じれれないような」構想をしていたというのです。
しかしながら、矢部氏が続いて言うように、このマッカーサーの「国連軍」構想はあっけなく実現不可能になってしまいました。

次に、矢部氏は、日本の安全保障が持つ二つの側面に関して、重要な問題点を指摘しています。
NATOの太平洋版として構想された「太平洋協定」に関してです。

日本の憲法学が軽視しているような構想ですが、(もちろん、政府も)つまり「太平洋協定」というのは、通常の安全保障協定の役割を持つと同時に、日本が占領の終結後、再び侵略的な軍事行動をとるようになったらどうするのだという、近隣諸国の強い軍事上の不安に配慮した構想でもあったという。

3,この「太平洋協定」の構想も現在ではかなり重要な問題点になっていますが、(政府は麻生太郎副総裁に、「台湾有事」を強調する如きの、「戦う覚悟」、と言わせている)、今回コラムでは、マッカーサーの「国連軍」構想が実現せず、なぜ、米軍基地というアメリカ軍の在留継続となっているのか、その「謎解き」に論点をシフトします。

この著書の見出しでは『1,朝鮮戦争直前-マッカーサー・モデルの崩壊』として、次のように述べる。

『これから検証する。「米軍=国連軍」→「米軍アンチ≒国連軍」というプロセスはある意味では、「マッカーサー・モデル」の崩壊プロセスということもできるでしょう。
その劇的な最初の崩壊が起こったのは、朝鮮戦争が始まる2日前、1950年6月23日のことでした。この日に書いた覚書(6・23メモ)の中で、マッカーサーは
①日本全土が、米軍の防衛作戦のための潜在的基地とみなされねばならない。
②米軍司令官は軍の配備をおこなうための無制限の自由を持つ。
③日本人の国民感情に悪影響を与えないよう、米軍の配備における重大な変更は、米軍司令官と日本の首相との協議なしには行わないという条項をもうける。しかし、戦争の危険があり場合はその例外とする。』

(続けて)

『「えー、なんだこの条文は」と思われたかもしれません。(中略)われわれ日本人にとって信じがたいことですが、あの滅茶苦茶な米軍の特権を定めた条文の執筆者は実は、「日本の本土には絶対に基地を置かない」と言い続けた、マッカーサー本人だったのです。いったいどうして、こんなことが起こってしまったのでしょうか。』

引き続き、矢部氏は、マッカーサーの「方向転換」の謎を解明して、次にように述べる。

『しかし、占領終結後も米軍(占領軍)が日本の本土に駐留し続けることは、「占領の目的が達成されたらに占領軍は直ちに日本から撤退する」と書かれたポツダム宣言に、完全に違反します。(中略)
そのため彼は、それまで自分が行ってきた占領政策と、なんとか矛盾しないかたちで日本本土への駐留を認められないか、頭をひねっていたのです。』

そんなマッカーサーに絶好の知恵を与えたのは、やはりダレスでした。

4,ダレスのアドバイス「国連憲章43条と106条を使えばよいのです。」

矢部氏は本文の中で、上記のように、マッカーサー元帥にアドバイスをしたと言うが、それは矢部氏の想像であるとして、次のように結論づけている。本文の見出しでは『「国連軍のようで国連軍ではない」在日米軍の誕生』となっている。
曰く
『つまり、正規の国連軍ができないあいだは、国連憲章の中にある「暫定条項(106条)」を使って、日本が「国連のようなアメリカ」とのあいだに「特別協定のような二か国協定(=旧安保条約)」を結んで、「国連基地のような米軍基地」を提供すればよい。それは国際法のうえでは合法です。」とダレスは言っているのです。
そして、その結果、マッカーサーは心を痛めることなく、「日本の国土全体を米軍の潜在的な基地とする」という基本方針を執筆することができたのです。』

上記の矢部氏のまとめで、長年の「謎」が氷解しました。

それと、私が疑問を抱いていた、「国際連合」というアメリカに本部を持つ国際機関の「正体」の謎解きもこの本で書かれていました。
矢部氏は、169頁の見出しで、次のように書いている。
『国連は自分がつくったと考えていたダレス(ジョン・フォスター・ダレス国務長官)』

矢部氏の著書で、なぜ米軍が占領後も日本本土と沖縄に駐留しているのか、そして、治外法権を持つが如きの、外国の軍隊が日本の主権でもある制空権まで権利として掌握できるのか、「謎」は解明されたのである。

「護憲+コラム」より
名無しの探偵

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