老人党リアルグループ「護憲+」ブログ

現憲法の基本理念(国民主権、平和、人権)の視点で「世直し」を志す「護憲+」メンバーのメッセージ

緩やかな連帯

2008-12-29 17:27:00 | 社会問題
アメリカの金融危機に端を発した市場の混乱は全世界を席巻し、新自由主義の破綻もささやかれる中、今年も残すところあと2日となって巷には職を失い宿舎を追われる人々があふれています。厚生労働省では来年3月までに8万5千人の非正規労働者が職を失うと予測していますが、その先鞭を切ったのが日本最大の企業トヨタ自動車の派遣切りなのだから皮肉なものです。
 
当事者の一人フリーターの赤木智弘氏は、『論座』07年1月号に”丸山真男をひっぱたきたい 希望は、戦争”と寄稿してリベラルを挑発しました。冷静な計算の元に書かれたことは、そのブログに各種資料が丹念に集められているのを見ても明らかで、応答したのは佐高信、奥原紀晴、若松孝二、福島瑞穂、森達也、鎌田慧、斎藤貴男、そして鶴見俊輔、吉本隆明各氏というそうそうたるメンバーでした。

これを敷衍する形で彼は『若者を見殺しにする国』を発刊、「私があれを寄稿した時に期待したのは、物書きとして仕事が来ること、それはこうして自分の書いたものが本になったり、雑誌や新聞に書かせてもらったり、対談などをしていることで、ある程度実現しています」。
 
しかしだれも就職の世話も融資の斡旋もしてくれなかったとして「経済界がフリーターや派遣労働者の雇用に対して、自己責任とか努力しろと弱者に責任を押し付け、結局は正社員として雇わないように、左派だって企業や国の責任は口にするけれども、じゃあ現実に雇用を確保してくれるのかといえば、そんなことはしない」と決めつけました。いささか八つ当たり気味とはいえ、年金ぐらしの身にとって痛い指摘ではあります。

「自民党をぶっ壊す」「聖域なき構造改革」という威勢の良いスローガンを信じて84%もの人が支持した小泉内閣の進めたのは、労働者派遣法の、福祉の、教育の、医療の「改革」であり、貧富の差は大幅に拡大し、古来からの「乏しきを憂えず 等しからざるを憂う」心は遠ざかるばかり。

だからといってあせるのは禁物、第一次世界大戦後のドイツや、1929年の大恐慌のあとの日本のように、ファシズムの到来を招く恐れがあります。弱者が緩やかに連帯して事態の改善を目指すしかないのではないでしょうか。

「護憲+コラム」より
宮天狗 
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ヒラメ裁判官のメッセージ(広島地裁・生活保護の母子加算、廃止容認)

2008-12-29 11:01:35 | 社会問題
12月25日広島地裁(能勢裁判長)は、広島県内32人の住民が減額処分の取り消しを求めた裁判で、「高齢者や一人親世帯を対象にした生活保護費の老齢加算と母子加算を国や県・市が段階的に減額しても、生存権を保障した憲法25条には違反しない」として住民の訴えを退けたと、同日の朝日新聞夕刊は伝えている。
http://www.asahi.com/national/update/1225/OSK200812250020.html

これも典型的な行政訴訟であるが、これら老齢加算と母子加算の廃止も、政府の社会補償費の年間2200億円の減額のあおりを受けたものであることは明らかである。それにも拘わらず、判旨の概要は「老齢加算に付いては、廃止されても最低生活が満たされない事態をもたらすとはいえない」また「母子加算については、一般世帯の支出総額と比較して加算に相当する程の特別な需要があるとは言い難い」と報道されている。

一体裁判官は何を基準にそのような判断をしたのであろうか。一般的に大方の裁判官は官舎住まいと云われている。税金で建てられた官舎に住んでいながら、よくこのような判旨が書けるものである。果たして民間並の家賃を支払って入居しているのであろうか、とも言いたくなる。おそらくこのような判決をしていれば、将来の昇進と退官後の叙勲は間違いないのであろうが、被害者は国民である。

ところで、「ヒラメ裁判官には成るな、上級審の動向や裁判長の顔色ばかりうかがう裁判官は不要」と新任の裁判官に訓辞したのは、町田元最高裁長官である。また住基ネット差し止め訴訟でその言に殉じた大阪高裁裁判官もいた。当該行政訴訟で勇気ある違憲判決を下した竹中省吾氏は、四面楚歌となり自殺されたのであろうか。住基ネットには国民の大多数も反対しているのに誠に残念である。

これまでのヒラメ裁判官の裏メッセージを総括してみれば、詰まるところ10年毎の裁判官の任期更新の指名権が最高裁判所長官にあり、内閣に任命権があることが憲法で決められている以上、行政訴訟で国民勝訴の判決を出したくても出せない、と云う裁判官の本音と、国民が勝訴したいのであれば、自民党政権を選挙で変えた方が早いですよ、とのメッセージが聞こえてくるのである。

今年も何人かの最高裁判所の判事が任期満了で退任し、その後任に元外務省官僚と元厚労省官僚出身者が内閣に任命されている。イラク特措法による自衛隊派遣の名古屋高裁判決は外務省にも一部関係があり、今回の老齢加算と母子加算の廃止も厚労省管轄であり、将来最高裁まで上告されてきたときの備えの人事と見れば分かりやすい。これらの人事に内閣が何を期待しているか、下級裁判所の判事が洞察できないはずがない。

今回の判決も明らかに行政よりの判決であるが、例えば原告勝訴にした場合、政府の年間2200億円の社会補償費の減額を断罪することになり、総選挙を控え、政府与党に致命的な判決になりかねない。そうなれば裁判官は一生どさ回りで終わることも想定されるであろう。

この判決の中でも、老齢加算をめぐる問題について「政治的、社会的な問題として解決されるべき事柄」の一文がある。やはり、行政訴訟で国民が勝訴するには、次の総選挙で与野党逆転を目指すのが早道のようである。

「護憲+BBS」「裁判・司法行政ウォッチング」より
厚顔の美少年
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