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或る大阪近鉄バファローズファンの
偏愛と放浪の記録

「ケンブリッジ・シックス」(著:チャールズ・カミング/訳:熊谷 千寿)

2018-09-12 23:40:11 | 【書物】1点集中型
 刊行された当初に本屋で見かけて、気にしていたものの読んでいなかった本。タイトル通り、ケンブリッジ・ファイブには実は+1あったという、圧倒的に興味をそそられる題材。その謎の6人目について調べていた友人のジャーナリストの急死によって、ロシア史を専門とする学者である主人公がその後を引き継ぐ形になったものの、どうやらきな臭い方向に……とかいう話。
 個人的にはちょうどここ数年で「ケンブリッジ・スパイ」とか「SS-GB」「THE GAME」とかのとかそれ系のドラマを見る機会もあったし、キム・フィルビーの人物伝を読む機会もあったことも大きい。

 ジャーナリズムとのつながりを多少は持つ学者とはいえ、諜報活動とは無縁だった一般人がほぼ丸腰でSIS(MI6)やロシア側の刺客に立ち向かわざるを得なくなる。その事態からするとけっこうアクションぽくもなるのかなと思ったんだけど、そこはそうでもなく、謎解きと化かし合いがメイン。
 ……なんだけど、「6人目」の正体は意外と早めにわかってしまったのには若干、肩透かしを食らった。もともとはその正体を探すのが目的だったから、結局どこをめざしていたのかともいう感じにもなった。タイトルからしてもっとケンブリッジ・ファイブの内幕にも踏み込んだ物語があるのかなと勝手に想像していたから、その意味ではちょっと物足りなさがある。とはいえ、ロシア側のかなり上の方が絡んできた点は意外性もなくはなかったので、実はどちらかというとそこに主題があったのかもしれない。

 で、追いつ追われつの展開の結末も、最後には、それで解決してしまっていいのか? という取引だったりして。それ結局後日消されちゃったりしないの? とか余計な心配をしてしまった。まあでも、不穏でおさまりの悪い最終章はいかにもイギリスのスパイものらしい、ちょっとニヤリとさせられる感じで良かったけど。