どーしても見たかったのですよこれが。一目惚れだったのです、加山又造作品。出会いをくれた日経さんありがとー。(日経ネットの告知で知ったんで)
最終日の前日のわりには、思ったほどぎゅうぎゅうではなかったです。まあ早めに行ったからかもしれないし、それでも混んでないわけじゃなかったですが。午後になったらもっと増えてきた感じはしましたし。
初期の動物モチーフは洋画寄りです。キュビスムやシュルレアリスムという言葉がぱっと浮かぶ感じ。
規則正しい線がひたすら並び、絡み合い、果ては動物たちそれぞれまでもが溶け合うように、透けるように重なり合っています。ある種無機的でもあるんだけど、画面中にひっそりと満ちる憂いが独特の世界を作り上げていると思います。
あの「冬」は烏や痩せた狼の姿はもとより、凍てつく山肌に無数に立ち並んだ裸木の線だけでも見とれちゃうし、「木枯」はまるで金と黒と赤で展開する宇宙。同心円を描くように羽ばたき昇っていくような鳥たちは、何を目指して行くのでしょうか。
そして猫。毛の1本1本まで見せるように描かれた上品な毛並み。でも瞳がくりくりで、どこかコミカルにも見える愛らしい表情をしています。その愛らしさが、画面左上の大きな牡丹の花弁の精緻なあでやかさに、軽やかに転調を与えているように見えました。
牡丹はいくつかの作品に見られたモチーフでしたが、その名も「牡丹」という屏風の圧倒的なことと言ったら。
金地の右に大輪の白牡丹、左には大胆に黒い花弁の牡丹を配しています。葉も水墨のようにモノクロで描かれているので、中心に薄く紅を掃いた白牡丹だけがカラーの世界ということになるかと思いますが、白い牡丹も黒い牡丹(本当は真っ赤なんでしょうかね)も同じだけの存在感を持ってます。
さらには桜と波と紅葉(と松と月)を、金泥銀泥、金箔をふんだんに散らして描いた、絢爛豪華の一言に尽きる「春秋波濤」。「雪」や「天の川」、「七夕屏風」などもそうですが、異なる季節や場面をひとつの画面に盛り込んで、自在に物語を描いています。まさに時空を超えた無限の宇宙がそこにあります。
枝垂れ桜と月、地を這うように枝を広げた桜と篝火、それぞれの幽玄がある「夜桜」2点。秋草と、噴煙たなびく火山を浮かび上がらせる「満月光」。明らかに静止画像として切り取られた動きのない「瞬間」の画なのに、波の轟く音が響き渡るような「月光波濤」。一瞬の異空間が、自分の周りに突如として出現するような錯覚さえ感じます。
そして何と言っても、「日本画にこういうアプローチもあるんだ!」と目から鱗なのが裸婦シリーズです。(いや、そうは言っても美術には全然素人なんですけど)
浮世絵に通じる細い線描の輪郭に、ごく僅かな濃淡で描かれたしっとりと滑らかな肌の質感。輪郭線の細さに呼応するような繊細なレースの線は全てが身体に沿って描かれているわけではなく、「平面」にプリントしたような感じで、腰のくびれなどほんの一部分だけ着衣のような皺が寄っている程度なのですが、それが却ってデザイン性を醸し出しているのではないかと感じました。
さらに裸婦の目もと、唇、つま先だけを鮮やかに彩る紅と相まって、ファッション誌の表紙を飾っていそうなアヴァンギャルドでスタイリッシュな雰囲気も感じられるのが「黒い薔薇の裸婦」。デカダンス的なイメージも感じるかな。
対照的に「白い薔薇の裸婦」は目もととつま先が青く彩られていて、敢えて肌に日焼けあとを描いたり、切り下げの髪型にも少し動きが感じられることもあり、「黒い――」とは違うちょっとした躍動感なんかも見える気がします。
「はなふぶき」「はなびら」は「薔薇」シリーズとは違って、裸婦そのものに大きな動きを与えています。桜の花吹雪の中で舞う裸婦の姿は、まるで花から迷い出た精か、妖艶なあやかしのよう。
「『美』とは特別なものではなく、普段の生活の中で生かされるべき」という考えから生まれた食器や着物の絵付け作品は、本当にその想いの通り、手元に置いておきたい作品ばかり。これもまた「アーツ&クラフツ」なんだなあ、と思います。図案も最早グラフィックデザインの域に入っているデミタスセット「Cat」「春夏秋冬」には惚れ惚れです。かわいいっ。
卓越した技術と、独自の発想と想像力。一言で言うならすべてが「加山又造」以外の何ものでもなく、すべてが圧倒的な存在感でこちらの意識に迫ってきました。ああなんで今まで加山氏の作品に出会えなかったんだろう、というのが本音(笑)。もったいないことしたなぁ。またどこかで目にできるといいな。
話は全然別ですが、品川のecuteに寄ったら代官山の「plastole(プラストール)」が出店してました。今回初めて見たんですが、素敵でした! 今回は春物をメインに出していたようで、色も爽やかなのが多かったしデザインもなかなか他では見ないのがあったり。欲しいなぁとも思ったのですが、バリエーションがいろいろありすぎて逆に迷いすぎて結局手を出さずじまい……。でも、機会があったらお店にも行ってみたいところです。代官山ってだけで気後れしないでもないけど。(笑)
最終日の前日のわりには、思ったほどぎゅうぎゅうではなかったです。まあ早めに行ったからかもしれないし、それでも混んでないわけじゃなかったですが。午後になったらもっと増えてきた感じはしましたし。
初期の動物モチーフは洋画寄りです。キュビスムやシュルレアリスムという言葉がぱっと浮かぶ感じ。
規則正しい線がひたすら並び、絡み合い、果ては動物たちそれぞれまでもが溶け合うように、透けるように重なり合っています。ある種無機的でもあるんだけど、画面中にひっそりと満ちる憂いが独特の世界を作り上げていると思います。
あの「冬」は烏や痩せた狼の姿はもとより、凍てつく山肌に無数に立ち並んだ裸木の線だけでも見とれちゃうし、「木枯」はまるで金と黒と赤で展開する宇宙。同心円を描くように羽ばたき昇っていくような鳥たちは、何を目指して行くのでしょうか。
そして猫。毛の1本1本まで見せるように描かれた上品な毛並み。でも瞳がくりくりで、どこかコミカルにも見える愛らしい表情をしています。その愛らしさが、画面左上の大きな牡丹の花弁の精緻なあでやかさに、軽やかに転調を与えているように見えました。
牡丹はいくつかの作品に見られたモチーフでしたが、その名も「牡丹」という屏風の圧倒的なことと言ったら。
金地の右に大輪の白牡丹、左には大胆に黒い花弁の牡丹を配しています。葉も水墨のようにモノクロで描かれているので、中心に薄く紅を掃いた白牡丹だけがカラーの世界ということになるかと思いますが、白い牡丹も黒い牡丹(本当は真っ赤なんでしょうかね)も同じだけの存在感を持ってます。
さらには桜と波と紅葉(と松と月)を、金泥銀泥、金箔をふんだんに散らして描いた、絢爛豪華の一言に尽きる「春秋波濤」。「雪」や「天の川」、「七夕屏風」などもそうですが、異なる季節や場面をひとつの画面に盛り込んで、自在に物語を描いています。まさに時空を超えた無限の宇宙がそこにあります。
枝垂れ桜と月、地を這うように枝を広げた桜と篝火、それぞれの幽玄がある「夜桜」2点。秋草と、噴煙たなびく火山を浮かび上がらせる「満月光」。明らかに静止画像として切り取られた動きのない「瞬間」の画なのに、波の轟く音が響き渡るような「月光波濤」。一瞬の異空間が、自分の周りに突如として出現するような錯覚さえ感じます。
そして何と言っても、「日本画にこういうアプローチもあるんだ!」と目から鱗なのが裸婦シリーズです。(いや、そうは言っても美術には全然素人なんですけど)
浮世絵に通じる細い線描の輪郭に、ごく僅かな濃淡で描かれたしっとりと滑らかな肌の質感。輪郭線の細さに呼応するような繊細なレースの線は全てが身体に沿って描かれているわけではなく、「平面」にプリントしたような感じで、腰のくびれなどほんの一部分だけ着衣のような皺が寄っている程度なのですが、それが却ってデザイン性を醸し出しているのではないかと感じました。
さらに裸婦の目もと、唇、つま先だけを鮮やかに彩る紅と相まって、ファッション誌の表紙を飾っていそうなアヴァンギャルドでスタイリッシュな雰囲気も感じられるのが「黒い薔薇の裸婦」。デカダンス的なイメージも感じるかな。
対照的に「白い薔薇の裸婦」は目もととつま先が青く彩られていて、敢えて肌に日焼けあとを描いたり、切り下げの髪型にも少し動きが感じられることもあり、「黒い――」とは違うちょっとした躍動感なんかも見える気がします。
「はなふぶき」「はなびら」は「薔薇」シリーズとは違って、裸婦そのものに大きな動きを与えています。桜の花吹雪の中で舞う裸婦の姿は、まるで花から迷い出た精か、妖艶なあやかしのよう。
「『美』とは特別なものではなく、普段の生活の中で生かされるべき」という考えから生まれた食器や着物の絵付け作品は、本当にその想いの通り、手元に置いておきたい作品ばかり。これもまた「アーツ&クラフツ」なんだなあ、と思います。図案も最早グラフィックデザインの域に入っているデミタスセット「Cat」「春夏秋冬」には惚れ惚れです。かわいいっ。
卓越した技術と、独自の発想と想像力。一言で言うならすべてが「加山又造」以外の何ものでもなく、すべてが圧倒的な存在感でこちらの意識に迫ってきました。ああなんで今まで加山氏の作品に出会えなかったんだろう、というのが本音(笑)。もったいないことしたなぁ。またどこかで目にできるといいな。
話は全然別ですが、品川のecuteに寄ったら代官山の「plastole(プラストール)」が出店してました。今回初めて見たんですが、素敵でした! 今回は春物をメインに出していたようで、色も爽やかなのが多かったしデザインもなかなか他では見ないのがあったり。欲しいなぁとも思ったのですが、バリエーションがいろいろありすぎて逆に迷いすぎて結局手を出さずじまい……。でも、機会があったらお店にも行ってみたいところです。代官山ってだけで気後れしないでもないけど。(笑)