非国民通信

ノーモア・コイズミ

未来志向?

2010-08-11 22:59:10 | ニュース

日韓併合に「反省とおわび」=王朝文書引き渡し表明―首相談話を閣議決定(時事通信)

 政府は10日午前の閣議で、日韓併合100年に当たっての首相談話を決定した。談話は1995年の「村山首相談話」を踏襲し、「植民地支配がもたらした多大の損害と苦痛に対し、改めて痛切な反省と心からのおわび」を表明するとともに、「これからの100年を見据え、未来志向の日韓関係を構築していく」と強調。朝鮮王朝の主要行事を絵や文章で記録した古文書で、日韓併合後に日本に渡ったとされる「朝鮮王朝儀軌(ぎき)」を引き渡す方針も明らかにした。

 菅直人首相はこの後、韓国の李明博大統領に電話し、談話の内容を伝えた。大統領は謝意を示した上で「将来のより強い関係を築くことができる」と歓迎した。

 民主党政権下で、歴史認識に関して政府が見解を示したのは初めて。首相は謝罪の意思を改めて明確にすることで、菅内閣のアジア重視の姿勢を示し、日韓関係の進展につなげたい考え。ただ、与野党内には、65年の日韓請求権協定で決着した請求権問題が「再燃しかねない」との慎重論があり、今回の談話には批判も出そうだ。

 さて、首相談話が発表されました。まぁ村山談話に毛が生えた程度のものですが、与党内部からも色々と批判はあるようです。とりわけ朝鮮半島から持ち出した古文書の返還に関しては、請求権問題を再燃させかねないとして慎重論という名の反対論が強いようでもあります。しかし政府間で請求権に関する過去の合意があったからと、そこから半世紀経っても一切の動きを許さないとしたら、これまた随分と頭の固い話です。それこそ絵に描いたようなお役所仕事というものでしょう。

 それはさておき、「未来志向の日韓関係を構築していく」そうです。この「未来志向」という言葉はこのような談話における決まり文句としてすっかり定着していますけれど、ただ加害者側が口にして良いものなのかと、常々疑問を感じないでもありません。侵略した側が過去の行為を反省し、侵略された側が「未来志向で」というなら自然な流れです。しかし侵略した側が「未来志向」と言うのは、少なからず過去への反省を終わらせようとする意図を感じさせるものではないでしょうか。

 たとえば、北朝鮮との拉致問題を考えてください。北朝鮮政府が拉致問題に関して過去の行為への反省を語りつつ、今後は「未来志向の関係を」と呼びかけたとしたら、日本サイドはどのように反応するでしょう? 70年前の加害の歴史に言及する時、日本側は「未来志向」を口にします。しかし自らが被害を被った件に関しては、一向に「未来志向」を語ることができていません。それでいて他国には「未来志向」を要求するとしたら、それが決まり文句であるにしても些か無神経ではないかという気がします。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (9)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

要するに美人だから

2010-08-10 22:58:40 | ニュース

うなずき 【美人のもと】(ダイヤモンド・オンライン)

 「あの会社は人を外見でしか見ていない」、「結局美人ばかり得をする」。就職活動をしている人たちがたまに言う。たしかに美人は就職試験に強い。しかし、それは企業側が外見だけで判断しているのではないと思う。それだけなら多くの会社は大変なことになっているだろう。

 では、実際に美人が就職活動で勝てるのはなぜか。それは面接に強いからだと思う。面接でのやり取りが上手なのだ。

 よく「面接で自己アピールはしっかりできたし、言いたいことはしっかり伝わったはずなのにダメでした」という話を聞く。たぶんそういうことを言っている人はうまくいかない。なぜなら就職の面接で重要なことは「言う」ことより「聞く」ことだからだ。主張の前に理解だ。人の話を聞く態度が重視される。つまり面接官が気持ちよく話せたかが重要なのである。

 美人はこれがうまい。聞く時の姿勢、態度である。そのなかでも「うなずき」がうまい。そう、周りを見回してみよう。これは面接のだけの話ではない。美人はうなずき方が上手なのだ。言葉を真剣に理解しようとしてややゆっくり首を縦にふる。そして、理解を微笑みに変える。話しているほうはそれがとても心地いい。

 何というか、いかにもダイヤモンド的な頭の悪さを感じさせる記事です。まぁ、たしかに「美人は就職試験に強い」ところはあると思います。しかし、その理由として「(美人は)面接に強いから」とするのは少なからず同語反復的なところがありますし、ではなぜ面接に強いかと言うと、一応の説明らしきものは書かれているのですが、その説明が成り立つのは要するに「美人だから」ではないでしょうかね。結局は企業が外見重視で人を選び、そして多くの会社の経営状態は大変なことになっているのが実態のような気がします。

 一概に外見による選別がダメと言うつもりはありません。容姿や性的魅力に秀でている人だって、その容貌を磨き上げるのには相応の努力をしてきたはずで、それが正当な評価を得ることは否定されるべきではないと思います。容姿は努力じゃどうにもならない、生まれつきで差があるもので評価を違えるのは好ましくないとの声もあるでしょうけれど、それを言うなら学力だって競技能力だって同じことです。努力すれば勉強ができるようになる、ネームバリューのある大学を卒業できるかと言えば、そこは生まれ持った資質で左右されるところも大きいですし、努力さえすれば誰でもプロ野球選手になれる、日本代表入りしてW杯に出場できるというわけではありません。容姿以外で選別したところで、生まれつきで差があるものを評価基準にしていることは変わらないはずです。問題は業務内容に必要なものを評価基準として採用できているか、ですね。

 引用元では御託を並べたあげくに「つまり面接官が気持ちよく話せたかが重要なのである」と結んでいます。そりゃ美人と話していれば気持ちよいでしょうね。まぁ要するにこれがコミュニケーション能力という奴なのですが、こういう基準で人を選んでばかりいるから会社がダメになるのではないかという気がします。顧客が気持ちよく話せる人であれば、まだ役には立つかも知れません。しかし面接官が気持ちよく話せる人、職場の上司が気持ちよく話せる人を選んだところで、それは職場の偉い人が気持ちよく過ごせる環境を作るのに役立つだけで、決して会社の利益に貢献してくれることはないでしょう。面接官が気持ちよく話せる人を採用するということは、単に雇用側が楽をしたがっていることを示すのみです。

 そもそも美人は「うなずき」が上手いと引用元で語られていますけれど、そう感じられるのは相手が美人だからではないでしょうか。同じような仕草でも好みの美男美女がやるのと、外見面の魅力に欠ける人がやるのとでは印象も異なるはずです。あばたもえくぼ、「ただしイケメンに限る」というわけです。美人やイケメンがやれば「可愛い」「素敵」な仕草も、ブサイクがやれば「キモイ」と思われるものです。「言葉を真剣に理解しようとしてややゆっくり首を縦にふる。そして、理解を微笑みに変える」――この動作は美人だからこそ魅力的に見えるのであって、外見的にダメな人が真似をしても決して評価されることはないのではないでしょうか。結局、会社は顔で人を選ぶ(まぁ能力や人柄なんて、ちょっと面接したぐらいではわかりませんから)、そのことを誤魔化すべく「外見だけで判断しているのではない、美人はうなずきが上手いからなのだ」と言い繕っているわけですが、ではなぜ美人はうなずきが上手いと感じられるのか、それはすなわち「美人だから」ではないのか、ならば要するに外見で判断しているのではないかと、そう思わないでもありません。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

財政出動路線には戻れない

2010-08-09 22:59:14 | ニュース

財政出動路線に戻れ…「反菅」会合に延べ250人(読売新聞)

 9月の民主党代表選をめぐり、昨年夏の衆院選政権公約(マニフェスト)への「原点回帰」を訴える同党国会議員らが6日、相次いで会合を開いた。

 参加議員は延べ約250人に達し、財政再建を重視する菅首相に対し、消費税の増税反対、財政出動路線への「復帰」を求める意見が続出した。今後、経済財政運営を巡る路線対立は激化する様相だ。

(中略)

 党内の首相への不満は、消費税や財政再建に対する首相の姿勢に向かっている。首相は自らの消費税発言が参院選大敗につながったことを認めつつも、5日の参院予算委員会では「財政健全化は重大な問題だ」と述べるなど、財政再建重視の考えを転換していない。「集い」に出席した衆院議員は「消費税増税を撤回しない限り、次期衆院選も惨敗だ」と指摘した。両会合とも小沢氏に近い議員が主導しているため、「小沢氏が出馬する環境を整える狙いがあるのではないか」との観測も出ている。

 首相サイドは財政出動路線に押され気味だ。政府・民主党が、子ども手当を増額する方向で調整に入ったのも、マニフェストを尊重する姿勢をみせることで、反発を和らげる思惑があるとみられている。首相も必死だ。6日夜には、都内の料理店で開かれた菅グループの会合に出席。「3年間は頑張りたい」と、続投への意欲を強調した。ただ、「側近議員にまで支持を求めなければいけないとは、首相も苦しい」との声が出ている。

 どうも記事を読む限りでは、必ずしも民主党内部で「財政出動路線に戻れ」との声が強まっているようには見えない、報道側が勝手に財政出動路線への回帰を感じ取っているだけのように見えなくもないのですが、ともあれ現執行部に対する不満の声が党内でも強まっているようです。ただ小沢一郎に近いグループの動きが活発とも伝えられていますけれど、その中でも一年生議員は(菅よりも)小沢との距離が近いという理由から先の党代表戦で樽床を支援していたような人も多かったはず、樽床と比べればまだ菅の方が財政出動路線に近いような気もするだけに、なおさら「財政出動路線に戻れ」なんて声が党内で上がっているとは思えないところもあります。財政出動路線への回帰を嫌う報道サイドが過剰に反応しているのではないでしょうかね。

 そもそも言えば財政出動路線へと舵を切ったのは麻生太郎であって、鳩山・小沢はその否定の上に出てきたわけです。麻生は麻生で党内基盤が十分でなく、財政再建を優先する与謝野とも組まなければならなかっただけにその政策は甚だ中途半端なものに終始しましたが、それまでの構造改革路線からは大きな変化だったはずです。しかし、内閣の支持率は激減しました。これ見よがしに改革を掲げるスタイルから財政出動路線への転換は、国民からNOを突きつけられたと言えます。あるいは国民新党の人気はどうでしょう? 国民新党は現時点で最も明確な財政出動路線をとる政党の一つですが、これもやはり有権者からはばっさりと否定された党でもあるわけです。私自身は今こそ財政出動をすべき時だと思っていますが、そこに国民の理解があるかは疑わしい、そうであるだけに与党内で財政出動を訴える声が主流になることはないような気がするのです。

「景気対策」7割、政府への要望で過去最多(読売新聞)

 政府に対する要望(複数回答)では、「景気対策」が69・3%で、昨年6月の前回調査から6・8ポイント増え、1978年に選択肢として以降、最高となった。内閣府は「景気は持ち直しているものの、高い失業率などの影響で国民の経済対策への関心が強まっている」と分析している。

 政府に対する要望のトップは、7年連続で「医療・年金等の社会保障の整備」の69・6%だったが、前回調査から1・2ポイント減少した。景気対策は2位で2007年調査の49・6%から、毎年増え続けている。また、「財政健全化の推進」は25・5%となり、選択肢が「財政構造改革」だった前回調査の16・9%から8・6ポイント増えた。

 ちなみに世論調査の結果はこんなものでした。しかし、この手の世論調査結果と実際の投票先との関連性はどれほどのものなのでしょうか。世論調査への回答結果と、投票時に重視するものは少なからず異なっているようにも感じられます。それはさておき、「財政健全化の推進」が25・5%とかなり増加しているそうです。最も「伸び」が見られる分野には違いないのでしょう。ただトップはあくまで「景気対策」です。その辺からすると財政再建よりも景気対策の方が優先順位が高いことを、国民も理解できているように見えるかも知れません。ただ景気対策にせよ財政再建にせよ、それがどのような手段によって達成できるのかという点で違いが生まれているように思います。

 景気対策の基本にして王道は財政出動です。では景気対策を望む国民が多いからと景気対策=財政出動を掲げた政党は、国民からどのような評価を受けたでしょうか? 財政再建にしても基本は歳入を増やすことであり、その確実な手段としては増税があるわけです。しかし財政再建を望む有権者が増税を掲げた政党を支持したかといえば、それもまた違いますよね。たぶん国民の多くは、景気対策も財政再建も、何でもかんでもムダ削減と公務員叩き、官僚否定で達成できると思っているのでしょう。だから手当たり次第に公的支出をムダ呼ばわりし、公務員削減を競い合い、不都合なことは何でも官僚のせいにする、そうした姿勢の鮮明な党ほど人気が高いわけです。故に景気対策の基本に忠実な党は割を食い、構造改革のような奇策や公務員叩きなどのパフォーマンスに走る党がのさばる、故に景気対策そのものは望まれながらも有効な対策は決して取られることがないと言えます。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

なぜかハローワークの満足度は高いらしい

2010-08-08 22:58:13 | ニュース

ハローワーク、サービスはいいけど待ち時間長い(読売新聞)

 厚生労働省は、ハローワークに訪れた求職者を対象に、サービス内容の満足度を問う初の聞き取り調査を実施し、6日、その結果を発表した。

 調査は、利用者の多い全国99か所のハローワークで、聞き取り形式で実施し、5053人から回答を得た。

 発表によると、「満足」「まあ満足」と回答したのは全体の83・8%で、「不満」を大きく上回った。

 一方、改善すべき点については、95か所のハローワークで待ち時間の解消を求める意見があり、「窓口職員を増やしてほしい」などの要望が多かった。また、82か所では「求人票の内容と実際の労働条件が違う」など、就職支援に関する苦情もあった。厚労省では「調査結果をサービス改善に生かしたい」としている。

 ハローワークの満足度調査なんてものが行われていたようですが、「満足」「まあ満足」との回答が83・8%を占めるなど、意外にも満足度は高いという結果が出ました。就職状況に関しては随所で悲惨な数値が上がってくる昨今ですが、その辺から生じるであろう不満はハローワークには向かっていないみたいです。就職は決まらないけれどハローワークのサービス自体には満足している、そういう回答をした人が多かったのでしょうか。

 ちなみに要望としては待ち時間の解消が挙げられています。何せ私の居住区のハローワークなんて、午前中から駐輪場が満杯で自転車を駐める場所がないとか、午後は順番待ちの列が隣の店舗の入り口を塞ぐこともあったほどで、もう新しいハコを建てても良いのではないかと思える有様です。もうちょっと余裕のあるハローワークも多いのかも知れませんが、昨今の就職事情に対応するためにはキャパが絶対的に不足しているのかも知れません。

 また「求人票の内容と実際の労働条件が違う」というのは日本ではよくあることですが、特にハローワークはその傾向が強いのではないでしょうか。マイナビとかリクナビに代表される企業運営の求人サイトに比べると、ハローワークは審査が緩いような気がします。来るもの拒まず、全ては企業側の自己申告に任せて求人を掲載していたりすると、「求人票の内容と実際の労働条件が違う」ケースも飛躍的に増大するはずです。ハローワークは受け付けた求人に偽りがないか、つまり企業が虚偽の申告をしていないかを厳正に調査すべきだと思います。ハローワークという公的機関の紹介なら安心、そう思えるようでなければ十分なサービスとは言えないですから。(参考、ハローワークの求人広告が最も信用できない

 ただ求人内容を審査するにも、やはり人的リソースは必要、増員が必要です。待ち時間解消のために「窓口職員を増やしてほしい」との要望もあったわけですが、どうなんでしょうか、人員増への理解は得られるのでしょうか? ハローワークで働く職員の数を増やせばその分だけ失業者も減るので一石二鳥ではあるものの、それは公務員増、公的支出の増大をも意味します。アンケートに回答したハローワーク利用者の理解は得られても、非利用者からは反発を招くかも知れません。そうでなくとも全体としての公務員数が増えれば、窓口職員を増やして欲しいと回答していた人まで「公務員が多すぎる!」と言い出しかねないのが昨今の風潮です。アンケート結果がサービス改善に生かされる日は遠いような気がしますね。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

色々とダメな発言

2010-08-07 23:00:35 | ニュース

衆参予算委 質疑終了 首相「反省すべきは反省」(産経新聞)

 5日は、たちあがれ日本の片山虎之助参院幹事長が登場。自民党参院幹事長として、参院を仕切った重鎮が、政局重視で自公政権に攻勢をかけていた民主党の姿勢を指摘した。

 「(3年前の)ねじれ国会で国政を妨害した民主党が、反省もなく協力を求めるのか」。すると首相は即座に「政権を追い込むことを念頭に置いた行動がいくつかあった」と陳謝。「反省すべきところは反省したい」と何度も頭を下げた。

 政権交代前は多少なりとも自民党への批判勢力として振る舞うことのあった民主党ですが、その当時の行動は「政権を追い込むことを念頭に置いた行動」であり、「反省すべきところは反省したい」ものと明言されています。時々はリベラルでハト派的な顔を見せることもあった民主党ですが、それはあくまで当時の政権を追い込むことを念頭に置いた行動、自民党に対抗する都合上の選択に過ぎず、決して政治的な信条に基づいたものではなかったのでしょう。自民党とは反対の道を示す必要性が薄れた政権交代後に見せた姿こそ、民主党の真実と言えそうです。

菅首相が広島で会見「核抑止力は引き続き必要」(読売新聞)

 菅首相は6日午前、広島市内のホテルで記者会見し、同市の秋葉忠利市長が平和宣言で「核の傘」からの離脱を求めたことについて、「国際社会では核戦力を含む大規模な軍事力が存在し、大量破壊兵器の拡散という現実もある。不透明・不確実な要素が存在する中では、核抑止力はわが国にとって引き続き必要だ」と述べ、否定的な考えを示した。

 11月の来日が予定されるオバマ米大統領の広島、長崎両市への訪問については、「大統領自身が『訪問は非常に意義深い』と発言されている。私も実現すれば大変意義深いと思う」と訪問への期待を示した。仙谷官房長官は6日午前の記者会見で、「大統領が来られる時にどのくらいの日程を取ることができるのか。(訪問を求める)広島市の要望も含め、話し合いをしなければいけない」と語った。

 仙谷氏は秋葉市長が非核三原則の法制化を求めたことについては、「原則を堅持する方針に変わりはない。わが国の重要な政策として内外に十分周知徹底されており、改めて法制化する必要はない」と述べた。

 典型的なのはこの辺り、自民党時代の閣僚発言から何一つ変わっていません。ある意味、こういうところではブレがないと言えますね。鳩山もそうでしたけれど、菅もまた抑止力ありきの発想から微塵も抜け出すことができていないわけです。仙谷も非核三原則の法制化をきっぱりと否定するなど、相変わらず見るべきところがありません。日米関係や外交姿勢といった点では政権交代の意義は皆無であったとも言えそうです。ともあれ米軍の核によって守られているという世界観を堅持している以上、核軍縮に関して日本には一切の期待が持てないということが明らかにされたような気がします。

 菅は市民運動出身であることから「左」っぽいイメージを持たれがちのようですが、世間で「左」だと思われているものが実際に左寄りかと言えば、必ずしもそうではないわけです。一口に市民団体と言っても極右系の市民団体もありますし、菅にとっての「市民」とは官僚の対極を意味するものであって政治的な左右にはあまり関係がないように思えます。むしろ自称中道=右の方が菅の立場に近く、にも関わらず市民運動=左のイメージで世間からは見られてしまうことへの反発から、より一層タカ派的、新自由主義的な方向に傾倒しているフシもあるでしょう。これまた左っぽいイメージを持たれがちな労組を見ても、外国人参政権に反対する集会を開いていた旧民社党系の労組なんかが結構な規模を誇っていたりするもので、労組にもまた右と左があるわけです。結局、菅の「市民運動出身」という肩書きが保証するのはせいぜいが官僚嫌いぐらいのものであって、間違っても左派が期待を託せるようなものではなさそうです。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ビジネス本とコンサルが勘違いを育てる

2010-08-06 22:56:40 | ニュース

292名前:仕様書無しさん[]2010/06/01(火) 19:32:26

入社1ヶ月で資料提出を期限日を指定され、了承した。
私「これはこうでよろしいのですか?」上司「どうすればいいと思いますか?」
私「~にすればいいのでしょうか?」上司「貴方がそれで良い思うようにしてください」
私「間違っている点なのありましたらご指摘願いたいのですが」
上司「なぜわからないんですか?」(薄笑いを浮かべながら)
私「すみません、こうで宜しいのでしょうか?」上司「本当にそれでいいと思いますか?」
私「はぁ。一応見る限りでは手落ちはないと思いますが」上司「ならそれで提出してください」
私「はい、では確認お願い致します」期限日3日前に提出
上司「例の資料ですが全然駄目、再提出してください」期限日当日
私「すみません、いつまでに出せばよろしいですか?」
上司「提出日は今日ですよね?」私「今日中にはちょっと、不備な点など教えていただけませんか?」
上司「貴方はどこが悪いと思いますか?」私「すみません、わかりません」
上司「何故わからいなのですか?提出期限を了承してできないことについてどう思いますか?」

毎日こんなやり取りです。死にたい。

 こういう上司って、この頃は多いのではないでしょうかね。入社1ヶ月という要素を抜きにしても上司の責任放棄でありパワハラ的な部分もあるわけですが、結構な頻度で遭遇するような気もします。もちろん本当に無能かつ無責任で、担当レベルに責任を押しつけるばかりの上司も少なくないでしょうけれど、あくまでこういうやり方が正しいと信じて実行している人も多いはずです。おおかたリーダー研修か何かで、「ただ部下に答えを与えるのではなく、部下に考えさせましょう、具体的には~」みたいなことを吹き込まれて、それを鵜呑みにした結果として冒頭に挙げたような上司ができあがるのだと思います。研修屋なんてメラビアンの法則みたいな疑似科学を振りかざすホラ吹きに過ぎないのですが、まるで新興宗教に嵌るかのような勢いで研修の成果を発揮しようと張り切る人もいますから……

オープンクェッションは卑怯だ/純丘曜彰 教授博士(INSIGHT NOW!)

 なぜ、どうして、という質問は、現実には反語的で、部下を追い詰めるために用いられている。しかし、そう問う前に、上司こそ、その問いの答えをあらかじめ部下に示しておくべきだったはずだ。

 イエスかノーかで答えるような質問を「クローズドクェッション」といい、「なぜ」「どうして」というような疑問詞を使って相手に説明を求める質問を「オープンクェッション」という。それで、コミュニケイションのセミナーで、さあ、管理職のみなさん、クローズドクェッションで詰問するのではなく、オープンクェッションを使って部下に自分で考える自由を与え、自主性を発揮してもらいましょう、などと言う。

 しかし、これは対等のコミュニケイションの理論、ないし、コーチングのスキルとしての場合であって、会社の上司と部下の関係では成り立たない。上司に質問される部下の立場になれば、すぐにわかることだ。なぜ売り上げが落ちているのか、と聞かれて、他社が新製品を出したから、などと答えたところで、次の質問は、どうしてそれがわかっていて何の対策もとらなかったのか、に決まっている。そして、最後は、どうしておまえというやつは、だ。こんな詰問は、もはや答えようがない。

(中略)

 論語に言う、起こってしまったことは説かない、やってしまったことは責めない、これまでの経緯は咎めない。上司に求められているのは、部下を問い質すことなどではなく、これからどうしたらよいか、部下たちに解決の方策を示すことだけだ。部下自身に考えさせる、自主性を引き出す、というのもけっこうだが、このことが、上司としてのこの解決策提示の責務を逃れる口実になってしまっているのであれば、そんな無責任なコーチングなど、いますぐ止めてしまった方がいい。

 上司は、すべてを掌握し、展望を持っていなければならない。だから、基本的に、質問するのは、部下たちの側の特権だ。上司が部下たちに尋ねてよいのは、次の一言だけ。なにか困っていることはないか?

 微妙にカタカナの使い方が独特なのでマヌケっぽく見えるところもある文章ですが、昨今の流行をよく解説しているところもありそうです。何でも「オープンクェッション」なる題目まで与えられているようで、やはり部下に対して必要以上に「なぜ」「どうして」と問いかける上司は研修によって生み出されていると推測されます。そしてこの研修の成果が現場を寄り混乱させる、と。結局のところビジネス系の研修ってものはその人の仕事に関する能力を向上させるものではなく、せいぜいが自己満足を与えるものでしかないのかも知れません。

 いつだったか週刊誌の記事で、ハウツー本の編集者による暴露話を読んだことがあります。たとえば恋愛ハウツー本、あれに書いてあることを実行すれば本当に異性にもてるのかと問われた編集者は、その可能性をきっぱりと否定していました。あれは異性にもてるための本ではない、ただ本の中身をちょっと真似てみて、さも自分が異性にもてる魅力的な人間になったような気分になる、そういう本に過ぎないのだと。たぶん、ビジネス本もその類なのではないでしょうか。いくらビジネス本を読んだところで経営感覚が磨かれるわけではないけれど、ビジネス本を読むことで「その気」になる、自分ができるビジネスマンになったような気分になる、そういう代物なのだと思います。結局、会社の研修やビジネスマン向けのセミナーも同様、受講者は自分が「できる人間」になったような気分になるだけなのかも知れません。その結果として、傍目に見れば恋愛ハウツー本をそのまま実行している痛い人と同レベルでしかない、そういうレベルの上司が生み出されているとも言えそうです。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

6/120,000,000

2010-08-05 22:56:45 | ニュース

100歳以上の所在不明48人に…年金支給6件(読売新聞)

 全国で100歳以上の高齢者の所在不明が次々に判明している問題で、新たに、神奈川県内の男性最高齢とされる川崎市の109歳男性や大阪府内の20人が所在不明であることが分かるなど、読売新聞の4日までの調査で、100歳以上の所在不明者が全国で計48人に上った。

 また、自治体の調査と合わせ、所在不明者に年金が支給されているケースが少なくとも6件確認された。

 方々で話題になっているこの件ですが、果たして騒ぐほどのものなのでしょうかね。「世界一の長寿国の根幹が揺らぐ事態だ」みたいに煽り立てるメディアもあるわけですけれど、他の国の管理は日本よりもずっと杜撰だと思います。日本みたいに全国民をきっちり管理したがる国だからこそ所在不明者が大問題になるわけで、戸籍上は存在しない人や戸籍上でしか存在しない人など中国辺りなら万単位で存在するでしょうし、それ以前に戸籍など作らない、人口管理は自治体任せで100%の把握など考えてもいない国は多いはずです。ましてや日本の100歳以上人口は昨年90月の時点で4万人を超えており、その中から100人やそこらが除外されようとも統計上は何の影響もありません。

 ちなみに報道時点の所在不明者48人の内、年金支給は6件しかないそうです。年金受給年齢であるにも関わらず、8人に1人の割合でしか年金を支給されていないということになります。所在不明者の人数は調査の進行に伴い増加中、それに合わせて年金支給件数も多少は増えるものと予想されますが、この程度の割合ならやはり問題視するほどのこともないでしょう。40人が100人に増えても100歳以上人口の0.25%、200人に増えてさえ0.5%です。国税の中でも滞納率の高い消費税などは5%近い滞納があるわけですが、それに比べれば100歳以上人口に占める所在不明者の存在など誤差のようなものです。まして、その中に占める「所在不明者に対して年金を支給していたケース」となるや僅かに4万人中6人、この6人が10人に増えようと20人に増えようと、まぁ些末な話でしかありません。1億人以上の人口が存在する中で、所在不明者の年金を受け取る人が10人やそこらに止まるとすれば、むしろモラルの高さを感じさせる話といった方がふさわしいくらいです。

 神奈川県などによると、川崎市の109歳男性については、市が今年7月、敬老事業として和菓子や米などの記念品を贈るカタログを男性宅に送付したところ、返送されてきたという。このため市の職員が男性宅を訪問したが不在で、転居先は確認できていない。民生委員が2008年秋に訪れた際は、娘を名乗る女性が「(男性は)元気です」と応対したが、民生委員は男性とは面会していないという。

 ちなみに、このようなケースも紹介されています。わざわざカタログを返送するとは、何とも律儀な人ですね。その一方で109歳男性の所在は確認できていないとのこと。娘さんも80歳以上と推定されるだけに、耄碌しているところもあるのかも知れません。肉親の死を受け入れられず、自身も高齢のために何をしていいのかわからない、今さらになって手続きするのも憚られる、そのために届け出をしないでいる人も1000人に一人くらいはいるでしょうか。あるいはテレビの報道によると、「父/母は家を出て行った。それきり連絡がない、会っていない、どこにいるのかわからない」と答える人が多いようです。家族関係に問題があって疎遠になってしまった人となると100人に一人くらいはいるでしょうし、そうなると捜索届けも出されないまま身元不明者としてひっそり死を迎えてしまった人もいる、それが今回の所在不明者に繋がっていると推測されます。とりあえず巷で騒がれているような、年金を受け取り続けるために意図的に死を隠しておいたみたいなケースは非常に少なそうです。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (10)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ベンチャーの社長にありがちな勘違い

2010-08-04 22:59:56 | ニュース

【求人募集】GIGAZINEのために働いてくれる記者・編集を募集します(GIGAZINE)

2007年の秋以降、ことあるごとに人材を募集してきましたが、今回はさらにもう一段階上のレベルアップを目指し、これまでとはまったく違う視点と条件で人材を募集することにしました。

端的に言うと、自分の時間を切り売りして時給換算し、「仕事は仕事、プライベートはプライベート」というような消極的考え方をする人ではなく、「自分はGIGAZINEだからこそできることをするためにGIGAZINEで働きたい、ほかのところでは働きたくない!」というプロフェッショナル的な考え方をする人を求めます。余所でも働こうと思えば働けるような人ではなく、「GIGAZINEだからこそ働きたい!」という人を求めます。

 GIGAZINEというそれなりに人気のあるサイトで求人が出されているのですが、結構な話題を呼んでいるようです。冒頭部分からツッコミどころには事欠かないもので、曰く「『仕事は仕事、プライベートはプライベート』というような消極的考え方をする人ではなく~」とのこと。確かに公私混同、プライベートな時間にまで干渉したがるのが日本の標準的なビジネススタイルと言えなくもありませんが、仕事とプライベートを区別することって「消極的」なんですかね? これだったら欧米の企業やGIGAZINEなんかよりよっぽど成功している企業は軒並み消極的な人の集まりということになってしまいそうです。

 引用した段落から先は編集長(社長)による「募集に至る経緯」が綴られているのですが、はっきり言って甘やかされた子どもが泣きわめいている以上のものではありません。ただ、総じて経営者目線でしか物事を見ることができない日本の労働者に囲まれて育った日本的経営者の典型とも呼ぶべき発想が随所に現れているようにも思います。GIGAZINEの後日の記事では「編集長の山崎です。先日から開始した記者・編集の募集について、これまでの過去の募集を大きく上回る前例のない数の求人が来ており、激励する文章も想像を絶するぐらい多く送られてきており、非常にありがたい限りです。ああいう考え方は自立心の強い人か経営者レベルでないと理解できないのではないかと思っていたのですが、そんなことはありませんでした。」とも語られており、まぁ経営者を勘違いさせる原因は非経営者の側にこそありそうです。ともあれ、山崎社長の勘違いをよく表している箇所をいくつかピックアップしてみましょう。

「払われた金の分だけしか働かない、働きたくない、記事を書くのは面倒くさい、そもそもできれば書きたくない」という風潮が編集部内に蔓延し、そのことを明言する者さえ現れました。

「自宅でも勉強する分はGIGAZINEの仕事のために勉強するのだから、労働時間、いわば残業+休日出勤のようなものだ。プライベートの時間に勉強しろというのはプライベートの時間に働けというのと同じだ。だからその分の金を払ってくれるなら勉強してやっても良い」というようなことになってしまったのです。

しかし、「一流の会社と同じような労使関係を結んで雇用主と労働者の対等な関係を結ばなくてはならない。働いた分だけの給料はもらわなくては!」というような動きが出るにいたり、もはや我慢の限界を超えたというのが正直なところです。こちらの期待するだけの質の記事を書いて実績を出しているのであればともかく、そうでないのに金だけ要求されても困ります。

 いかに三流でも会社としてやっている以上、仕事への対価を払うのは当たり前のことです。しかるに労働への対価を払え、働いた分だけの給料はもらわなくては!という至極当然の要求に対して「我慢の限界を超えた」などと反応するのは社会人としてあまりに非常識でしょう。そりゃ会社の実態として無償労働が常態化している、給与支払いの対象となる範囲を超えて従業員を働かせているケースが多いわけですが、あくまでビジネスなのですから働かせた分は給料を出さねばならない、そうした自覚を持てないのならば人を雇うべきではないと思います。しかるに、とりわけベンチャー企業にはその類が多いような気がするのですが、それがビジネスだということを理解できていない経営者も多いわけです。従業員は給料のために働いているのではなく、社長の「志」に共感して集ってきたものだと、そう勘違いしている人も多いのではないでしょうか。そんなものは同人活動の域に止めておけよと言いたいところですが、仕事と趣味の区別を付けられないまま法人化してしまうことで、従業員に対して給与以上の奉仕を求めることに何の疑問も感じない雇用主が生まれてしまうわけです。

 「『ニュースサイトで記事を書くというのは、普通の労働とは絶対に違うのだ!』ということを事前にちゃんと理解していただきたいのです」「願わくば、私と同じような志を持つ『同志』に来ていただければ、と考えています」とも山崎社長は語っています。随分と自己評価が高いようですが、「普通の労働とは絶対に違う」と言うからには「普通の労働とは絶対に違う」だけの対価も用意されてしかるべきでしょう。それをするつもりがないのなら金とは別の価値観で働いてくれる人を求める、つまりは「同志」を集めることになるのかも知れませんけれど、でもこれは会社の話です、遊びではないわけです。あくまで趣味の活動であれば「同志」を求めるのも結構ですが、法人化してビジネスとしてサイトを運営するのなら、「同志」という名のイエスマン、社長の取り巻きを揃えるのは誤りなのではないでしょうか。会社は思想団体ではなくビジネスなのですから、人に仕事をさせるには対価が必要である、何でも社長のやりたいようにできるわけではない、その辺は自覚すべきです。「同志」を集めて好きなことをやりたいのなら、さっさと会社を畳んで個人サイトに戻ってください。

 

 ←応援よろしくお願いします

 

参考、どうしようか やっぱり増田に書くべきか GIGAZINEの社員(?)と噂される人の書き込み

コメント (15)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

条件付きフランス人

2010-08-03 23:00:42 | ニュース

「犯罪移民の仏国籍剥奪」大統領方針 人権団体ら猛反発(朝日新聞)

 フランスのサルコジ大統領は7月30日、帰化した後に重大な罪を犯した移民の仏国籍を取り消す方針を打ち出した。ただ国籍剥奪(はくだつ)は、戦中の親ナチス・ドイツ政権がユダヤ人排斥のために利用し、戦後はタブー視された措置。「移民差別を助長する」と、野党や人権団体は猛反発している。

 大統領への支持率は、最近の改革の失敗や側近のスキャンダルで低迷。新方針は、右翼支持層の関心を引き戻し、2012年の大統領選で再選を目指すのが狙いだと受け止められている。

 大統領はこの日、訪問先の仏南東部グルノーブルで演説。当地では7月、強盗団と警官隊との銃撃戦で強盗側の青年(27)が死亡。これを機に、青年の出身地にあたる郊外の移民街で暴動が起き、治安回復が課題となっていた。大統領はその対策として「外国出身者が警察官や憲兵隊員、公権力を委託された人物の命をあえて奪った場合、仏国籍は剥奪される」との方針を表明した。

 オルトフー移民相は31日、国籍剥奪のための法案を9月に議会に提出する方針を確認。「重婚や女性器切除(女子割礼)の実施、重大犯罪にかかわった場合にも、国籍は失効させなければならない」と述べた。

 ただ、この新方針は、等しく権利を持つと見なされてきた仏国籍保有者を、移民出身者とそうでない者に分けることにつながる。また、国籍剥奪は第2次大戦中、対独協力政権(ビシー政権)がユダヤ人に対してとった措置であることから、戦後の歴代政権は手をつけなかった政策だ。リベラシオン紙は「仏の過去で最も恥ずべき対応に立ち返るものだ」と厳しく批判。ルモンド紙も「サルコジ氏はタブーを破った」と論評した。

 日本の移民政策を海外の極右層が羨むというケースは多々あると聞きますが、今回は逆のパターンになりそうです。日本では極右に媚びても選挙で勝てるほどの票には結びつかないことが自民党や国民新党の敗北から証明されるところですけれど、サルコジ政権も似たような末路を辿るのでしょうか。だいたい、落ち目の政権は何をやってもダメなものです。民主党だって官僚/公務員叩きや小さな政府志向では自民党やみんなの党に決してヒケを取らないわけですが、いくら公務員削減や議員定数削減を強調したところで、似たような政策を掲げる政党からは「民主党の改革はニセモノの改革、我々こそが真の改革の担い手」とばかりに突き放され、有権者からも「まだまだ足りない、もっと厳しくやるべきだ」みたいな批判を食らっているのが実態ではないでしょうか。いかに有権者や手を組みたい政党と同じ方向を向いていたとしても、落ち目の政権は何かする度に反発を買うものです。ましてや日本よりは人権意識が強いであろうフランスともなれば左からの批判も強いはず、いよいよサルコジもジリ貧と思われます。

 それはともかく、重大犯罪に関わった移民はフランス国籍を剥奪するとのことです。二重国籍を認めない日本と違って元の国籍を保持したまま取得できる国籍と言うこともあって、国籍剥奪の持つ「重さ」は日本の場合とフランスの場合とでは多少の違いもあるのかも知れません(日本国籍の剥奪は即座に無国籍者を生み出しますが、フランスの場合は必ずしもそうはなりません)。ただ外国出身かそうでないかによって扱いを違えてよいのかは、まず第一に問われねばならないわけです。国籍を取得すれば同じフランス人としての権利を有することになっていたはずが、「重大犯罪と関わらない限りにおいてフランス人と同等」という条件付きの権利に置き換えられることを、今回のサルコジ案は示しています。国籍を取得しても「条件付きフランス人」になれるだけであって、決して留保なしのフランス人にはなれなくなるわけです。国籍取得が同等の権利を保障しないというのであれば、それに何の意味があるのでしょうか。

 ちなみに、この国籍剥奪案の適用範囲は厳密にはどの辺までなのでしょう。たとえば親がフランスに移民してきてから生まれた子供辺りは? 移民1世にだけ適用となると、親の国籍だけを剥奪、子どもはフランス国籍を維持なんて事態も起こりうるわけです。そこで日本政府だったら子どもの在留だけは認めるけれど親は出身国に送還するなんて対応を取りかねないところです。逆に移民の子まで適用するとなると、サルコジも対象に含まれてきます。公権力を委託された人物の命を奪った場合、重婚や女性器切除の実施、重大犯罪にかかわった場合などが挙げられていますが、失政によって国民に無用の死をもたらした場合はどうなるのでしょうね。パフォーマンス的な要素が主になるにせよ、サルコジを訴えてみる人が出てきたら面白そうです。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

日系企業がストライキを防げないのは

2010-08-02 22:59:25 | ニュース

中国、外資でスト多発 日系が7割、ネット・携帯で連鎖(朝日新聞)

 中国内で5月中旬から約2カ月間にストライキが発生した外資系企業が少なくとも43社に上ることが、朝日新聞社の調べでわかった。そのうち日系企業が32社を占めていた。ストの拡大による社会不安を恐れる中国当局は報道規制や労使の仲裁に乗り出した。ただ、待遇改善を求める労働者の不満は収まらない状況だ。

(中略)

 労働者はインターネットの掲示板や携帯電話を通じて労使交渉の中身や賃上げについて連絡を取り合っている。労働争議に詳しい弁護士や大学教授が「指南役」としてストに参加、組織化も進みつつある。日系企業に争議が集中するのは、ホンダ系工場の賃上げ提案以降、日系企業は賃上げに応じるとの情報が労働者の間に広がったことが大きい。また、社内の中国人の登用があまり進んでおらず、労使交渉がうまくないとの指摘もある。

 43社はいずれも、操業や生産の一時停止に追い込まれ、ほとんどの企業が十数%の賃上げに応じて妥結した。天津市の日系企業で従業員が社内の会議室に立てこもったり、江西省の台湾系運動用品会社で約8千人が暴徒化して工場施設を破壊したりするケースもあった。

 中国ではストライキが相次いだわけですが、その7割強は日系企業で発生しているとのことです。「日系企業は賃上げに応じるとの情報が労働者の間に広がったことが大きい」とも報道されていますが、俄には信じがたいところでもあります。利益そのもの以上にコストカットを優先する日本企業が賃上げに応じるということ自体が日本人からすれば驚きですが、他の国から進出してきた企業はどうなのでしょうか? 他の国の企業は元から賃金水準が上昇傾向でストライキに発展するほど労働者側に不満がなかった、一方で日系企業は賃金水準が据え置かれるばかりだったために労働争議に発展したとも考えられます。日頃の待遇が悪いからこそ、ストライキは起こるものですから。

 不況もまた良し、不況で鍛えられる、などと日本の経済界では真顔で語られがちですけれど、実際のところは日本の著しく雇用側に偏った労使関係に起業はすっかり甘やかされているのではないでしょうか。日本にいる限り何でも雇用側の思い通り、労使関係に心を砕く必要などないわけですから。そういう雇用者天国とも言うべき環境でぬくぬくと育った日本企業だけに、日本国外の労働者を扱うすべというものを心得ていないのかも知れません。現代の日本人ならストライキを起こす心配などないだけに会社は左うちわでいられますけれど、他所の国でも同じ感覚でいるとどうなるか――それを示しているのが中国におけるストライキの頻発であり、そのストライキを日系企業が7割を示すという結果であるように思われます。

 労働者をぞんざいに扱えば頻繁にストライキが起こるような国では、雇用側もストライキを未然に防ごうと相応の注意を払うはずです。そうした「ストライキを未然に防ぐには」という意識を持って中国に進出していれば、ここまでストライキに苦しめられることはなかったでしょう。何しろ憲法上はスト権が認められていない国なのですから、後は経営側にマトモな判断力があれば容易に対応できる話です。しかるにストライキの心配は一切無用で、どれほど労働者を無碍に扱っても経営側が反撃される可能性など皆無の国もあるわけです。こうした国の企業が考えを改めることなく中国に進出したために、その国から進出している企業にばかりストライキが頻発するという結果を招いているのではないでしょうか。

中国の日系工場スト「労働コストの問題で自然」 副首相(朝日新聞)

 中国の王岐山(ワン・チーシャン)・副首相は10日、河野洋平・日本国際貿易促進協会会長(前衆院議長)と会見し、ホンダやトヨタ自動車の系列工場などで相次ぐ従業員のストライキについて「中国経済の発展に伴い、労働コストの問題が出てくるのは自然なこと」と指摘。「中国の投資環境全体に影響を与えるものではない」と述べた。

 スト問題が、海外企業の対中投資に与える影響は限定的との見方を示したものだ。

 王副首相は、ストは「労働力市場の需給で起きている問題」とし、「ある国のある企業を対象にしたものではない」と述べ、日系企業を狙い撃ちした動きでないことを強調。「世界をみても13億人のマーケットを探すのは困難」とも語り、市場としての中国の魅力に注目して対中投資を進めるべきだとの考えを示した。

 この辺も、もっともな話ですね。日本であれば分配なき成長が当たり前、戦後最長の景気回復局面が続き、バブル期を上回る過去最高益を記録する企業が続出しても、給与所得の水準は上がるどころが下がっていったわけですが、これが通用するのは日本だけでしょう。日本以外の「普通の」国では経済成長の果実を従業員にも分配しないと当然のこととしてストライキなどに発展するわけです。「経済の発展に伴い、労働コストの問題が出てくるのは自然なこと」であり、現代日本だけが特別なのです。日本の従順な社畜やいつでも経営者目線の国民達、存在するだけで適用されることのない労働法制に甘やかされて育った日本企業が中国市場で生き延びるのは難しいのかも知れません。日本ではストなど起こそうものなら世間に迷惑をかける存在として白眼視されるばかり、世論は労働者側ではなく企業側に付くものですが、他所の国ではそうもいかないでしょうし。

 

 ←応援よろしくお願いします

コメント (13)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする