公立高校の授業料滞納、5億8952万円…読売調査(読売新聞)
全国の都道府県立高校で2007年3月末時点の授業料滞納額が、約5億8952万円に上ることが読売新聞の調査でわかった。
23の道府県が「過去5年間で滞納件数が増加している」と回答しており、17倍に急増したところもあった。
滞納の理由については、「保護者の経済的な理由」を挙げた自治体が6割、「モラル低下」を挙げた自治体が4割だったが、急増の要因としてモラル低下を指摘する声も目立った。
ちなみに読売の挙げた金額は累計のようですね。単年の滞納額も明らかにしてくれないと、データとしての価値が薄れます。読売の推測によると「授業料を徴収できるのは原則過去5年分のため、調査時点の滞納額はこの5年間に徴収できなかった授業料の残高」らしいです。現実問題として滞納=回収不能なんてケースは稀で、1~2ヶ月程度の支払いの遅れが大半を占め、最後まで回収不能で残るケースは非常に少なくなります。それだけに「一時的な支払い遅延」と「回収不能金」を分けてくれないと正確な実態などつかめないのですが、他に資料がないので累計未収額を基準として考えてみましょう。
さて、公立の高校に通う生徒は各学年に80万人くらいいます。で、読売の報道に拠りますと「全日制高校の年間授業料は、11万1600~14万4000円」だそうです。これまた平均すると12万8000円ぐらいでしょうか。してみると公立高校に通う生徒1学年分の学費の合計は概算で1024億円くらいですね。5年分なら5倍して約5120億円です。うち、未収金は5億8952万円ということですが、授業料全体に占める滞納額の割合は・・・0.11%!?
これも凄い数値ですね。滞納額が0.11%です。すなわち回収率99.89%です。一昨日は千葉県市川市の給食費回収率99.78%を完全無欠な数値と評しましたが、上には上がいるものです。民間企業ではどう足掻いても達成不能な回収率です。神業なんてものじゃありませんね。これからの時代、企業経営者は学校の先生を経営コンサルタントに招いた方が良さそうです。
日本国内の生活保護受給者が約1.2%程度、収入面では受給資格を満たす人がその10倍程度はいると推計されています。生活保護もしくは生活保護水準以下の人がこれだけいる中で、学費だけはきっちり納入する、生活が苦しくても学校に納めるお金だけは何とか工面する、そんな親たちの頑張る姿が目に浮かびます。10人に一人が健康で文化的な最低限度の生活を送るに満たない収入しか得られていないのに、学費を滞納する人は1000人に一人、さすが道徳の帝国です。
給食費と同じで、その理由を「どう思うか」と関係者に感想を求めただけの調査しか存在しないため、実態は靄の中です。しかるに、それでも6割は「リストラなど保護者の経済的な問題」が理由だと考えられているようです。それは当然あるでしょうね、企業収益は過去最高を更新し続ける一方で、国民の所得は10年来減少を続けているわけですから。そこで支払いに支障が生じたならば、それによって生徒の学ぶ機会が損なわれないよう、奨学金や授業料免除などの公的支援を案内するのが道理です。しかし全国的な公共サービスの切り捨てによって奨学金や授業料免除などの公的支援は著しく制限され、生徒をケアするべき立場の教員も正規雇用から非常勤への切り替えが進められているわけで、経済的理由による滞納に対して本来とるべき対応が出来ていないのでしょう。
まぁ、救済できていないのは1000人に一人の存在ですから、現場は上手くやっている方なのかも知れません。それ以前に、滞納が長期化するケースの多くは不登校が重なっているケースも多いようで、生徒が登校してこないのだったらまぁ、積極的な対応は難しいですし……